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財界の描く理想って一体… 構造改革路線に未来はない

 少々、古いニュースですが、日本自動車工業会の試算が報道されていました。
 「新車販売、消費増税で150万台減…自工会試算」(読売新聞2012年10月24日)
 消費税増税は、同じ所得であれば、購入できる額は減りますから、当然に購買力が落ちます。
 消費税大増税に、販売関係の業界が反対していたのは、商品が売れなくなるからであり、反対は当然のことでした。
 しかし、不思議なのは、自動車産業界も含め、財界は消費税大増税は大推進の立場です。自動車が国内で売れなくなるのではないかという懸念はないのでしょうか。

 財界が消費税大増税を推進する理由は明瞭です。
 財界は、日本の巨額の財政赤字の解決のためには消費税大増税路線を推進する必要があり、ましてや、法人税増税などもってのほか、逆に、消費税大増税は、法人税減税を目的ともしています。それによってグローバル化した企業は、コストを引き下げ、競争力を回復しようというものです。
 財界の意向を受けた民主、自民両党は、消費税大増税路線を推進します。

 ところで、巨額の赤字財政になった原因は、大企業のための公共事業、しかもダムのような国民生活には何ら関係のない、無駄なコンクリートのために湯水のごとく税金を流し込んでいたからです。
 雇用の場を提供してきたなどという主張がなされることがありますが、雇用の場の提供だけであれば、ダム建設えある必然性はなく、しかも、大企業が潤うというだけでなく、その公共事業に流れたカネが政治家(これまでは主には自民党)への献金として循環していたということになれば、「雇用の場を提供してきた」などというのは、悪質なすり替えの主張というべきものです。
 このような、グレー(政治家への循環)な部分があるカネの流れでは、財政赤字になるのは当たり前で、企業や政治家は、国家財政を私物化し、その税金で潤っていたというべきなのです。
 従って、その財政赤字の責任を曖昧にして、消費税という最悪の大衆課税を推進するのは、あまりに図々しい政策なのです。
 しかも構造改革という名の下に、小さな政府を標榜し、大企業への法人税をさらに減税させようというのであり、その財源に消費税を充てようというのですから、メチャクチャです。
 消費税大増税により、国民の購買力は失われ、その結果は、日本自動車工業会の試算のようになっていくわけです。
 ひいては、雇用も失われていきます。
自動車産業全体で約22万人の雇用が失われ、関連する鉄鋼、電機などを含めて国内製造業の規模が計約7兆1000億円縮小するとしている。」(前掲読売新聞)

 それでも自動車産業界は困りません。自動車産業などは、とうの昔に生産拠点を海外に移転しており、賃金水準の高い日本国内での生産など、既に眼中にはないからです。
 製造業は、いかにコストを安くするかという視点(人件費の圧縮)しかなく、その結果、日本国内では購買力が失われ、ますます国民生活は衰退していきます。
 自分たちの生活を支えるための生産ではなく、単に企業がカネ儲けをするためだけの手段としての生産に過ぎませんから、それによって私たち国民の生活が豊かになることはないのです。

 このように見てくると、構造改革の目標は、国民を家畜並に生存さえできればよく、黙って言うことを聞く労働力であればよく、それが理想ということになります。
米国大統領選挙 ロムニー氏の発言は米国社会の矛盾の象徴
 いってみれば、女工哀史のような女工待遇こそが財界にとっての理想的な労働者政策です。
 この時代も低賃金労働によって生産された工業製品を世界に輸出することによって競争力をつけてきたわけですから、現在の財界がやろうとしていることは、過去にやってきたこと同じなのです。
 現代社会では、女工哀史を再現するための手段が派遣労働の解禁であり、それは、労働力を流動化させ、賃金を切り下げることにその目的があります。
 生活保護の切り下げにより、最低賃金の引き上げを抑制し、さらに国民の生活水準を引き下げることを狙っています。
 さらに、その代替として食料価格を引き下げを正当化するために、安価な食料を輸入することによって対処しようとしていますが、それは同時に日本の農業を潰し、税金支出を抑えることも目的としています。しかし、そのようにコストを抑えるということは食の安全性にも問題が出てくるということであり、また世界的に食糧危機が叫ばれる中で、財界の考えることは、いかにも目先のことばかりです。

 しかし、世界各国がこのような新自由主義経済を遂行したらどうなるのか、どの国の国民も生活力は低下しますし、財界が望むような全く無抵抗な国民であろうはずもなく、その矛盾は急速に拡大していくことでしょう。
 アラブ社会における不安定化は、米国のような強大な軍事力をもってしても人民の反抗を抑圧することはできなかったということでもあります
 その意味では、財界が描くような理想的な新自由主義経済など実現できようはずもないのです。
 米国は、無駄な軍事関連支出を増大させるばかりで米国は財政赤字を拡大してきたわけです。世界市場の安定を核兵器やその他の軍事力でもって維持し、さらには反米国家を力ずくで打倒して親米国家を樹立するなどは、冷戦後は、さらに世界の警察を自認してこの路線を拡大していきます。
 しかし、結果は巨大な財政赤字であり、貿易赤字をさらに悪化させることになります。
 特に共和党ブッシュ政権が行ってきた新自由主義改革は、双子の赤字を増加させたばかりでなく、カネ持ち減税によって自国民に対しても格差社会を増大させました。
 新自由主義改革の結末がこれでは、新自由主義経済が目指すものなどは、「理念」としても存在し得ないというべきものです。
 マネーゲームをもてはやし、自国民を単なる安価な労働力(商品)にしかみないのですのでから、いずれは商品を生産しても買うことができる層は、急速に狭くなっていきます。生産力自体も落ちます。生産拠点を労働力の安い国に移転してしまうのですから、その国の生産力は落ちるのは当然で、産業空洞化が指摘されながら、なおその路線は継続されています。

 そして、重要なのは、市場の確保と言いながら、国内市場はそもそも眼中になく、世界的に「有望」な市場を探してはマネーを転がすだけだということです。
 国内の市場については、既に購買力は賃下げによって落ちるし、消費税大増税が拍車を掛けることになりますから、「輸出」が前提となっています
 そこにTPPを財界が求める動機があります。
 自動車産業界にとって、国内市場で、車が売れなくなるなどというのは、市場を海外に求める以上、どうでもよいことであり、雇用喪失についても、もともと派遣業解禁の時点で雇用を守る意思など全くありません。
 典型は、首切りゴーンと言われたカルロスゴーン氏率いる日産ですが、トヨタも当初こそ雇用を守ると言っていたにも関わらず、いつの間にやらその方針が転換されます。最初から日本人労働者の雇用を守る気はないのです。

 このように見てくれば、はっきりするでしょう。
 消費税大増税は、旧与党自民党、大企業のための公共事業による莫大な利益のツケをすべて国民に負わせるという魂胆。
 企業が潰れれば雇用を守れない、なんていうのもすべてウソ。国民を家畜としかいていないだけ。
 TPPによる利益は国民のためでなく、財界のため。
 しかも、すべて財界の目先の利益のためであり、その後に国民が、国家が、そして将来の企業自身がどうなろうと知ったことではない、ここが一番、重要な点です。

 新自由主義の「理念」は、目先の財界の利益を守るという点にあり、永続的な経済成長を目指したものではないということです。

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