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家よりは学校が居場所だが、9月から自傷行為が増加。曽祖母の死をきっかけに意識した「死」【生きづらさを抱える人々36】

警察庁によると、2020年8月の一ヶ月間の自殺者数は、速報値で全国で1854人。昨年・19年8月と比べて251人、16%増加した。なかでも、女性651人で、昨年よりも約40%も増えている。男性も6%増で、1203人。自殺者数自体は男性が多いが、女性の自殺が増加した。しかも、顕著なのは中高生だ。今年8月の自殺者数は、過去10年で最も多かった。

学校再開後、衝動的に自傷行為、授業に出ることも難しく

そんな中で、中学3年生の千明(仮名、14)は、「休みで気が楽になっていた人が学校に行かなきゃならなくなったからではないでしょうか」と、コロナ禍での自殺の増加は学校問題に関係したものではないかと想像している。ただし、家庭に居場所がないと感じている千明は、学校の再開で、気が楽になっているようだ。

※写真はイメージ Photo by Eric Ward @ericjamesward On Unsplash

「どちらかというと学校があって良かったです。イベントがなくなって、遊べなかったりはしましたが、家に居るよりは楽しかったです。なにより学校には居場所があると感じました」

ただし、9月14日から自傷行為が激しくなった。痕跡も以前よりは残っている。

「自傷行為が本格的になってきました。前は1日も跡に残らない感じでしたけど、カミソリで切るようになって、1週間は跡が消えないくらいに切っています。授業に出ることが難しくなってきて、保健室やスクールカウンセラーさんにかかることが増えました。以前はそんなこと無かったです」

いったい何があったのだろうか。実は、具体的な問題があったわけではないという。

「突然、『あ、友達と居られない』と思って、Twitterのフォロワーを全員ブロックしたんです。またみんなをフォローする予定でしたがどうしても決心ができず、『もう戻れない』と友達に伝言を頼んだんです。ただ、友達は『なんでやめるの?』『迷惑なんて思ってないよ』『やめなくていいんだよ』と止めてくれました。

しかし、それも恐怖に感じてしまったんです。『無理、戻れない』と断ったら、『じゃあ僕もやめる』と半ば道連れな感じで友達もTwitterをやめてしまったんです。『自分のせいで友達がTwitterをやめた』『あれもこれも自分のせいだ』と自分を責めて泣きじゃくって、とうとう腕を切ったんです。洗面台にカミソリが出ていて衝動的に切ってしまったんですよ」

保育園から小学校までいじめ。きっかけは、知識をひけらかしていたこと?

写真AC

千明は両親と他のきょうだい2人の5人で暮らしている。「特に問題がある家庭とは思っていません」というが、「他の友達と比べると、みんな口が悪く、ルールが厳しく感じます」と話す。友達の家族と単純比較することはできないが、小さい頃に「笑っていた記憶はない」といい、千秋にとって楽しい家族ではないことがわかる。

辛い記憶は、保育園から小学校2年のころまでいじめられていたことだ。

「特に保育園の時の3年間、3日間ほど同学年の人全員にあからさまに避けられたり、主犯格の人に首を締められたり叩かれたり蹴られたり、馬鹿にされたりしていました。いじめと言ってもまだ幼稚なものでした。こちらにも非があると思っています」

どんないじめだったのだろうか。

「あまり覚えていないのですが、『強い男の子軍団』みたいなものがあって、その人たちは普段、色んな人をからかうようなスタンスで人と接していました。自分もきっと目をつけられていじめられたんだと思います。その理由は先生や親いわく。『習っていた英語や本で得た知識をひけらかしていた』ことだそうです。自分は悪意はなく、「これ知ってる?」みたいな感覚でした。」

保育園でいじめられてどう感じたのだろうか。

「保育園の時は家で泣いていて、なんとも言えない絶望感がありました。それしか覚えていません。もちろん、楽しいこともあったでしょうけどね。ただ、今は割り切れました。まだ道徳とかでたまに『いじめはやめよう!』みたいな話になると泣くことはありますが、思い出して眠れないとか、『いじめてきたあいつが嫌いだ』とかは思わなくなりました」

