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【115カ月目の汚染水はいま】「海を汚すな」「漁業を守れ」福島の市民団体が海洋放出反対のスタンディング 県知事や県議会議長には要請書「27日の決定前に反対表明を」

原発事故後に大量発生している〝原発汚染水〟の陸上保管を求めている福島県の市民団体「これ以上海を汚すな市民会議」(織田千代、佐藤和良共同代表)が22日午後、海洋放出に反対する事などを求めた要請書を福島県の内堀雅雄知事や福島県議会の太田光秋議長に提出。県庁前や福島駅前でスタンディングをし、「海に流すな」と訴えた。週明け27日にも政府が海洋放出を決定するとの報道が先行しており、参加者は「決まってしまってからでは、海に流されてしまってからでは取り返しがつかない」と危機感を募らている。

民の声新聞

【「子や孫の健康守りたい」】

福島県庁前に、「これ以上、海を汚すな」の想いがこだました。
 「漁業を守れ!」、「海を助けて!」。「STOP汚染水」などと書かれたプラカードや横断幕を掲げてスタンディング。参加者は「民意を汲み取れ」、「内堀知事はきちんと国に意見して」などと訴えた。

 郡山市議の蛇石郁子さんがマイクを握った。
 「27日にも政府が(原発汚染水の)海洋放出を決定すると報じられています。この報道には大変、驚きました。2年前に経済産業省が開いた公聴会では、44人のうち42人から反対意見が出されました。しかし、この国の政治は民意を反映しないのです。内堀知事が県民を代表して、率先して、県民の立場で、県民の意見を国にぶつけて欲しいと心から願っています」
 「流してしまえば分からない。透明な海水だから区別もつかない。そんな無責任な行動を子どもたちが見ています。私はそんな無責任な大人の1人にはなりたくありません。政府が海洋放出を決めた後に内堀知事がどのようなコメントを発表するのか分かりませんが、知事は今声をあげないで、いつ声をあげるんですか?県内59市町村議会のうち、7割が海洋放出に反対、もしくは慎重な対応を求める意見書を国に提出しています。内堀知事は自信を持って、きちんと国に意見してください」

 参加者は福島駅東口に移動。道行く人々にビラを配りながら「海に流さないで」と訴えた。
 南相馬市から参加した女性は「食物連鎖を考えると、子や孫の健康を守れない。海洋放出に賛成出来ません」と訴えた。
 「基準値以下に薄めて海に流すと言いますが、放射性物質が無くなるわけではありません。しかも含まれているのはトリチウムだけではありません。63核種です。安易に海に流すのでは無く、きちんと陸上保管するべきです。原発事故が起きてしまった福島県の代表として、内堀知事には考えて動いていただきたいです」





福島県庁や福島駅の前で「海洋放出反対」の意思を示した=福島県福島市

【福島県「国の責任で判断して」】

 「市民会議」は抗議行動に先立ち、①県として(海洋放出に)反対の意思を表明すること②トリチウム分離技術の実用化を求め、大型タンクでの長期保管案や半地下でのモルタル固化保管案等の詳細な検討を国と東電に求めること③拙速を避けた慎重な国民的合意の形成を図るよう国に求めること─とする要請書を、福島県の内堀知事、福島県議会の太田光秋議長あてに提出した。

 知事宛ての要請書は、原子力安全対策課の伊藤繁課長が受け取った。
 「トリチウムを含む液体廃棄物につきましては、処分の方法によっては風評被害を招く可能性が高い。2011年3月以降、皆様をはじめ各業界など多くの方々が風評払拭のために努力されて来ているという事を踏まえれば、処分方法の決定やその後の取り扱いによって新たな風評を招いてはいけないという事は内堀知事も常々、申しているところであります。われわれ(福島県)も国に対しては、風評対策を具体的に示していただきたいという事と、トリチウム処理水に関して科学的な情報を分かりやすく発信していただきたいという事を常に求めています」
 週明け27日にも政府が海洋放出を決定するとの報道が先行しているが、伊藤課長は「現在のところ、県に対して日程や内容が決定したという連絡は来ていません」と語った。

 佐藤和良共同代表(いわき市議)は「海洋放出への賛成意見は極めて少ない。政府が決定する前に被災県としての立場を強く表明していただきたい」と求めた。
 「いわきの初期被曝を追及するママの会」代表の千葉由美さんは次のように訴えた。
 「私たちは日々、被曝からどうやって子どもを守ったら良いかと考えながら、いまだに苦悩の日々を送っているんです。私の子どもはもう19歳になりましたが、これから出産するお母さんや出産したばかりのお母さんたちが、この問題にとても動揺しています。環境がこれ以上汚染されてしまったら、私たちはどうやって子育てしていけば良いのかという悩みをこれからもっともっと抱えなければいけません。内堀知事は福島県民の代表として、政府が処分方針を発表する前に海洋放出に反対だという県民の声を国に届けて欲しい。決まってしまってからでは、海に流されてしまってからでは取り返しがつかないんです。それは10年前に経験しているはずです」

 しかし、伊藤課長は「国が…」と繰り返すばかりだった。
 「国が責任を持って判断するべきであると考えています。いろいろな意見が出ているという事を国がしっかりと考えていただき、責任を持って国が判断していただきたいという考えであります。その事は繰り返し、国に伝えて行きたい」
 太田議長あての要請書は、議会事務局の佐久間弘元局長が代理で受け取った。いずれも古市三久県議(福島県議会県民連合議員会)が調整した。





県知事や県議会議長に提出された要請書と街頭で配られたビラ。福島県庁内の県政記者クラブで記者会見も開いたが、新型コロナウイルス関連の記者会見や橋本聖子五輪担当大臣の来県が重なった事もあり、出席した記者はごくわずかだった

【「風評被害」で本質隠すな】

 原発汚染水の処分に関しては、「風評被害」ばかりが論じられ、「実害」が語られる事が少ない。福島県庁内の県政記者クラブで開かれた記者会見で質問すると、佐藤共同代表は「環境や健康への影響(実害)については、検証されていない。われわれ福島県民が再び放射能被害の実験台になるのか、犠牲になるのかという話です」と答えた。
 「漁業者が廃業しなければならなくなったら、それは『風評』では無く『実害』だ。生業が成り立たなくなるわけですから。お金を出して風評対策をすれば良いという問題では無いと漁業者も考えているはずです。『風評被害』という言葉で本質を覆い隠すのは良くないと思います。健康影響、社会的影響は大きいので、安易に『最後は金目でしょ』とはならないと思います」

 いわき市から参加した斉藤春光さんは「実害が生じてからでは遅いのです」と訴えた。
 「実害があるという学者と無いという学者を両方集めて議論するべきです。それが『科学』だと思います。海洋放出が一番コストが安いと言うけれど、後々の事を考えると高くつくんですよ。目先の支出を惜しんで津波対策をしなかったのと同じです。いま、プラスチックによる海洋汚染が問題になっています。プラスチックは駄目で、放射能なら良いのか。プラスチックと同じように、放射能で海を汚さない方策を考える努力をするべきです」
 千葉さんは「原発事故の加害当事者は『環境や健康に影響無い』と言うのは当然でしょう。そうやって、大人たちが〝負の影響〟を子どもたちに押し付ける社会では子どもたちを生きて行かせたく無いんです。何ごとも無いように守っていこうね、という社会にしたいと思います」と答えた。

 原発汚染水を巡っては、原子力市民委員会が今月20日、「政府は福島第一原発ALPS処理汚染水を海洋放出してはならない。汚染水は陸上で長期にわたる責任ある管理・処分を行うべきである」との声明を発表している。

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