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「こんな番組当たるのか?」局内の不安を覆したNizi Projectの巧妙な拡散戦略 NiziU人気爆発の裏にコロナあり!?

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デビューまであとわずか…ティーンを中心に圧倒的な人気を誇るガールズグループ『NiziU』。ヒットの裏には、何重にも仕掛けられた巧みなメディア戦略が! 拡散の道筋を紐解くと、これからのコンテンツビジネスのあり方や、テレビ復活の道筋までもが見えてきました。


クロスボーダークリエイター・放送作家の谷田彰吾です! 毎月、芸能人のYouTubeについて考察させていただいておりますが、今月はデビューを目前に控えて話題沸騰中の女性アイドルグループ『NiziU(ニジュー)』を取り上げます。

NiziUのヒットの秘密については、すでに様々な分析がなされてきました。これまでの日本のアイドルとは一線を画すパフォーマンス重視型であるとか、韓国の名プロデューサー・J.Y.Parkさんの言葉が刺さるとか、様々です。

そこで、今回はグループやコンテンツの中身ではなく『導線』について考察したいと思います。日本のアイドル史に革命を起こそうとしている9人の少女たちは、巧みなメディア戦略によって誕生しました。テレビとYouTubeを横断して仕事をしている僕は、これぞ新しい時代のクロスメディアのお手本だなとうなってしまいました。

テレビ・YouTube・有料動画プラットフォーム、多数のメディアを掛け算することでファンの熱量を倍増させていった『Nizi Project』の拡散デザイン。これが苦境に立たされているテレビを救うヒントでもあると考えています。

このコラムを読んでくださっている方はNizi Projectのことをご存知だと思うのですが、知らない方のために言っておきます。見た方がいいです。今からでも間に合います。「アイドルに興味無いわ〜」とか、「子どもが見るものでしょ」とか好き嫌い言ってないで絶対に見るべき。なぜか? Nizi Projectは、あらゆるビジネスにおいて重要視されている『拡散』の手法を学ぶのにうってつけのコンテンツだからです。

半年で乃木坂を抜き去った衝撃の拡散力

©JYP / SML

まず、NiziUの存在がいかに拡散されたかを見ていきましょう。NiziUの公式Instagramのフォロワーは、174.5万人(10月12日現在)。実はこれは公式情報アカウントで、別に公式アーティストアカウントもあり、こちらは155万人。TikTokは160万人います。

そして、公式YouTubeチャンネルは登録者数143万人。ちなみに、日本のアイドル界の頂点に君臨する乃木坂46の公式YouTubeは134万人。NiziUは、2020年4月10日に初めての動画が投稿されてから約半年で、日本一のアイドルを抜き去ったということになります。

次に再生数を見ていきましょう。チャンネル全体の再生数は驚異の1億5千万再生を突破。10月12日現在で60本の動画を公開しているため、アベレージはこれまた驚異の約260万再生。中でも一番再生されたのは、プレデビュー曲である『Make you happy』のパフォーマンスビデオで、2687万再生。ここまでいえばもう文句は無いでしょう。正真正銘、ぐうの音も出ないほどバズっているのです。

では、Nizi Projectはどうやってここまで多くの人にコンテンツを届けることができたのでしょうか?

有料番組からスタートする常識破りの発火点

TWICEや2PMを輩出した韓国のエンターテインメント企業・JYPエンターテインメントと日本のソニーミュージックが共同で開催したグローバル・オーディション、それが『Nizi Project』です。

見た方はわかると思いますが、Nizi Projectはコンテンツとして決して新しいものだとは言えません。なぜなら、カリスマ的なプロデューサーが合宿を通じてデビューする女の子を選び出す、日本でも昔から放送されてきた王道のオーディション番組だからです。

過去の事例で代表的なのは、モーニング娘。を生み出した『ASAYAN』でしょう。テレビ東京で放送されたこの伝説的オーディション番組は、男女を問わず次々と新しいアーティストを世に送り出しました。乱暴ですが、ASAYANを部分的にアップデートしていくとNizi Projectになる…そう言っても過言ではないほど、類似したコンテンツです。

しかし、ASAYANとNizi Projectは大きな違いがあります。ASAYANが無料のテレビ放送だったのに対し、Nizi Projectは有料のサブスク動画プラットフォームで配信された番組なのです。むしろそれが一番アップデートされたポイントだと僕は思います。

ASAYANは90年代後半にテレビ東京で放送されました。当時は、まだインターネットが定着しておらず、SNSもYouTubeもありません。流行の発信源はテレビと紙媒体に集約されていました。拡散ルートも基本的にはこの2つ。

テレビ放送→アーティスト誕生→CD発売→テレビ歌番組や雑誌でPR→バズる

テレビでファンの熱を作って、CDやコンサートでマネタイズする。改めて見るとめちゃくちゃシンプルです。しかし、今は複雑に入り組んだメディアジャングル。しっかり地図を見て、最高のルートを通らなければ迷走してしまいます。Google Mapでナビをして欲しいほどです。では、Nizi Projectはどんなルートが設計されていたのでしょうか?

図らずもコロナが追い風に…局内不安を払拭

『Nizi Project』という番組が世に最初に出たのはテレビではありません。月額1026円(税込)のサブスク型有料動画配信プラットフォーム『Hulu』です。すべての発火点である番組が有料なのは非常におもしろい取り組みです。

よく考えてみてください。これはオーディション番組ですよ? まだグループが結成されていないどころか、どんな候補生がいるかもわからない。百歩譲ってプロデューサーが秋元康さんやYOSHIKIさんのような、日本人なら誰でも知っていて実績十分の人ならわかります。しかし、Nizi ProjectのプロデューサーはJ.Y.Parkさん。韓国では実績十分、K-POP好きならカリスマ的存在なのかもしれませんが、日本国内の知名度は低い。つまり知らない人しか出ていない番組が有料という、かつては考えられない発火点なのです。

ちなみに、Huluは日本テレビの傘下にあるプラットフォーム。番組が始まった当初は日テレの社員から「こんな番組本当に当たるのか?」という声も聞こえてきました。AKBが失速し、アイドルビジネスに陰りが見えつつあるご時世でもあり、不安視するのも無理はありません。しかし、それを見事に吹き飛ばしたのが何重にも仕掛けられたメディア戦略です。

今年1月にHuluで番組がスタートすると、3月に番組をYouTubeで無料公開。つまり、時間差配信です。YouTubeで初めて無料のタッチポイントを作り、「もっと見たい!」「我慢できないからHuluに入ろう」と有料に送客したわけです。

これが成功した背景には、日本人のコンテンツ視聴習慣の変化もあります。ずばり『イッキ見欲求』。テレビ型の視聴習慣は、次回まで1週間待たなければなりませんでした。でも、NetflixやAmazonプライムで1話から最終話まで一気に見る喜びを知ってしまった。この心理がHuluへの加入を促し、熱を生んだと言えます。

また、もうひとつ見逃せないのが、コロナの自粛期間の効果。Nizi Projectのコアターゲットはティーンですが、本来お金が無くて有料動画には手が出ません。しかし、3月といえば、まさに外出自粛の真っ只中。有料動画プラットフォームに加入する大義名分があったし、親を巻き込むこともできた。そんなタイミングも重なって、Nizi Projectの熱は高まっていったと推測されます。

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