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菅首相 東南アジア訪問光と影

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大塚智彦(フリージャーナリスト)

【まとめ】

・菅首相の東南アジア訪問に安保上の戦略的背景あり。

・インドネシアは日米豪印の「インド太平洋」構想に消極姿勢。

・外相会談で米がインドネシアに構想への積極関与を要請か。

菅義偉首相は10月18日から21日まで就任後初の外遊としてベトナムとインドネシアを訪問した。

ベトナムは今年の東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国であり、インドネシアはASEANの主要国である。同時に両国は日本とは経済面で関係が深く、南シナ海での中国の活動活発化を受けて両国と日本との関係強化が安全保障面で重要視されているなどの共通点から実現した2国訪問といえるだろう。

ただ、安保の枠組みを巡っては特にインドネシアでは警戒感も強く、ベトナムとの違いや経済問題での歓迎ぶりとの温度差が浮き彫りになるなど必ずしも「諸手を挙げた評価」とはならず、光と影が交錯する結果となったといえるだろう。

ベトナムのグエン・スアン・フック首相との会談で菅首相はベトナム中部の水害被災地への支援を表明したほか、日本からの経済支援、投資促進など官民で12案件の覚書に調印した。

▲写真 文書署名・交換式に臨む菅首相とベトナムのフック首相(右端)(2020年10月19日) 出典:首相官邸ツイッター

インドネシアのジョコ・ウィドド大統領との間ではASEAN域内最悪となっている新型コロナウイルス対策への支援や人的交流の早期緩和に向けた交渉開始などで基本的に合意した。

こうした経済分野での支援に加えて菅首相が今回重視していたのが安全保障問題でベトナム、インドネシア両国と地域の安定と安全を目指した関係緊密化だった。

■  日米豪印の枠組みに不可欠な東南アジア

これは10月6日に東京で日、米、オーストラリア、インドの4カ国外相による会議で「一帯一路」や「真珠の首飾り」などの一方的な独自の権益拡張を進める中国の動きを念頭にして「自由で開かれたインド太平洋」構想を今後推進することで一致、今後定期的に「クワッド・日米豪印戦略対話会議」を開催するという新たな「枠組み」を確認したことが根底にある。

▲写真 日米豪印4カ国外相会合(2020年10月6日 東京) 出典:外務省ツイッター

この「日米豪印」4カ国は「インド太平洋地域」の要となる国であるが、太平洋とインド洋の間には東南アジアが横たわり、ASEAN抜きでは「インド太平洋」は一つの地域にはならないという現実がある。

こうした背景から南シナ海で、中国と領有権問題を抱えるベトナム。そして中国とは直接的な領土問題を抱えていないものの、南シナ海南端のインドネシア領ナツナ諸島北方海域の排他的経済水域(EEZ)に中国漁船、中国海警局公船が頻繁に侵入を繰り返すという問題を抱えるインドネシア。

▲画像 南シナ海におけるナツナ(Natuna)諸島の位置。IDはインドネシア、VNはベトナム、CNは中国。 出典:Hobe / Holger Behr

そしてなにより南シナ海からインド洋に抜ける海の要所であるマラッカ海峡を抱えるという地理的状況がインドネシアにはあるというように両国訪問には安保上の戦略的背景が存在した。

菅首相のベトナム訪問直前にはベトナム沖海域に中国海警局の公船が接近して調査活動をするなどベトナムを牽制する動きをみせていたことも南シナ海の権益問題で中国の「一歩も譲らない頑なな姿勢」の表れととらえられている。

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