記事

トランプ大統領“大逆転のシナリオ” 実は「隠れトランプ」は4年前より増えている! - 横江 公美

1/2

 いよいよ2週間後に迫った、11月3日に行われるアメリカ大統領選。民主党候補のバイデン元副大統領の優勢が伝えられるが、それでも現地では「最後はトランプが勝つだろう」という声が絶えないという。4年前に大逆転勝利を演出した、投票日まで姿を現さない「隠れトランプ」支持者がいるからだ。

【画像】熱狂的ファンとは別。「隠れトランプ」支持者とはどんな人物か?

 このアメリカの現状を解き明かした著書『隠れトランプのアメリカ』(扶桑社)を10月20日に刊行した横江公美氏(東洋大学教授)が緊急寄稿した。

◆ ◆ ◆

 これまでのアメリカ大統領選挙であれば、民主党のジョー・バイデン元副大統領が世論調査で約10ポイントも先行している現状をみて、バイデン勝利を疑う人はいなかっただろう。

 しかし、いまアメリカ人は誰もが、口に出すか出さないかは別として、「それでもトランプが勝つかもしれない」と思っている。


劣勢が伝えられるトランプ大統領。「隠れ」支持者がいよいよ動き出す(10月15日) ©getty

 トランプ大統領を支える共和党員は、最終盤まで劣勢と言われながら巻き返した2016年の再現を狙って「隠れトランプ」支持者の存在を信じている。そして、一方の民主党員たちは「隠れトランプ」にひっくり返された前回の選挙がトラウマとなっているのだ。

「隠れトランプ」とは誰のことか?

 今回の大統領選挙においてメディアの世論調査で、新たに登場した質問がある。

「隣人は、どの候補を支持していると思いますか?」

 この問いは、まさに「隠れトランプ」支持者を探そうとする質問だ。アメリカのメディアも「隠れトランプ」をあぶり出すことに躍起になっている。

 彼らが表に出てこないのは、「トランプを支持する」と口に出すのをためらわれる空気があるからだ。トランプの言動、人となりが“アメリカの大統領の資質ではない”というのは、アメリカ人の共通認識だ。それでもトランプを支持しているのが「隠れトランプ」支持者。彼らの動向が、今回の大統領選挙の勝敗を決める大きな要素なのだ。

「隠れトランプ」は4年前より増えている?

 実は、前回の大統領選挙より今回の方が「隠れトランプ」は多いのではないかと思われている。それは、トランプのこの4年間の政策実行力によるものだ。

 日本から見ていると、トランプの人種差別的な物言いが注目されるが、政策を一つ一つ検証していくと違った側面が見えてくる。トランプは「自分の支持者のため」の政策をブルドーザーのように実行している。

 減税がシンボルだったレーガン大統領以上の減税パッケージを実現し、1995年までに議会で可決されながらこれまでの大統領が手を付けられなかった在イスラエルのアメリカ大使館のテルアビブからエルサレムへの移転も現実のものとした。公約通りTPP(環太平洋パートナーシップ協定)からもパリ協定からも離脱し、自動車関税の撤廃基準を厳しくした新NAFTA(北米自由貿易協定)も実現した。

 中国に対しても「アメリカの先端技術を盗んでGDP世界一になるのは許せない」と言わんばかりに関税をかける。中国の「デカップリング(切り離し)」をキーワードに、米中冷戦へまっしぐらのようにも見える。対中国包囲網を作るべく米日印豪で「インド洋=太平洋」を守る枠組み、クワッドを形成し、台湾への支援の手も差し伸べる。

 シェールガスの規制も緩和し、今や、アメリカは世界一の産油国。ガスも石油の価格もアメリカがリーダーシップを握るほどになっている。

 さらにトランプ大統領が誕生してから株価は堅調。新型コロナウィルスの感染拡大でパンデミックになっても、アメリカの株価は底堅かった。失業率も改善の一途をたどっていた。ギャラップ社が10月14日に発表した世論調査でも2020年9月時点で、55%のアメリカ人が「4年前よりも暮らし向きが良くなった」と回答している。しかも、54%の人がトランプの経済政策に賛成している。

