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「発想が非常に面白い」田原総一朗、孫正義・橋下徹を語る

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田原総一朗氏(撮影:野原誠治)
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毎月恒例の田原総一朗氏インタビュー。10月は米携帯電話3位のスプリント・ネクステル買収を発表した孫正義氏、そして連日話題を振りまいている橋下徹・大阪市長について、じっくり話を聞いた。 【編集部 田野幸伸】(10月15日取材)

スプリント・ネクステル買収

――ソフトバンクの孫正義さんがアメリカ第3位の携帯会社を買収すると発表しました

田原:孫正義さんは日本のジャーナリズムというかマスコミの中でも、僕が最初に彼を取材したと思う。孫さんがアメリカ留学を終わって、向こうで英語と日本語を翻訳するシステムを開発して、これをたぶんシャープに売ったんだったかな。そのとき、孫さんは麹町の、裏通りのビルの地下室にオフィスを構えていた。たぶん社員が3人だったと思います。

面白かったのが、当然彼はソフトのインフラを開発するんだと思っていた。だってその、彼が作ったのも翻訳ソフトですからね。たぶん彼に会ったのは1982年か1983年だった。

――もう30年も前ですね。

田原:はい。当時、日本は、アメリカで開発されたパソコンが日本に入ってきて、一種のパソコンブームだった時代です。だからソフトの開発をするんだろうと思っていて、「これから何やるんですか?」と聞いたら、「インフラだ」と言った。僕はそれで非常に驚いたというか感心した。だからソフトバンクなんですね。バンクなんですよ。つまりソフトの流通をやろうとしているわけ。その時に、孫さんが言った言葉で非常におもしろいのは、金鉱ブームがあったと。

――ゴールドラッシュ?

田原:うん、ゴールドラッシュですね、アメリカで。ゴールドラッシュの時に一番儲けたのがバケツ屋だったと。

――(笑)

田原:ようするに金を探しに行くときにみんなバケツ持っていく。これはインフラだと。だから自分はインフラをやるんだと。

――なるほど。

田原:これはおもしろい。そもそも孫さんという人がなんでアメリカに行ったのかと。彼は日本で高校に入った。そして高校の1年生でアメリカに留学するんですよ。なんでだと。「日本だと大学に入るのに高校3年行かなきゃいけない、ばかばかしい」と、アメリカだと成績がいいと飛び級ができる、

彼はアメリカに行って、たぶん1年生を2、3か月やったんじゃないかと。それで2年生をやって、3年生をやって、つまり1年で大学へ行く、3年間じゃなくて。この発想がすごいおもしろいと思う。彼はなぜアメリカへ留学したかと言うと、飛び級がしたかった。日本だと高校3年行かなきゃいけない、ばかばかしいと。で、アメリカで飛び級して、1年で大学へ入ったと。こういう発想はね、孫正義という男をよりよく物語っていると思うんです。

さらに彼は、ITに非常に強い関心を持つ。「なんでITだ?」と言う風に聞いた。そしたらね、彼がアメリカへ行ったときに、こうなんか、グラビアで指の上に乗っかっている丸い玉の写真を見たと。

それを最初はね、宇宙都市かなと思ったと。よくわかんなかった。で、よく見るとそれがコンピューターチップだった。ようするに、このチップがこれから世界を変えるんだという風に思った。そのチップを見て、これが世界を変えるという風に思った人間に、マイクロソフトのビル・ゲイツがいる。それからアップルのスティーブ・ジョブスがいるんじゃないかと、孫さんが言っているわけね。ようするに、これから20年後、30年後はITの時代だと。だから孫さんがひらめいたのは、僕が当然、彼に取材をする、さらにきっと5、6年前でしょうね。

孫正義氏(AP/アフロ)
つまりすごいのは30年後世界がどうなるかっていうことを、コンピューターチップを見て「これだ」と確信した人間が、現在の世界を仕切っている。こういうことだよね。去年だけど、孫さんに会った。「これからどうなるかな?」と彼に聞いた。そしたら彼は「おそらくこれから、だいたい8、9年後にはコンピューターのチップの容量が、日本の脳細胞の容量を超えると。8、9年で。

