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日本IBMの解雇の仕方は、別に非道じゃないとおもう……アメリカでは、当り前 「今日はニューヨークからボスが来る日だ。さっさとスタバに避難しようぜ!」

リストラは、気分の良いものじゃありません。

僕はリストラされる側も何回も経験しているし、リストラする側も経験しました。だからリストラされちゃった人には、僕自身同じ境遇に置かれたので心から同情しますし、リストラする経営側の大変さも、わかっているつもりです。

それを断った上でBLOGSに出た「午後5時解雇通告……日本IBMこの非道……」という記事に言及したいと思います。同記事ではIBMのやり方が「非道だ」と形容されています。でも僕に言わせれば、アメリカでは記事に書かれたようなリストラの通告の仕方は、ごく標準的なやり方のような気がします。これよりもっとえげつない会社は、いくらでもあります。

投資銀行の場合、人事部に呼ばれて、解雇を言い渡されたら、普通、自分のデスクには戻れません。解雇の後で自分のデスクに戻れる会社は、危機管理が出来ていない、ヌルい会社です

自分のデスクの電話も、解雇される本人が人事部でリストラを言い渡されている間に使えなくするのが、標準的なやり方です。なぜならデスクに戻った、解雇されたばかりの社員が怒って会社に損をさせるようなトレードをやらないようにするためです。

外資ではリストラは日常的に行われるわけですから、解雇を言い渡す段取りは、厳格にマニュアル化されています。日本IBMだって親会社はアメリカなんだから、当然、周到な指示書に従って、やっているはず。

若し、そういう事がイヤなら、そもそも外資になんか勤めない方が自分のためです。

そこでマニュアルに基づいた解雇に関して、僕自身の経験談をひとつ。僕はネットスケープが1995年にIPOされたとき(これからは、このドット何たらというのが、ブームになるな)と直感したので、かねてから憧れていたハンブレクト&クイスト(略してH&Q)という西海岸のブティック投資銀行に入ったんです。それからドットコム・バブルが弾けるまでの間は、とても忙しい日々でした。

しかしその後H&Qはチェース銀行に買収され、チェースは米国内ではJPモルガン、海外ではジャーディン・フレミングを買収し、新生JPモルガンとして生まれ変わった……合併に次ぐ合併で、メタボ体質になるし、ぶら下がることしかアタマにないお荷物みたいな社員がどんどん増えちゃう(笑)

ちょうど折からドットコム・バブルが崩壊し、そのうえ9・11のもたらした不景気が襲いましたから、現在のウォール街が置かれている状況と同様、リストラが荒れ狂うことになったのです。

普通、アメリカの会社では大々的に人員削減しようと思うと、先ずボスをすげ替えます。なぜならずっと一緒に仕事をしてきた部下だと、どうしても情が出て、リストラの大ナタを振り降ろせないからです。新しいボスは他社から自分とともに移籍したナンバー・クランチャー(=会計屋とでも訳しましょうか、要するにコスト削減のための数字合わせをするスタッフです)とともに、削減目標に達するまで、バサバサ切ってゆくわけです。

僕の勤めていたH&Qでも株式本部長が変わった。自分を5年前に採ってくれた、尊敬する部長が先ず「処刑」されて、クレディスイスかどこかから、わけわかんないオッサンが乗り込んできた……。で、そのあたらしいボスが、「今度、サンフランシスコに自分の兵隊を閲兵に行くから、全員出張しないように」という社内メモが回ってきた。

これでピンと来たんですね(笑)

大体、証券営業なんて日頃はあちこち飛び回ってビジネスを追い掛けるわけだから、「全員出張しないように」というのは「仕事をするな!」と言っているのと同然です。

Hey, Russell, are you thinkin what I’m thinkin?
ねえ、ラッセルうぅ……これって、ヤバくね?
Yeah, It’s gonna be a fucking massacre.
うん。血の海でしょ。

僕はアシスタントのラッセル君に机の周りをきれいに片づけて、私物を置かないように指示しました。そしてNYからボスが来る当日は、彼と終日スタバで粘って、会社に行かなかった(笑)

その間、会社では株式部の連中は新しいボスに「自分はいかに優秀で、かけがえのない人材か?」ということをアピールするビューティーコンテスト状態になったわけです。皆、売上高のスプレッドシートや顧客リストなどを携えて新しいボスと個別ミーティングし、自分の売り込みに余念が無い……

God is here……look busy!
「神様が来た! 忙しいフリをしろ」

というわけです。

で、ボスが帰った後、二週間ほどして、大々的なリストラが発表された。ひとり、またひとりと人事部に呼ばれて、解雇を言い渡される。すると解雇を言い渡された社員はトレーディング・ルームには戻れず、アシスタントの女の子が段ボールにボスの所持品を無造作に突っ込んで、階下のロビーでボスに渡す……そしてその作業が終わると、次にはそのアシスタントの女の子も呼ばれて、解雇される。

まあ、そういう「硫黄島玉砕」みたいな悲惨な状況になるわけです。

で、一日終わってみると……ガラーンと空席ばかりが目立つトレーディング・ルームの中に、僕とラッセル君だけは、ぽつねんと残っている(笑)

これはなぜか?

その理由は、ニューヨークからボスが来た理由は、本人確認のためだからです。つまり、そこに居るのか、居ないのか? それすらもわからない社員は、そもそも切れない(笑)

ちゃんと確認してから、切る。

つまり新しい株式本部長は、世界の何処に自分の拠点があって、そのトレーディング・ルームがどのような配置になっていて、誰が自分の部下なのか、全然わかってない(笑)……そりゃそうですよね? だっていきなり数千人もの部下の責任者として着任して、世界中の拠点を管理しなきゃいけないのだから、名前と顔が一致しないのは、当り前。
「おかしいな……切っても、切っても、未だサンフランシスコに社員が残ってるぞ?!“#$%&」

ちゃんと本人を確認して、全員「処刑」したはずなのに、ペイロールを汚す社員が、残っている……

結局、僕とラッセルは旧H&Qサンフランシスコ本社の国際部の最後の「生え抜き」として、他の社員が居なくなった後も、ずっと勤め続けました。

ドロンパ戦術の、おかげです。

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