 支持者に向けた公約を果たせば果たすほど、その“陽”の部分だけに注目してトランプ支持者は熱狂する。一方で、多数派の「反トランプ」陣営は“陰”の部分への批判を強める――という構図を繰り返してきた。

 トランプが実現したことを紐解いていくと、再選を見据えてトランプが打ってきた冷静な手立ては怖いほどだ。この冷徹な目を持っていなければ、ビジネスマンからテレビ番組を持ち、そのカリスマ性で共和党の大統領に当選することはできないだろう。トランプを一般人の物差しでは測ることはできないのである。

 トランプの言葉遣いは下品だ。しかしそこに引っ張られてしまうと、アメリカを見誤ることになる。

「隠れトランプ」とは誰なのか?

 では、今回も大統領選の鍵を握る「隠れトランプ」とは具体的には、どんな人々のことなのだろうか。私は、彼らが「ミレニアル世代」の時代にあって、その流れからこぼれ落ちた人々だとみている。トランプは、そこに目をつけているわけだ。

 ミレニアル世代とは、2000年以降に成人した人々のこと。物心ついた時からパソコンやスマホなどデジタル機器に囲まれ、情報収集はインターネットというよりSNS。コミュニティを大事にし、多様化や個人の自由を重んじ、人々と協力して問題解決に当たることを求める世代だ。理想のリーダー像はオバマ前大統領だろう。

 この「ミレニアル世代」の作った社会の流れに乗れないことに、自分自身で気がついた人たちが「隠れトランプ」になるのだ。そんな「隠れトランプ」は、大きく分けて次の3つのタイプに代表されるだろう。

【1】古き良きアメリカを愛する人々

「ミレニアル世代」が主導する多様化の流れの中で、古き良き時代のアメリカが好き。その保守思想の中心にあるのが「キリスト教的価値」と「銃」で、ここに共和党の集票マシーンである「コア・トランピアン」が存在する。その中でも、トランプの「外交安保政策」「規制緩和」に賛成している声高に主張しない保守思想を大事にしている人々が「隠れトランプ」になる。

【2】BLM運動に不安を持つ人々

「Black Lives Matter(BLM、黒人の命は大事)」の運動が全米のみならず、世界に広がっている。今年5月にミネアポリスで警官に暴行されたジョージ・フロイトの死は痛ましい。全く罪のない黒人、殺されるほどの罪のない黒人が警察に殺される事件が続いている。あってはならないことだ。だが、自分が住んでいる地域でBLM運動が暴徒化すると、治安上の不安を抱える。トランプはそんな心理を突いて警察と治安の重要性を訴え、「隠れトランプ」を獲得している。

【3】差別主義者と呼ばれたくない人々

 トランプの「物の言い方」が原因で「隠れトランプ」になってしまった人々もいる。「Qアノン」といった陰謀史観の集団、人種差別の集団を非難しないトランプの態度は受け入れられない、というアメリカ人は当然ながら多い。一方で、トランピアンは「Qアノン」のシンボル付きのTシャツを平気で着る人もいるし、「Qアノン」を信奉する共和党候補者もいる。バイデンへの激しい攻撃も尋常ではない。戦争で負傷した人を「ルーザー」と言うなど、人間として受け入れられない部分が少なくない。そんな影響から、「トランプ支持者だと、人種差別主義者だと思われる」と心配する人々が「隠れトランプ」になる。

あわせて読みたい

「アメリカ大統領選」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    共産党の式欠席に「ありえない」

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  2. 2

    渋野騒動 日テレのスポーツ軽視

    WEDGE Infinity

  3. 3

    立ち食いやきそば コロナで閉店

    田野幸伸

  4. 4

    簡単に休業要請 橋下氏「最悪」

    橋下徹

  5. 5

    医療崩壊危惧のワケ 医師が解説

    中村ゆきつぐ

  6. 6

    竹中氏もMMT認めざるを得ないか

    自由人

  7. 7

    韓国はなぜ延々謝罪を要求するか

    紙屋高雪

  8. 8

    株バブル過熱で短期調整の可能性

    藤沢数希

  9. 9

    秋篠宮さまにみる結婚反対の本音

    女性自身

  10. 10

    無策の菅政権「日本危なくなる」

    畠山和也

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。