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ネットに弱みを開示することのリスク

インターネットなど存在しなかったずっと昔から、「心が弱っている人を狙う詐欺師」はたくさんいました。

たとえば子供が不慮の事故で亡くなった親のところには、

・子供が成仏できずにさまよっている。今なら偉い先生がありがたいお経を上げてくれる。
・こんなことが起ったのは悪い霊がついているからだ。お祓いをして、この精水を毎日、仏壇に供えなさい。
・家の方角が悪いから改修したほうがいい。
みたいな人がやまほど集まってくるんです。

最初は「大変でしたね。悲しいですよね。実は私の姉の家でも同じような不幸がありまして・・・」みたいな感じで

心弱っている人に寄り添う

言葉をかけてくるのだけど、最後には高価なお札やら壺やら精水やらを買うことになったり、全財産を寄付して家中の悪い運気を落としましょう、みたいな話になったりします。

子供が死んだ親にだけでなく、働き盛りの夫が難病に倒れたり、今まで順調だった家業が突然に傾き始めた家にも、こういう人がこぞって集まってくるのは、ネットがない時代からよくあることでした。

でね。

当時は「誰が心弱っているか」を人に先んじて見つけ出すのが、こういう詐欺師に求められるスキルだったわけですが、今はそれがけっこう簡単になってるんです。

なぜなら

ネットに「自分は心が弱ってます」と自ら開示する人がいっぱいいるから。

★★★

一番わかりやすいのは「死にたい」とか呟く人です。

ちょっと呟けばすぐに

寄り添ってくれる人

が現れます。

「親とけんかして飛び出してきた。今日、泊まる家がない」というのも、若い女の子なら、すぐに返事がもらえるでしょう。

でも、そういうわかりやすい例だけじゃないんです。

ツイッターやブログなど、ネットのプロフィール欄を見ていると、メンタルな病気だと開示している人と、ガンなど命に関わる病気だと開示している人がたくさんいます。

この「ネットに開示されている病気の数」って、「実際の病気の数」に比べ、圧倒的にメンタルな疾患と、ガンなど深刻な病気に偏っていると思いませんか?

特にメンタルな疾患があると開示してる人は、実際の割合より遙かに多いように思えます。

コレ、なぜだかわかります?

発信者がリアル社会では得られない救いをネットに求めているからです。

中耳炎になった場合、ネットにそんなこと開示するより、耳鼻科にいったほうが救われる確率が高いでしょ。

でもガンだと、病院ではわれないことでも、ネットで開示したら救われるかもしれない、と思う人がいるわけです。

メンタルな疾患も同じです。

何年も病院に通っていたり、薬を飲み続けていても救われないモノがある。

だからネットで自分の病歴を開示し、その痛みやつらさを理解してくれる人や、なんらか「私はこうして回復しました!」的なミラクルな解決方法を教えてくれる人と、

つながりたい!

と思うのでしょう。

だからメンタルな病気については、わざわざネットで自分の病気を開示する人が多くなる。

★★★

冒頭に書いたように、昔から「心が弱っている人」を見つけ出しては「寄り添うふりをして集まってくる人」はいました。

当時、ご近所の噂話からそういう人を探していた彼らは、今はSNSの中で「心が弱っている人」を探しています。

いえ、もちろん昔だって、

子供を亡くした親御さんを心から慰め、励ますために声をかけてくれる親切な人はいました。

そして昔は、そういう「善意の人」のほうが、壺や精水を売りに来る「悪意の人」より多かった。

なぜなら「心が弱ってる人」を探し出すのが難しかったから。

そういう情報を自然に得られるのは、当時はご近所の人や知り合いや友人だけだった。

だから、寄り添ってくれる人には「善意の人」が多かったんです。

でも今は、「心が弱ってる人」を探すのに最適なネット、SNSが現れました。

昔のように、ご近所の噂話に耳をたてる必要はありません。

なんたって「本人が!」

自分で「私は心が弱っています。リアル社会では得られない救いがネットで得られるかもと思っています!」と開示してくれるんだもの。

(詐欺師にとっては)なんていい時代になったことでしょう。

結果として昔と今では、不幸に見舞われた人、心が弱ってくる人に寄り添ってくる人の割合が、大きく変わりました。

昔なら、善意の人 9人 + 悪意の人 1人、だったのに、

今は、善意の人 1人 + 悪意の人 9人、みたいになっちゃってるんです。

★★★

インターネットとSNSの時代になり、自らの弱みを見知らぬ人に開示する人は、この割合をしっかり理解しておく必要がでてきました。

いつか私が難病を煩い、それをネットで開示したら、やまほどの、

・私の親も同じ病気でしたが、食生活をこうしたら治りました!
・日本では未承認の特効薬を知ってます!
・私も同じ病気になりました。同じ悩みをもつ人とつながりたいです!

といった連絡を受けることになるでしょう。

その中に「善意の人」がゼロだとはいいません。

でも、そういった弱みを全世界に向かって開示することのリスクも、しっかり理解しておかねばとも思うのです。

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そんじゃーね

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