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平日投票の米大統領選 従業員が投票に行けるよう配慮する企業イニシアティブに1600社参加



世界が注目する米大統領選が11月3日に迫る中、企業の動きも活発化している。有権者の投票率の低さが問題視されている大統領選だが、投票が行われるのは平日。投票率が低い最大の要因は、仕事だ。そのため、米国では2018年に従業員の投票を促す企業主導のイニシアティブ「Time to Vote」が始動。現在までにグーグルやツイッター、コカ・コーラ、バンク・オブ・アメリカ、ウォルマートなど1600社以上が参加するまでに拡大している。企業は、社内で期日前投票や郵送投票について情報を発信するほか、投票に行けるよう選挙日を休業日にしたり、有給休暇を与えるなど配慮する。この他にも、従業員や顧客などに投票への参加を促すキャンペーンが設立され、混迷を深める民主主義の再建に企業も積極的な姿勢を見せている。(翻訳・編集=サステナブル・ブランド ジャパン編集局)

米国の有権者の投票率は先進国の中でも最低レベルだ。2016年の大統領選挙では、投票率が55%にとどまり、世論の二極化が明確となった。米国のより良い未来のために、さらなる有権者の投票への参加が求められている。

選挙が休日に行われ、投票が義務化されている国とは異なり、米国で有権者が投票に行かない最大の理由の一つは仕事や生活に追われて忙しいからだ。仕事を休めるように措置を取ることは投票率を上げることにつながる。

働く人が、給料か投票かを天秤にかける必要はない

Time to Voteは2018年夏、パタゴニアやリーバイ・ストラウス、PayPalなどさまざまな分野の企業が集まり設立された。働く人は、給料を稼ぐか大統領選の投票に行くかという二者択一を迫られるべきではない。企業が主導し、有権者の投票への参加を増やすために必要な文化の転換に貢献していこう、というのが活動の主旨だ。同年の米中間選挙の際には、従業員が仕事中に投票を行う時間を確保することを約束した。

10月19日時点で、全米50州の1600社以上がTime to Voteに参加。企業は、従業員が総選挙の投票ができるよう、必要な時間やツールを与えることで投票を促す方針だ。

投票という行為が社会や企業活動にもたらす意義については、米サステナブル・ブランドのイニシアティブ「Brands for Good」が行なった共同研究による調査結果からも明らかだ。「投票」は、すべての人にとって健康で公平な未来を創造することを手助けするために消費者自らが携わることのできる「最も影響力のある9つの行動」の一つに入っている。同イニシアティブに参加するペプシコやVISA、ダーゲット、クロロックスなどもTime to Voteに参加している。

2016年の大統領選では有権者の二極化が注目を集めたが、今回はさらに課題が山積みだ。現在も続く新型コロナウイルス感染症の拡大により、投票率を上げるための障壁を取り除くことはさらに難しくなっている。また人種平等を求める世界的な運動が行われるタイミングで選挙が行われ、経済的な理由で政府発行の身分証を取得できない人たちが投票できないなど、有色人種のコミュニティが制度的な弾圧の影響を受けている現実が浮き彫りとなるほか、民主主義を守る上で企業のCEOが果たすべき役割も問われている。

Time to Voteの参加企業はこの3カ月間で急増しており、バンク・オブ・アメリカやデル、LEGOシステムズ、ベン&ジェリーズ、ナイキ、SAP、ユニリーバ、ディスカバリーなどが名乗りを上げた。実際に、今年2月末時点での参加社数は約400社、8月末には約700社だったが、選挙が近づくにつれて勢いが加速している。

「米国の民主主義と正義」に関する研究をする、ニューヨーク大学のブレナン・センター・フォー・ジャスティスの副代表で、「女性とデモクラシー」フェローのジェニファー・ワイス=ウルフ氏はこう語る。

「Time to Voteは発足以来、有権者の投票へのアクセスと参加を強く主張してきました。これほど多くの影響力のあるビジネスリーダーたちが協力し、市民的社会参画という重要な問題に立ち向かうというのは、説得力のあるメッセージです。とりわけ課題が切迫している今、参加する企業が従業員が投票に参加できるよう休みを与えると約束することは、有権者の投票を阻む最大の課題の一つに対処することになります」

Time to Voteに参加する企業の多くは、従業員が大統領選挙の投票に参加できるようにさまざまな施策を発表している。コカ・コーラやヒューレット・パッカード・エンタープライズ、ノースフェイス、セールスフォース、ターゲット、ティファニー、ツイッター、ウーバー、ウォルマートなどの企業は選挙日を有給の休業日にしたり、有給休暇を提供するなどする。また、今回はコロナ禍での投票となるため、期日前投票や郵便投票などの取り組みを積極的に推進する。Time to Voteに参加していない企業でもこうした取り組みは行われ、アップルは選挙日に投票に行ったり、投票所でのボランティア活動をするために最大4時間の時間単位の有給休暇を与える。

Time to Vote以外にも、従業員が投票に参加できるよう推進するキャンペーンがある。

Civic Alliance
494社が参加するキャンペーンは、健全かつ機能する民主主義を目指し、公正で透明性のある選挙を実現するために、従業員や顧客などの投票を促す企業主導のキャンペーン。2028年までに投票率80%達成を目指す。

A Day for Democracy
ハーバード大学やメジャーリーグなど140万人以上の従業員を雇用する320社以上の企業や組織が参加し、従業員が投票に行けるよう時間を確保することなどに取り組む。

The Leadership Now Project
Electionday.org
正当な選挙が実施できるよう、現在どのような課題があり、雇用主が取り組むべきことは何かを明確に分かりやすく示している。例えば、The Leadership Now Projectは「従業員や顧客、消費者に投票に参加する計画を立てるよう促す」「投票に参加できるよう有給休暇を与える」「(投票所の係員に高齢者が多いので)従業員に係員に登録するよう呼びかける」「投票所が十分な感染症対策を行えるよう、資金調達に協力する」「安全で公正な選挙を支持することを公にする」といった5つのアクションを提示する。

クラフト・ハインツ、 ターゲット
クラフト・ハインツと小売大手ターゲットは、婦人有権者同盟(League of Women Voters)と全米製造業者協会(National Association of Manufacturers)の協力のもと、有権者登録のプロセスや候補者について従業員が学べるサイトを作成した。

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