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コロナ禍の麻雀 家庭用全自動麻雀卓は昨年比4倍の売り上げ

国民的娯楽「麻雀」はコロナ禍でどう楽しまれているのか

 紫煙がくゆる薄暗い雀荘で、強面の男たちが正方形の卓を囲みながら賭博に興じる──映画などで描かれるそうしたアングラなイメージを麻雀に対して抱く人は少なくないかもしれない。まして、コロナ禍の時代に、4人が狭い空間で密になってポン、チー、ロンと発声するゲームに対し、感染予防の面から敬遠する人がいて当然だろう。

【写真13枚】首元がざっくりのワンピースを着たKADOKAWAサクラナイツ・岡田紗佳。他

 だが、意外なことに世は空前の麻雀ブームなのだ。火付け役となったのは、2年前にスタートしたMリーグ。30人のプロ雀士が8チームに分かれ、半年をかけて90戦を戦う。3シーズン目を迎えた10月5日の開幕戦は、テレビ&ビデオエンターテインメント「ABEMA」での総視聴者数が過去最多となる100万を超えたという。

 麻雀界最強を自負し、抜群の知名度を誇る多井隆晴(渋谷ABEMAS)は言う。

「ノーレート(賭け事を禁止すること)、禁煙の雀荘が増え、実際の麻雀の現場はクリーン化が進んでいます。Mリーグを見た若者を中心に、麻雀熱が拡がっている感触はありますね。半面、試合の行なわれている時間帯は雀荘に行く人が圧倒的に少ないらしいんです。麻雀が本当の意味で国民的な娯楽になるまで雀荘にとっては我慢の時期かも」

 麻雀といえばかつては男性サラリーマンの嗜みだった。が、それも今は昔。Mリーガーには、美人雀士も集う。現役のモデルである岡田紗佳(KADOKAWAサクラナイツ)もそのひとり。

「私は純粋にゲーム性が面白くてプロ活動をしていますが、Mリーグを通じて“見る雀(観戦を楽しむ麻雀ファン)“が増えて、裾野が広がっている印象は受けます」

 新型コロナの収束が見えない状況下での開幕でも、麻雀を頭脳スポーツと標榜するMリーグでは「ノーマスク」で牌を打つ。パフォーマンスを最大限発揮するために、緊迫した対局時に呼吸がしにくくなるマスクは外す決断を下した。その代わり、それ以外のコロナ対策は厳重、万全を期している。番組プロデューサーの塚本泰隆氏が話す。

「毎日の検温はもちろん、出場するMリーガーには2週間に一度、PCR検査を受けてもらっています。試合の合間にアルコール消毒を欠かさず、カメラマンはフェイスシールドを着用。控え室は入り口を開放して換気を徹底し、入室人数も制限しています」

介護施設が全自動卓を購入

 しかし、逆風が吹いていないわけではない。不要不急の外出自粛が要請された期間は、雀荘も営業自粛を余儀なくされ、家賃の高い都心部では閉店に追い込まれる大型雀荘が相次いだ。

 その一方で、「家庭用の全自動麻雀卓は昨年の4倍の売り上げでした」と明かすのは、麻雀用具販売の大手「ささき商事」の佐々木一春社長である。

「売り上げが落ちることを覚悟していましたが、気軽に雀荘に行けないことから、自宅で家族や仲間と麻雀をしようという方が増えましたね。また、カルチャーセンターや介護施設が購入してくださるケースもあります。当社が扱う最も安価な全自動卓でも7万9800円ですが、注文が殺到して入荷待ち状態です」

 同社では健康麻雀教室を平日の昼間に開催しており、65歳ぐらいをメイン層に、多い日は60人近い人が卓を囲む。取材日は夫婦で参加しているケースが目立った。

「私は若い頃から、雀荘に通っていましたが、妻は家で嗜む程度。コロナで気軽に外出できないからこそ、感染対策のしっかりしたこの教室に来ようと誘いました。(ノーレートの)健康麻雀でも牌を握れば真剣モード。6月から週に2回通っています」(夫婦で参加した団塊世代の男性)

 ある人は認知症予防に、ある人は仲間との会話を楽しむために、麻雀卓を囲む。同社ではコロナ対策として飛沫が飛ばないようにする衝立「ジャンシールド」を独自開発。6月の発売開始から既に600台以上売れたという。また麻雀牌専用の除菌スプレー「スッキリーチ」も好評だ。

 岡田と同じサクラナイツの内川幸太郎は、10年ほど前から所属団体が運営する健康麻雀の講師を務め、麻雀の草の根からの普及に努めてきたプロ雀士である。

「公共の施設で行なわれる健康麻雀教室などは、まだまだ再開できていないところも多い。しかし、コロナによって自宅に籠もってばかりで、孤独死してしまうケースがさらに増えることを危惧しています。それよりは感染対策を徹底した上で、麻雀を楽しむために外出することのほうが健康的ではないでしょうか」

 Mリーグによって若い世代が麻雀に感心を持ち、若き日に麻雀に興じたシニア層が今、再び牌を握ることが増えている。違法ギャンブルのダークイメージを払拭した業界の再興を受け、改めて麻雀とは老若男女が楽しめる生涯スポーツであることに気付かされる。

●取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)

■撮影/藤岡雅樹、井上たろう

※週刊ポスト2020年10月30日号

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