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「ハイパーインフレ恐怖症」という自虐的な病

■「ハイパーインフレになる」はSF

 世界中がコロナ禍において大規模なバラマキ政策を行っているが、ご多分に漏れず、日本でも、全国民に10万円ずつ支給するという特別定額給付金が実施された。

 国民1人につき10万円を支給して、合計10兆円以上、その他、諸々の補助金等を入れると既に100兆円近くの国債を発行しているとのことで、毎度のように、「国は1000兆円以上の借金があり財政危機なのだから、そんな無駄金はバラまくべきではない」というようなことを述べている学者もいる。

 アベノミクスで200兆円金融緩和し、その後も金融政策を継続して、すでに300兆円とも400兆円とも言われるマネーを増やしたにも拘らず、全くインフレとは無縁の日本国内で「ハイパーインフレになる」などと言っているのは、ほとんどSFの世界であり、全く当たらないインチキ予言者の警告のようですらある。

■「ハイパーインフレ」になる条件を具体的に考えると…

 学者が「ハイパーインフレ」などという言葉を頻繁に使用するので、世間一般の人々は、「バブル」と「ハイパーインフレ」を混同しているのではないか?という疑いすらある。

 「ハイパーインフレーション」の定義は、1年間に物価が130倍になることなので、3000万円の家なら、1年間で39億円に値上がりする計算になる。かつての不動産バブルでも、土地や家の値段がせいぜい数倍に騰がった程度なので、家の値段が1年間で130倍に急騰するようなことは大戦争が起こり日本全土が灰燼にでもならない限り有り得ないと思う。

 「ハイパーインフレ」になる条件などというものは、御大層な計算式などで予測できるような代物ではなく、単純かつ具体的に考えれば、簡単に大凡の答えが導き出せる。

 例えば、国民1人につき1億円を支給した場合を考えてみよう。

 1人に1億円ということは、4人家族であれば、合計4億円になる。あなた自身が、その家族の立場に置かれた場合を考えてみればいい。
 その場合、大抵の家族は真っ先にマイホームの購入を検討するだろうと思う。そのような羽振りの良い家族が急に数百万世帯も出てきた場合、建築資材価格は急騰し、住宅を供給するべき職人も全く足りなくなるので、向こう数十年は建築バブルが発生することになる。

 そうなると、一時的には大景気となり、あっという間にインフレになる。ハイパーインフレとはいかないまでも、かなり危険なインフレになるだろうことは容易に想像がつく。

■スケールが小さ過ぎる「ハイパーインフレ」論者達

 では、国民1人につき1000万円を支給した場合はどうだろうか。

 先程の例で言うなら、4人家族であれば、合計4000万円になる。
 その場合、さすがにマイホームを購入しようと思う人は、それほどいないと思う。大抵の人は老後の資金として貯蓄し、せいぜい、新車のマイカーを購入する程度だろう。

 それでも、自動車部品等の需要が一気に膨らむので、かなり景気が良くなることが予想され、適度なインフレになる可能性は高くなる。無論、ハイパーインフレには成りようが無い。

 上記の2例は、いずれもコロナ禍でのシミュレーションではなく、通常の場合の話だが、それぞれ大体の必要額は、以下の通りになる。

 1人1億円の場合は、全額で1京円

 1人1000万円の場合は、全額で1000兆円

 冒頭に、特別定額給付金支給で全額10兆円、その他諸々を足して100兆円と書いた。
 100兆円なら、1人100万円ということになるが、この場合、コロナ禍で大部分の人々は収入が減少しており、消費する人も激減しているという条件下での話なので、100万円は減少した需要を補うだけで消えてしまうことになる。

 1人100万円では、大きく落ち込んだ収入や消費量の幾分かを埋める程度の効果しか望めないため、インフレになるようなことはまず有り得ず、デフレから抜け出すこともできないと考えるべきだろう。

 コロナ禍で1人100万円や数百万円程度のバラマキでハイパーインフレになると考えるのは、全くの杞憂であり、スケールが小さ過ぎると言える。
 ハイパーインフレを極度に恐れるあまり、無策を決め込み、無意識的に日本経済を崩壊に追い込もうとする自虐的な学者に注意しよう。

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