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菅義偉「おれの決意を示すためにやるんだ」 NHK課長を更迭した理由 『政治家の覚悟』より#2 - 菅 義偉

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「政治家は官僚に丸め込まれる」菅義偉首相が初当選以来、胸に刻んだ言葉とは から続く

 2020年9月、第99代内閣総理大臣・菅義偉が誕生した。新首相の菅氏が2012年3月に刊行した著書『政治家の覚悟 官僚を動かせ』は、菅氏の政治家としての”原点”を綴った著書である。その内容を再収録した『政治家の覚悟』より、NHKや日銀改革に大ナタをふるい、「伝家の宝刀」である人事権を効果的に用いたエピソードを、抜粋して紹介する。(全2回の2回目。前編を読む

[編集部注]
再収録にあたっては、いずれも原文をそのまま掲載した。社会状況や各種データ・数字、団体の名称、人物の肩書き、表記方法などは初出時のもの。ただし、誤字脱字などは改めた。年代は西暦で統一した。タイトル、文中の小見出しは編集部が適宜改めている。

◆ ◆ ◆

NHK改革への決意

 人事権は大臣(※菅氏は当時、総務大臣)に与えられた大きな権限です。どういう人物をどういう役職に就けるか。人事によって、大臣の考えや目指す方針が組織の内外にメッセージとして伝わります。効果的に使えば、組織を引き締めて一体感を高めることができます。とりわけ官僚は「人事」に敏感で、そこから大臣の意思を鋭く察知します。

©文藝春秋

 先に述べたNHK改革の際にも、私はこの改革に対する自らの決意を示すために人事権を行使しました。

 受信料の義務化と同時に示した受信料の2割値下げは、NHKの抵抗が大きく、自民党内にも放送行政に深くかかわってきた議員を中心にNHKを代弁するかのような根強い反対論がありました。

 総務省では、官僚と新聞社の論説委員が、法案の内容や政策の方針について意見交換する「論説懇」が開催されていました。その論説懇の席で、NHKを担当している課長が、

「大臣はそういうことをおっしゃっていますが、自民党内にはいろんな考え方の人もいますし、そう簡単ではない。どうなるかわかりません」

 などと言ったそうで、参加していた知人の論説委員から、

「菅さん、大丈夫?」

 と、心配する連絡が入りました。さっそく局長を呼んで調べたところ、懇談の議事録が残っていて、はっきりとその課長の発言が記載されていました。NHK改革が簡単か難しいかどうか訊かれてもいないのに、わざわざ自分から見解を述べた発言であることがわかりました。

NHK担当課長を更迭

 NHK改革には、自民党の議員のなかにも反対論者がいることは、もちろん把握していました。だからこそ、省内で意思統一を図って立ち向かわなくてはなりませんでした。課長の発言は官僚の域を超えており、見過ごすことができませんでした。課長職という現場のトップがそのような意識では、改革に向けた姿勢が疑われ、組織はまとまりません。

 私はすぐに動きました。

「論説委員の質問に答えるならいいが、質問もされていないのに一課長が勝手に発言するのは許せない。担当課長を代える」

 すると幹部は、

「任期の途中で交代させると、マスコミに書かれ、大問題になりますよ」

「構わない。おれの決意を示すためにやるんだ。本気でNHK改革をやる、ということを示すためだ」

「課長職はそのままにして、NHK改革の担当者を上司に替えることで了解してもらえないでしょうか」

「ダメだ」

「大騒ぎになり、結果的に大臣にご迷惑をおかけしてしまいますが……」

「いいから、代えるんだ」と押し切りました。

人事権の行使はまわりから支持が得られ、納得されるものでなくては

 彼らが懸念していたように、マスコミからたたかれました。ある雑誌などには、ナチスドイツでプロパガンダを一手に担った人物を引き合いに出して「安倍政権のゲッベルス」などと書きたてられました。

 改革を実行するためには、更迭も辞さない。困難な課題であるからこそ、私の強い決意を内外に示す必要がありました。マスコミはこの種の話題を面白おかしく書きたてますが、それを恐れては必要な改革は実行できません。

 結果として官僚の中に緊張感が生まれました。組織の意思が統一され、一丸となってNHK改革に取り組むことができたのです。

 その後、私が内閣改造で総務省を去るにあたって、更迭した課長は本省に戻しました。現在も要職で活躍していて、私の事務所にも訪れてくれます。

 人事権はむやみに行使するものではありませんし、感情に左右されてはなりません。更迭された当人は別にしても、まわりから支持が得られ、納得されるものでなくては、反発を招き、官僚の信頼を失うことになります。

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