死を意識した理由は、曽祖母の死。「死ぬってなあに?」

千明は保育園の頃、「死」を意識するようになる。年長の頃、曽祖母が亡くなったためだ。

「親類は曽祖母で、たまに遊びにいく程度でそこまでおばあちゃんっ子でもなかったです。父に、『死ぬってなに?』って聞いたんです。すると、『天国に行くことだよ、でもきっと違うんだ』といわれ、『じゃあどうなるの?』と聞いたら、『きっと真っ暗で、なんにもないんだよ』って。死ぬって自我がなくなることなんだって意識した瞬間に怖くなって、その日からしばらく寝る時に息が出来なくなりましたね」

ただ、保育園のときには「死」は意識するものの、自殺を考えたのは小学校低学年になってからだった。「こうやって死のう」と、自殺のことが頭に浮かんだ。

「保育園にいた子の殆どが小学校も一緒でした。さらに言うなら、中学3年になった今、元いじめっ子とクラス一緒です。その時はいじめは少なくなっていました。このときのいじめは、ちょっとお遊びで蹴られる程度でした。多分死ぬのが怖かったから、『そんなら自分で死んでやろう、終わらせてやろう』みたいな心理があっただけかもしれません。きっと嫌なこととか親に怒られたことが重なってそう思ったんだと…」

ベランダに出されてしまって、ふと下を見たら『あ、これ、死ねるかも』

いじめ以外に、親との喧嘩が自殺を思うきっかけというが、どんなことだったのか。

「親に怒られたことはナフキンの準備とか宿題など、『やること』をやっていなかったことです。嫌なことはあんまり覚えていないです。怒られてベランダに出されてしまって、ふと下を見たら『あ、これ、死ねるかも』と思いました。前から準備していた訳ではなかったので、柵に足が届かないことがわかって実行しようと思ったんです。突発的に「死のう」と思った理由は、怒られて『もう自分は要らない』『怒らせてしまう自分がいなくなったら、親はどんなに楽だろう』と思ったからです」

また、低学年のときは、親を殺したいと思ったこともあるようだ。

「家族を殺して自分も死んでやろうと思ったんです。深い理由もなく。その後も何度か、『殺したい』と思ったことはありましたけど、明確な理由はないです」

スマホを使うようになって、孤立しなくなる

写真AC

悩みを抱えても誰にも言えなかった千明だが、中学に入ってからは友人や恋人に悩みを話せるようになった。スマホを自由に使えるようになったからだ。スマホの利用で依存傾向が強まり、人間関係も拗れてしまうことがあるが、千秋はそうはならなかった。

千明は「今までは誰にも頼れなかったけれど、スマホを手に入れたことで友人や恋人と気軽に繋がることが出来りうようになった」と振り返る。現在、家族については複雑な気持ちがある。大きな出来事というよりは、ふとした一言が今の感情を引きずっているのだ。

「親には、今まで僕のことを育ててくれたことは感謝したい。感謝しなくてはいけないと感じるんです。それなのに、感謝の念を感じることがあまり出来ない。しかし子を育てることは親として当たり前のことでは?責任もって産んで欲しいと思ってしまいます。何故か息苦しく、家には居場所がないかのように思える。親にも兄弟にも問題はないと思う。小さい頃の親に抱いた絶望感をまだ引きずっているように思う。『死ぬのが怖い』と訴えた時に、笑われたことがずっとずっと脳裏に浮かぶんです」

 千明の「生きづらさ」の出発点は、自分なりに分析できている。しかし、両親や他人から見れば、このことが発端だとは気が付かれない。このような何気ない一言が生きづらさの源泉だという人は、私も何人かは取材したことがある。しかし、周囲には、なかなか理解されない。そして、その理解さえなさが、さらに生きづらさを増していく。

*記事の感想や生きづらさに関する情報をお待ちしています。取材してほしいという当事者の方や、リクエストがあれば、Twitterの@shibutetu まで。

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