――はあ…。

田原:今はまだ日本の人間の脳細胞の方がキャパが大きい。これが逆転すると。逆転するとどういうことが起きるかと言うと、今は人間がプログラムをしてコンピューターが動いている。でね、これからそうなるとね、プログラミングもコンピューターがすると。そのときに人間はどうすればいいのかっていう問題になる。

――そうですね(笑)

田原:これからはたぶんそういう時代になると、脳細胞よりもコンピューターのチップの容量の方が多くなる。コミュニケーションというものが大きく変わるだろうと。

例えば、人間が今、何を考えているか。僕が何を考えているかがわかる機器が発明される。

そして、ここから例えば、アメリカでもイギリスでもドイツでもいい、世界中に意志をつなげると。もちろんつなぐのに線はいりませんよ。今のパソコンだってなんだって線はいりませんね。つなげると、僕が何を考えているかということが、世界中の人間にすぐにわかる。となると、しゃべる必要がなくなる。例えば、テレビで誰かがしゃべって、テレビでしゃべっているその人間の考えていることが、そのコンピューターの連動で見ている人間にわかる。「あのしゃべっていることは嘘だ」と。彼は実はこう考えている、ということがわかっちゃう。

――電脳みたいで怖いです

田原:つまりこのコミュニケーションというものが大きく変わっていくと。たぶんね、15、6年先にはそういう時代がやってくる。そこで一体ね、世の中がどう変わるか。そのときに、必要な新しいツールっていうのが何か、どういうものがツールになるのか、そのコミュニケーションツールですよね。ということを彼は今、考えている。

このへんのね、やっぱ発想がすごいなと。

――SFの世界のようです。

田原:それを本気で考えている。で、また彼がおもしろいのがね、企業っていうのはね、特に日本の企業は「決定が遅い」と。だからね、変動のときに、新しい転換期に対応できない。だから彼はね、なんかやろうと思いつくと、すぐに役員に全員に電話する。「こういうことをやりたい」と。で、「明日の夕方会議を開く」と。それまでに役員たちにみんな、このことどう思うかと、いけるかどうか、懸命に調べろと。

「明日の夕方までに会議を開く」。アメリカへ行ってもいい、ドイツに行ってもいい。それはドイツから、あるいはアメリカから会議に参加すればいいんだ。帰ってこなくていいんだと。今もそれでやっている。だから非常に決定が早い。こういう決定の早さをやっているのに、孫さん以外には、楽天の三木谷さん、それからユニクロの柳井さん。ということで、とんでもないことを彼は発想している。というのが彼の特徴であると思う。

だから、例えばね。去年の3月11日に、東日本大震災が起きた。で、福島の原発は事故を起こした。事故を起こした瞬間に孫さんは太陽光と言い出した。

――早かったですね。

田原:早かった。非常に発想が早い。で、発想すると決断する、そして行動する。このスピードが異様に早いというのが、僕は彼の特徴だと思っている。

――そういう決断力もあって、今回その200億米ドルの企業買収を行ったと。

田原:そう、これもね、ようするに今や、携帯あるいはスマートフォンが人口を超えたの。

――台数ですか?

田原:そう。日本の人口を超えたの。その人口を超えたってことは、国内マーケットはもう成熟だと。だから彼は世界マーケットを考えている。この間大きなM&Aやったのとかも、すでに国内マーケットはもう成熟だと、だから世界だということですよね。その分リスクも大きい。これまたえらい借金もするんですよね、当然ながら。こういうのが孫正義さんのおもしろいところ。そしてもうひとつ、孫正義さんの会社は退職金がない。

――はい。

田原:それはなぜかというと、社員が最後まで会社にいようと思っていない。孫さんに学んで、アイデア、いろんなものを盗み出そうと。盗んだら自分で起業しようと、思って入るわけ。だから、誰もソフトバンクで偉くなろうなんて思ってない。みんな孫さんの、活用法、孫さんのノウハウ、いろんなものを盗み出してやりたい。

ところがね、入るとみんな、とても盗んだって「孫さんには対抗できないや」と思っちゃう。だからついつい、長くいちゃうってわけだ。だから何年も何年もいい社員がいてね、なんでまだいるんだよってね。盗み出して独立しようと思うんだけど、孫さんと付き合っていると、とても難しいなと思っちゃうと。

――それだけの人物ということなんですね。

田原:これが孫正義。

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