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「政治家は官僚に丸め込まれる」菅義偉首相が初当選以来、胸に刻んだ言葉とは 『政治家の覚悟』より#1 - 菅 義偉

 2020年9月、第99代内閣総理大臣に指名された菅義偉氏。菅氏が2012年3月に刊行した『政治家の覚悟 官僚を動かせ』を再収録した『政治家の覚悟』(文春新書)が刊行された。菅首相の”原点”が記された著書より、一部を抜粋して紹介する。(全2回の1回目。後編を読む

[編集部注]
再収録にあたっては、いずれも原文をそのまま掲載した。社会状況や各種データ・数字、団体の名称、人物の肩書き、表記方法などは初出時のもの。ただし、誤字脱字などは改めた。年代は西暦で統一した。タイトル、文中の小見出しは編集部が適宜改めている。

◆ ◆ ◆

両面性を持つ官僚の習性

 政治家が政策の方向性を示し、官僚はそれに基づいて情報や具体的な処理案を提供して協力する。
 
 政治家と官僚、すなわち政と官は本来そういう関係にあるべきです。
 
 明治新政府が設立されて以降、官僚はそれぞれの組織のなかで情報を蓄積し、経験を重ねてきました。多くの先輩が積み重ねてきたものを踏襲する。悪いことではありませんが、それは前例主義となり変革を嫌う体質を形成することにもなります。貴重な情報を組織の中に貯めこんでしまう傾向も見られます。

 また、与えられた職務に忠実であることが求められ、所属する組織とその体制への忠誠心が非常に強く、他の省庁に対しての対抗意識があるため、なかなか横の連携を取ろうとはしません。結果として省庁間の縦割りの弊害が生じます。

©文藝春秋

 官僚は、まず法を根拠とし、これを盾に行動します。

 一般国民からみると、理屈っぽくスピード感に欠けるでしょう。たしかに法律上は正しいかもしれませんが、国民感情からはかけ離れているとの印象をもたれてもしかたありません。加えて、その体質として外聞を気にする傾向があります。端的に現われるのが、マスコミの自分たちに対する評価です。マスコミがどう扱うか、いつも気にしていて過敏な反応を示します。
 
 おそろしく保守的で融通のきかない官僚ですが、優秀で勉強家であり、海外の状況も含 めて組織に蓄積された膨大な情報に精通しています。

 官僚と十分な意思疎通をはかり、やる気を引き出し、組織の力を最大化して、国民の声を実現していくことが政治家に求められるのです。

責任は全て取るという強い意志

 政治家が官僚とあい対峙した時、政治家の能力が問われます。  

 初当選して以来、師事していた梶山静六先生(故人)は、「おれは官房長官の時に、バブル崩壊後の処理について、6850億円を投入した住専以外に不良債権はないかと官僚に聞いたら、この問題さえ解決してもらえれば他にありませんと答えた。それが、後から後から不良債権が100兆円も出てきた。信用したのが失敗だった。あのときに解決していればなあ」

 と、自嘲気味によく話されていました。

「官僚は説明の天才であるから、政治家はすぐに丸め込まれる。お前には、おれが学者、 経済人、マスコミを紹介してやる。その人たちの意見を聞いた上で、官僚の説明を聞き、自分で判断できるようにしろ」

 と、常々言っておられたものです。

 私はこの言葉を胸に刻み、判断力を身につけるよう心掛けてきました。

 政治家の身分は選挙によって国民から委ねられていますが、官僚は身分を保障されています。政治家は政策決定に際して、官僚から過去の経緯や蓄積された知見、現状について説明を受けます。そのときに気をつけなければならないのは、自身の信念と国民の声をいかに反映させるかということです。

 官僚はしばしば説明の中に自分たちの希望を忍び込ませるため、政治家は政策の方向性が正しいかどうかを見抜く力が必要です。

 官僚は本能的に政治家を注意深く観察し、信頼できるかどうか観ています。政治家が自ら指示したことについて責任回避するようでは、官僚はやる気を失くし、機能しなくなります。
 
 責任は政治家が全て負うという姿勢を強く示すことが重要なのです。それによって官僚からの信頼を得て、仕事を前に進めることができるのです。
 

(菅 義偉/文春新書)

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