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これが頂点を極めた者の宿命ということは知りつつも・・・。

既に今日は様々なところで話題になっているが、改めて、ということでこのニュースである。

「米司法省は20日、反トラスト法(独占禁止法)違反で米グーグルを提訴した。ネット検索市場での圧倒的な支配力を利用し、自社サービスを優遇する契約をスマートフォンメーカーなどと結ぶなど競争を阻害した疑いがあるとした。IT(情報技術)大手を巡る大型訴訟は米マイクロソフト以来、約20年ぶりとなる。」(日本経済新聞2020年10月21日付朝刊・第1面、強調筆者、以下同じ。)

「反トラスト法と言えばマイクロソフト」だった時代を自分はつい最近のことのように思っていたのだが、もう20年、と聞くと何とも言えない気分になる。

そして、世界中で繰り広げられた長きにわたる闘争の末に勢いを失ったマイクロソフトから主役の座を奪ったGoogleがこういう形で再び「主役」の座に躍り出るという運命の皮肉。

そうでなくても”The Four"と並び称される巨大なデジタルプラットフォーマーたちには、ここ数年、世界中で激烈な嵐が吹き付けていた。

元々これらの米国発の企業をハナから敵対視しているように見える欧州では、伝統的な競争法の観点からも、個人情報保護の観点からも当局がいち早く果敢なアプローチを展開し続けてきたし、この日本ですら公取委から個人情報保護委員会まで規制の食指を伸ばし始めていることはご承知のとおり*1

さらに地球をぐるっと回って、遂に母国である米国でも下院司法委員会のエキセントリックな報告書に続いてDOJが動き出した、ということで、とうとう来るところまで来てしまったな、という気がする。

今朝の日経の記事などを見ると、

IT企業の成長を優先してきた米国の競争政策や反トラスト法(独占禁止法)運用の転機となりそうだ。」(日本経済新聞2020年10月21日付朝刊・第3面)

等々、「転機」ということをやたら強調しているのだが、少なくともこれまで伝わってきている報道等を見る限り、自分はDOJのスタンスが大きく変わったという印象は全く受けていなくて、「新興企業が成長を続けた結果独占に至った。だから司法権力をもって成敗する。」というポリシーは全く昔のまま。

ただそれが、ハードのIBMから、ソフトのマイクロソフトになり、そしてインターネット上のプラットフォーマーたるGoogleになった、という、それだけの違いのような気がしてならない。

「市場を独占したい」と思ったところで誰もがそんな大それたことをできるわけではなくて、競争に勝つ、それもただ勝つだけでなく、一歩二歩、最終的にはぶっちぎる勢いで勝てるだけの破壊的なイノベーションを起こしたものだけが「独占」的な地位にたどり着ける、というのは、人類の長い歴史の中で、皆が何度も目撃してきたことでもあるし、苦労してそこまでたどり着いたところで人為的な介入によってその座を奪われる、というのも、何度となく繰り返されてきた歴史であるはず。

だから、今回の提訴の報を受けて、Googleの関係者が訴えている「自分たちは、消費者に提供するサービスが素晴らしかったから選ばれただけだ!」という趣旨の主張は至極真っ当であると同時に、かなりの危うさも秘めている。

”Today’s lawsuit by the Department of Justice is deeply flawed. People use Google because they choose to, not because they're forced to, or because they can't find alternatives. ”
"We understand that with our success comes scrutiny, but we stand by our position. American antitrust law is designed to promote innovation and help consumers, not tilt the playing field in favor of particular competitors or make it harder for people to get the services they want. We’re confident that a court will conclude that this suit doesn’t square with either the facts or the law. "
(by Kent Walker, SVP of Global Affairs)*2

予定されていた出来事だったとはいえ、これだけ整った主張をタイムリーに世に出せる、というところに、自分は世界で覇権を握っている会社の凄さを改めて感じたのだが、彼らが本気でこれまでのビジネスモデルを守ろうとすればするほど、当局の本気度も増すわけで、法廷があたかも競争法理論の実験場となるような事態も想定しなければならないし、そこにエネルギーを費やした結果、太陽の輝きが失われることも覚悟はしなければならないだろう、と思うのである。

振り返れば自分は家人の影響もあって、世の中の人々の多くがヤフーポータル一択だった時代からいち早く「検索はGoogle」に乗り換えていたし、開設してはや15年のこのブログも、これまでの来訪者の多くはググったのを契機に見つけて下さった方々だから、Googleに育ててもらったようなもの。

さすがにメールからWeb会議まで、PCだけでなく持ち運ぶ端末にまでGoogleが入り込んでくる時代が来ることは、15年前はもちろん、10年前ですらちょっと想像が付かなかったが、気が付けばGoogle Mapがなければ知らない街中を歩くことすらできないし、Chromeがパスワードを覚えていてくれないと会員制のサイトにログインすることさえままならない、そんな時代になってしまっている。

そして、自分はそれを便利だと思うことはあっても、「不自由」と感じることはこれまでほとんどなかった、ということも付け加えておかねばなるまい。

もちろん、「問題はそこじゃない、潜在的競争者の芽が摘まれているのが問題なのだ」という突っ込みもあるだろうけど、今のネット広告業界を見回せば、Googleの勢いが衰えることを喜ぶ会社よりも、不安がる会社の方が遥かに多いはずで、”生態系のバランスを保っている巨大鯨”を環境保全の観点から銛で打つような当局の所業に対し、大手を振って歓喜の声を上げるような人々は極めて少ないはずだ。

そうなってくると、いったい誰のため、何のための権力行使か、ということにもなってくるのであるが・・・

それでも、さらに時が経てば、今回のDOJのアクションが、一つの時代の転換点として歴史に刻まれているのだろう、と自分は想像しているし、20年後くらいに、自分も含め、まだ多くの人が存在すら知らないかもしれない会社に世界中で反トラストの嵐が吹き付けるようになったとき、この日のことをおもむろに思い出したりするんじゃなかろうか、と漠然と思っていたりもする。

何だかんだ言って、IBMもマイクロソフトも、依然企業としては健在だから、Googleという存在が地球上から消えていることはなさそうだけど、その頃にはもはや”主役”ではないはず。

だとしたら、その時、世界の覇権を握っているのは、どの分野のどんな会社なのか・・・?

イノベーションは、凡人が容易に想像できるようなところには存在しない。

その言葉を胸に刻みつつ、ここからの主役攻防劇を、胸を高鳴らせつつ見守っていくことにしたい。

*1:さしあたり昨年中の動きをまとめたものとして、「デジタル・プラットフォーマー」をめぐる今年の議論の締めに。 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~

*2:https://blog.google/outreach-initiatives/public-policy/response-doj

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