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大学祭での飲酒は、よいキャリア教育になる

キャンパスからアルコールが追放された

ここ数年、大学キャンパスはどんどんアルコールフリー、つまり飲酒を閉め出すようになっている。はじめは学内禁酒、そしてやがて学祭での禁酒がもはやほとんど大学で実施されるようになった。早稲田、明治ははもちろん、今年からは一橋、法政も飲酒禁止に踏み切る。僕は法政出身。大学時代学祭と言えば、とにかく一日中どんちゃん騒ぎ。応援団が寅箱を用意し、介護するなんてシステムまであった。しかし、祭に酒はつきもの。ましていわんやバカをやるのが大学生。それがなぜこんなことになっちゃったんだろう?今回はこれについて考えてみたい。

キャンパス内禁酒の歴史、実は浅い!

実は大学内や学祭でのアルコールフリーが一般化したのはそんなに古い話ではない。2000年前後は、学祭では飲酒というのはまだあたりまえだった。これが突然、あっちこっちで飲酒禁止、アルコールフリーキャンパスとなるのは2006年、福岡で会社員が飲酒運転して中道大橋で手前のワゴンに追突し、これが博多湾に転落して、乗車していた子ども三人が死亡するという事故が起きてから。この事件はメディアで大々的に報道され、学祭どころか一般の祭でも振る舞い酒を中止するという禁酒モードにまで至った。まずこのあたりが引き金だろう。

ただし、引き金が引かれるからには、その前に弾がこめられていなければならない。つまり大学からアルコールを閉め出すという文脈が形成されている必要がある。で、この文脈には様々な要素が含まれていた。これを様々な側面から考えてみよう。

ノミニケーションはもはやコミュニケーションの一部分でしかない

先ず学生を巡る事情。学生たちが集団で飲酒すること、いや飲酒することそれ自体がかなり減少している。コンパを開いても、その内のかなりのメンバーがソフトドリンクだ。以前だと大学入学とともに部活やサークルのコンパに連れて行かれ、飲めもしない酒をあおらされ(今ならアルハラということになりそうだが)、そんなことを繰り返すうちにだんだん酒の飲み方を覚えていったのだけれど、こういったコミュニケーションそれ自体が減少している。飲酒=ノミニケーションはあまたあるコミニュケーションの一つに成り下がったのだ。だから、酒のたしなみ方というのが身についていない。そんな連中が学祭で盛り上がるとコントロールが効かない飲み方になってしまう。それが急性アルコール中毒で死亡という事件を引き起こす。そしてそれが社会問題化するというわけだ。

大学側の責任回避

もう一つは大学側の事情。今や学校は様々な苦情を抱える機関となった。とにかく親からのクレームはすさまじい。自分の息子娘に何かあろうものなら、即座に学校にクレームがつけられる(今や、指導と称して教員が生徒に手をかけるということは不可能。やろうものなら“暴行”として逮捕される可能性すらある)。これは大学も例外では無い。もし、キャンパス内で飲酒し、それが原因で学生が死亡するようなことがあれば、即座に大学の管理不行き届きとして責任を追及されることになるだろう。 こうなると、当然大学側は防衛に入る。責任問題を押しつけられないよう、問題の種となる可能性を未然に防ごうと考える。その結果が学祭を含めたキャンパス内からのアルコールフリーという流れだった。

だが、この展開、ちょっとおかしくはないだろうか?というのも、これじゃあただの問題の先送りだ。単に大学側が責任回避しただけ。アルコールによるトラブルがただキャンパスで発生しなくなるだけで、彼/彼女たちがみんなでやる個人的な飲み会(飲み屋での飲みや仲間のウチでやる宅飲み)でトラブルが発生する可能性がある。ようするに「臭いものに蓋」をしただけなのだ。

飲酒という行為もアクティブラーニングとして捉えることもできる

慶応や中大、東京外大が面白い試みをしていると毎日新聞が伝えていた。慶応は酒類販売のチケット制、中大は飲酒場所の限定。そして東京外大は年齢確認をして、二十歳に達している学生には「アルコールパスポート」配布しているとか。でも、まあ消極的というか対処療法的という感じがしないでもない。このパターンだと、早晩これらの大学の学祭からもアルコールは消えていくんじゃなかろうか?

しかし、アルコールを介したコミュニケーションはいずれ彼/彼女たちがどこかで経験することになること。とりわけ社会に出て行ったならば、こういった機会は避けられない。だったら、酒の飲み方を教えることも大学の「キャリア教育」の一つと捉えることもできる。そう、大学側は責任を回避することだけを考えているだけでなく、飲酒を積極的な教育の機会として利用するべき。僕ら大学教員にとっては自分の首を絞めるようなものだが、大学進学率が五割を超えている現在、大学はこんなことまでやるような時代になったと考えるべきだ。大学生たちは、今や自分を「学生」ではなく「生徒」と呼ぶ。ということは、大学にやってくる若者たちには「生徒指導」が欠かせない。まあ、情けない話だが。

で、どうだろう。学校側が一方的に禁止したり、制限をかけたりするだげじゃなくて、学生たちがどうやったら、楽しく、安全に飲酒出来るかを考えさせるような機会を作ってみたら?たとえば学祭でアルコールコントロールをするような仕組みを考えさせる。これって、どうやってみんなを安全に楽しませることができるかを考えさせる企画としては実に面白いことなんではなかろうか。そして格好のキャリア教育になるんじゃないだろうか?

大学も、もうちょっと視点を変えて考えるべきだろう。

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