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【読書感想】宇宙に行くことは地球を知ること~「宇宙新時代」を生きる~

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宇宙に行くことは地球を知ること 「宇宙新時代」を生きる (光文社新書)
  • 作者:野口聡一,矢野顕子,林公代
  • 発売日: 2020/09/16
  • メディア: 新書



Kindle版もあります。

宇宙に行くことは地球を知ること~「宇宙新時代」を生きる~ (光文社新書)
  • 作者:野口 聡一,矢野 顕子
  • 発売日: 2020/09/16
  • メディア: Kindle版

内容(「BOOK」データベースより)
2005年、アメリカのスペースシャトルで初飛行、2009年12月からの2度目の宇宙飛行ではロシアのソユーズ宇宙船に搭乗し、163日間に及ぶ宇宙長期滞在を経験した宇宙飛行士の野口聡一さん。「宇宙好き」で知られ、これまで宇宙に関する数々の楽曲を発表、同時にNASAの宇宙情報をこまめにチェックし、ツイッターで分かりやすく発信しているミュージシャンの矢野顕子さん。2020年、スペースXの新型宇宙船「クルードラゴン」運用初号機Crew‐1への搭乗を控え、2人の対談が実現。「誰もが宇宙に行ける時代」の到来という歴史的転換点を迎えた今、両者が語る宇宙の奥深さと魅力とは?

 宇宙飛行士の野口聡一さんとミュージシャンの矢野顕子さんの「宇宙」についての対談本。
 なぜ、この組み合わせなのだろう?と書店で見かけたときは疑問だったのです。
 でも、矢野さんが「宇宙」についての興味を抱き続けていて、しかも、「科学者ではない視点」からさまざまな質問をしていくのに対して、野口さんが、「みんなに伝わりやすい言葉」で、宇宙の魅力や宇宙飛行士という仕事を語っておられるのが読めて、これはなかなか良い対談本だなあ、と感じたのです。
 
 野口さんの国際宇宙ステーション(ISS)で船外活動を行っていたときの身体感覚について。

野口聡一:夜になって驚いたのは、自分の足が曲がっているのか、伸びているのかがまったくわからなくなったことです。地上ではたとえ目を閉じていても、腕や足が伸びているか、曲がっているかはわかりますよね。それは筋肉が常に重力を感じているから。重力に抗って筋肉を動かせば、その情報が脳に届くためです。

 一方、無重力状態では足を曲げても伸ばしても、重力がまったくかかりません。そのため足を動かしたという情報は脳に届きません。極端な話、腰から下がなくなったとしてもわからない。腕も同じです。身体感覚が一気に分断してしまったようで、とまどいました。

 同じ無重力状態でも、ISSの中で照明をつけているときは、目で足や腕の位置を確認できるので、そんな感覚はありませんでした。しかし、特にISSの中で目を閉じたときや、船外活動中は自分の足が曲がっているのか、伸びているのかまったくわからない感覚が強くなります。これが無重力で本当に大変なことなんです。

 船外活動の作業中に真っ暗になると、瞬間的にISSの構造もほとんど見えなくなり、身体感覚が失われて、自分の位置や姿勢もわかりにくくなります。巨大なISSの中で自分がどこにいるのか把握できないという事態が、起こりうるんですね。船外活動中に「僕、今どこにいるんだっけ?」という冗談のような会話が宇宙飛行士間で交わされることは、決して珍しくないんです。

 この本を読んでいると、野口さんの「説明力」みたいなものに感動せずにはいられないのです。僕が宇宙に行くことは、まず無いと思いますが(できれば一度は行ってみたいけれど)、そんな僕にも理解できる言葉で、野口さんは「宇宙飛行士が見える、感じる世界」を伝えてくれるのです。

野口:エアロックの中は、もはや宇宙です。

 いよいよ、外に出る時間です。エアロックのドアを開けて頭から出ていくと、400キロメートル下に地球が見えました。「What a View!(なんて景色なんだ!)」と思わず口にしましたが、同時に感じたのが「地球に落っこちそう!」という恐怖です。

 東京タワーに行ったことがある方は、高さ150メートルのメインデッキで、ガラス張りになって真下が見える場所をご存じかもしれません。ガラスの床があるから絶対に落ちないとわかっていても、はるか彼方に豆粒のように見える車や人を見ると足がすくむというか、怖いですよね。

 僕が宇宙船から出たときの感覚は、東京タワー展望台のガラス張りの床から下を見たとき、または床そのものがない感じに近いです。あるいは、映画『007』シリーズや『ミッション:インポッシブル』で、飛んでいる飛行機の床が突然パッと開いて「おお!」と一瞬ひるむ感じ、といえば伝わるでしょうか。

 つまり手を放したら一気に地上まで落ちてしまうような感覚に襲われるのです。ほとんどの宇宙飛行士が同じような恐怖を感じ、手すりをぎゅっと握ると聞いていましたが、僕も無意識にしっかりと手すりを握っていました。

 野口さんは、宇宙飛行士としてのさまざまな体験を、わかりやすく語っています。

 そして、宇宙というのは、人間にとっては「死の世界」であり、宇宙飛行士という職業は、大きなリスクを背負っていることについても言及しておられるのです。

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