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その時、「海上警備行動」か、「防衛出動」かが問われる

今日は、自衛隊関係者と飲む機会があり、夜遅くまで“談論風発”の一日となった。やはり、話題の中心は「尖閣問題」だった。 中国が、覇権主義を剥(む)き出しにして、尖閣に乗り出し、在中国の日本企業を焼き討ちして、1か月あまりが経った。最近、つくづく思うことは、日本人の「中国」に対する意識は、あれから完全に「変貌を遂げた」ということだ。

なんの罪もない日本と日本企業に対して、暴徒化した中国人民の焼き討ちがをおこなわれ、それに対して「責任はすべて日本政府にある」と言い放った中国政府。さすがの日本人にも、これ以上“日中友好”をつづける必要がどこにあるのか、という劇的な意識変革がもたらされたようだ。

日本では、小学生の子どもですら「中国は危ない」という警戒感、もしくは嫌悪感を抱くようになってしまった。いくら中国を隣人として尊重しようが、肝心の相手には「その気がない」ことがわかったのだから無理もない。

人間、裏切られた感情というのは、容易なことで拭い去ることはできない。中国が、西沙諸島や南沙諸島でおこなってきた同じことを日本に対して突きつけてきた以上、事態はすでに「次のステップ」に入ったと見るべきだろう。

次のステップとは、言うまでもなく「尖閣有事」である。焼き討ち事件以来、中国では、反省どころか、中国の公船による領海侵犯が度々、起こっており、もはや両国の局地紛争はいつ起こっても不思議ではない状態となっている。

海上保安庁では対処できない中国の監視船、あるいは軍艦、さらには膨大な数の中国漁船……等々が、どういう形で尖閣に姿を現すのか。

実は、その時、日本は海上自衛隊が「海上警備行動」をとるのか、それとも、「防衛出動」となるのか、それすら決まっていない。

海上警備行動とは、防衛大臣が海上における人命や財産の保護をはかるために特別の「必要」があると判断した場合に命ぜられるものである。

これはあくまで海上保安庁の対応能力を超えていると判断された時に防衛大臣によって発令されるものであり、適用されるのは、「自衛隊法」ではなく、「海上保安庁法」、もしくは「警察官職務執行法」である。

つまり、海上保安庁、もしくは警察の代わりに、自衛隊が、その「職務の執行をおこなう」わけだ。だが、これをめぐって今、防衛省では、議論百出となっているのをご存じだろうか。

議論の中心は、海上警備行動で出ていった場合、極端な話、「大砲ひとつ撃てない」ということである。そもそも海上保安庁では対応できない時に自衛隊が出動するものでありながら、あくまで「治安維持」が前提である以上、自衛隊の艦船が大砲をぶっ放すことは「許されない」のだ。

すべて相手の出方次第という「手足を縛られた状態」で出ていくのが「海上警備行動」である。私は、命をかけて現場に出動する自衛官たちの心情を思うと、たまらない。言いかえれば、交戦権のない状態で紛争地帯に現れる自衛官たちほど哀れなものはない、ということだ。

では、「防衛出動」は、どうか。これは、総理大臣にしか発動できる権限はなく、防衛大臣の一存では、どうにもできないものだ。日本に対して、外部からの武力攻撃が発生した事態が認められた場合、そして「日本」を防衛するため必要があると認める場合にのみ、「防衛出動」が可能だ。

しかし、それでも「自衛権」を行使することはできても、「交戦権」は認められていない。そんな中で、自衛官たちはどう行動するのだろうか。そして、がんじがらめの中で、自衛隊の艦船はどう出動し、どう対応するのだろうか。 私は法律の不備を痛感すると同時に、性善説にのみ基づいた日本の戦後の「社会」や「法」のあり方に、やはり思いを致さざるを得ない。

来たるべき尖閣有事で問われるのは、戦後日本が歩んできた「偽善の歴史」に対する総括なのではないだろうか。私は今日、自衛官たちとの議論を通じて、そんなことを感じていた。

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