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「サッカーには政治的な緊張感はない。それがサッカーの力だ」Jリーグを取材し続ける韓国人に聞いた、日本と韓国のこと

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多くの熱狂を生むスポーツ・サッカーの舞台裏を取材する森雅史さんの連載『インサイド・フットボール』。今回は日本に滞在しJリーグの取材を続けていた韓国人記者、イ・カンソン氏に話を聞きました。緊張関係にあることも多い日韓、そうした中で同氏が感じたサッカーの力とは・・・。

Jリーグは2012年にアジア戦略を本格的にスタートし、リーグやクラブ関係者の交流、情報の共有などを行ってきた。新型コロナウイルスの影響が出る前は様々な国からの報道陣も受け入れ、Jリーグの試合会場には試合とともに試合運営などを見て回るなどJリーグが培ってきたノウハウを取材する外国人の姿もあった。

今回話を聞いた韓国人のイ・カンソン氏も熱心にJリーグの試合会場を訪れ、韓国人選手を中心に話を聞いている報道関係者の1人。ただ他の報道陣と違うのは日本に長期滞在しながらじっくりと取材を続けていることだ。

日韓関係の緊張状態が続く中、なぜ日本で長期取材を続けようと思ったのか。取材で感じたことは何か。記事にどういう反応があったのか。帰国したとき、周囲の反応はどうだったのか。日本語で答えてもらった。

——まず自己紹介をお願いします。それから韓国ではどういう経歴をお持ちなのか教えてください

名前はイ・カンソン、年齢は日本の数え方だと29歳、韓国では数え年で言いますから30歳になります。韓国ではKリーグクラブで広報業務を担当していました。最初は2015年に1部リーグの水原三星のインターンシップに参加して1年間働き、2016年夏から2019年1月までは2部リーグのソウルイーランドFCでマーケティングや広報担当として活動していました。

話を聞いたイ・カンソン氏 写真提供:森雅史

——最初はどのようなきっかけで来日したのですか

Kリーグのチームでマーケティングの仕事をしているとき、Jリーグのクラブをベンチマークしていました。そこで日本に興味が湧いて勉強していたのですが、やはり現地に行かないと詳しくはわかりません。そこでチームがアウェイの試合に行くときなどのちょっとした休みを利用して、飛行機のチケットを買って日本に来ていました。

——どうして仕事を辞めて日本に来ようと思ったのですか

何度も韓国と日本を往復していたのですが、仕事をしながら日本語を勉強するのは難しいと感じていたので、日本に通い出したときから「仕事を辞めて日本に行きたい」と思っていました。最初は実行する勇気がありませんでしたが、それでもいつかは日本に行って勉強しようと決心していました。

2018年に「30歳になる前に海外生活をしないと、その後は絶対にできない」と感じました。それで2019年に仕事を辞めて、2019年4月に来日しました。何か詳しい計画を持っていたわけではありません。いろいろな人を見たり、人に聞いたりしながら勉強しようと思ったのです。

ただ、最初は3カ月日本語学校で勉強して帰国し、新しい仕事を探すつもりでした。ところが日本語学校に通う間に、「日本語の勉強は面白いし、いろいろな人に出会うのも楽しい」と思って滞在を3カ月延長しました。そして来日して6カ月経ったとき、さらに延長しようと思って留学ビザを申請し、1年間ずっと学校で勉強していました。

韓国人選手の活躍を本国に伝えるため、Jリーグの取材をスタート

——その勉強の合間にJリーグの記事を韓国のメディア向けに書いていらっしゃいますね

昔ほどではないのですが、Jリーグには韓国人選手がたくさんいます。でも韓国内では日本でプレーする選手の記事があまり出ていません。ですから韓国に記事を送ったらたくさんの人に読んでいただけるだろうと思って、原稿を書こうと思いました。そこで直接Jリーグの広報担当者に連絡し、取材の許可をもらいました。

(※留学ビザで入った人物が、海外の会社と契約し海外で支払いを受け取っている場合はビザに関しては合法と外国人在留総合インフォメーションセンターに確認済み。2020年9月15日16:20)

——実際に取材してみてJリーグはどうでしたか

まずJリーグのシステムにビックリしました。Kリーグもいいと思いますが、Jリーグはもっとシステム的にしっかりしていると感じます。きちんとしたルールがあって、それにちゃんと従って開催されていると思いました。

それに韓国では試合を取材に来る記者があまりいません。Jリーグはどこに行っても記者がたくさんいらっしゃいました。それは韓国との違いだと思います。私は日本の記者の方々にいろいろなことを聞いて、たくさんのことを学びました。

韓国にくらべ、Jリーグの試合には記者が多く集まるという Getty Images

——取材した後、どんな内容の記事を書いたのですか

私の記事は基本的に、韓国選手の活躍ぶりに重点を置いて書いています。それからJリーグクラブのスタッフのインタビューも行いました。また、試合の開催方法についての記事も出しました。

たとえば2019年7月19日に開催された川崎フロンターレとチェルシーの試合です。韓国にも外国のチームを招いて開催する試合はあります。私が驚いたのはチェルシーの対戦相手を決めるときに、Jリーグ事務局は明確な基準を持っていて、その基準に基づいて川崎フロンターレを選んでいたことです。

韓国ではそういう海外のクラブとの親善試合を開催するとき、Kリーグ選抜として、各クラブから2名ずつ選手を出して臨時チームを作って対戦することもあります。そうすると単なるイベントになってしまって、緊張感がないために盛り上がらないのです。2010年にバルセロナが韓国に来たときは、リオネル・メッシもいたのですが、あまり観衆がいないという状況でした。

そのためJリーグには明確な基準があることを記事にしたのです。その記事の韓国内での反応はいいものでした。「やはりJリーグには明確な基準がある」「ブランディングもいい」というレスポンスが来て、みんなにJリーグのことを知ってもらえたと思いました。

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