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責任範囲ふたたび

というわけで「SYNODOS×BLOGOS 若者のための『現代社会入門』」でインタビューを受けたものが公開されました。前編「議会民主主義の制度は、「人民の考えはけっこう間違う」という前提で設計されている」と後編「誰にでもできるような方法でしか発信しない人の意見は、政策に反映されない」。以下は当該インタビューに対する反応に関する若干のフォロー。

「◯◯について語っていない」という類のご不満が散見されたが、うんそのクレジットされている通り「何を聞いて何を聞かないか」を決めたのはBLOGOSの編集部なので私に文句言われてもなあ。聞かれたことに答えただけですよ。「これこそが俺の聞きたかったことなのだ」という熱い思いのある方は、機会を作って私にお金払って聞くといいです。これはまあ自己評価ですが私個人を知る人に聞いても肯定してくれるのではないかと思うところ、私はとにかく知識の出し惜しみとかもったいぶりとかしないタイプの人間であり(そうじゃなきゃブログとか書いてねえよなと自分でも思った)、むしろ3質問したら歴史的因縁から周辺状況から含めて10とか15とか喋ってしまうので、あまり損はしねえのではないかと思う。

ただ私は自分が正しいと思うことしか喋らないので、自分が望むような回答を得たいときに質問する相手としては向いていない点に注意してもらう必要はあるだろう。木に登って魚を取ろうと思うんですがどうしたらいいですかねがんばりますよとか言われてにっこり「がんばってくださいね」と言える人とかむしろなぜ取れないのか貴様の努力と信仰が足らんのだと煽れる人とかも世間にはいるのだと思いますが、私は「無理ですから湖か海に行きなさい」としか言えないし、言わない。少なくとも研究者としてそうあるべきだと思っているからという理由もあるが、なんかトラブルについて話されたので「解決策はAかBしかなく、それぞれにこのようなメリット・デメリットがあるのであとはどのような要素を重視するかに応じて君自身が決めるしかない」とか答えて同期の女性にえらいこと怒られた十数年前の過去を思い起こすにそれ以外の機能が付いていないのではないかという疑惑の深まるところである。

* * *

ともあれ、そこで質問をしてきたBLOGOS編集部の意図について忖度するに、それは「若者のための『現代社会入門』」というシリーズ名に十分示されているのではないかなあ。つまり社会のことや政治に関心があり、ニュースなどを見ていろいろと考えるところはあるが、十分な前提知識・基礎知識を持っていない人に対してそれを提供するというあたり。従って私も、基本的にはisの話、「現在このようである」という説明を中心にしている。

だからまあoughtの話、「今後どうすべきか」を期待した方々には食い足りない点があるのかもしれないが、第一にそれは想定読者層の違いということではあろうし、第二にisがわかってないのにoughtの話をしても仕方がないのでまずこのレベルで見落としがないかチェックしておこうよということでもある。事実を踏まえないで改善提案しても無意味だと思うのだけど、こと政治に関しては「わかったつもり」の人が多いわけですよ。「アメリカに比べて日本は議員立法が少ない」厨とかね。そりゃアメリカには内閣提出法案が存在しないもんなと、そういうレベルの話。

それで現状としてはとにかく政策形成・法案形成の軸として動いているのは霞ヶ関であるという話が前編で、じゃあそこに自分たちの意見をインプットするには現状どのような手段があるかという話をしたのが後編。このシステムがそもそもけしからんというご意見については理解できるのでじゃあどう変革すればいいかという話を各自考えていただければいいと思うところ、軸は霞ヶ関のままでいいが「ふつうの国民」からの直接的なインプットを拡大しましょうという案もあるだろうし(本来はそのために作られたのがパブリックコメントなのだが述べた通り利益集団の意見が「ふつうの国民の声」の顔をしてそこに入ってきてしまう(そして数はそっちのほうが多くなる)という問題を排除できていない)、インプットでいくらがんばっても結局決めるのが官僚ということになっては信用できないので、そこを複数化・外部化する方法はないだろうかという話をしてもいい。

で、アメリカの場合だと典型的にはシンクタンクのたぐいがその機能を果たしてきたし、より一般的には政党がやるはずのことなんだよね、これ。各政党が独自に政策・法律スタッフを抱えるとか、その一部を独立のシンクタンク(とはいえ一定の政治的スタンスが付いていることが普通)にアウトソースする体制を整えれば、霞ヶ関依存・官僚依存から脱却することも可能だろう。だけどそれ、本来は「政治主導」がどうとか言い出した時点でやっておかなきゃいけなかったことだと思うんだけど

もう一つ言うと、それがものすごくおカネのいるシステムだということをみんなちゃんと理解してるんだろうか、というのも問題。つまり現状は霞ヶ関という政策形成システムが一個あって、与野党ともそれを利用しているところがある。これを党派ごとに整備すると同じものが二個とか三個とか必要になるわけで、人の数も人件費も相応に必要になってくる。もちろん単純に二倍三倍ではないだろうけど、少なくとも増える。逆に言うと従来のシステムというのはやはり戦後復興期の・社会的に余裕がないなかでとにかく一つだけでもきちんと作っておこうという発想で整備されたものではあるだろう。帝国大学と同じですな。

もちろん、達成目標が社会的にわりと共有されていたキャッチアップの時代ではもはやないので、少なくとも二通りくらい政策パッケージを作って国民が選べるようにしてほしいという要求はあるだろうし、私もそう思う。しかし繰り返すとそのためには二つ目のパッケージを作る人員と費用が追加で必要になる。カネは出さないがメニューの種類は倍にしてくれとか要求したら全部粗悪品になるよねえ。だからこの方向性を目指したいという人には、人とカネの確保方法についてもきちんと提言してほしいと、そう思うわけである。

* * *

なお「人民は間違うとしても、官僚制も間違うんじゃないのか」という話と「これだと結局民主政はいらんのではないか」という話についてはまあ確かにこれだけ読むとそういう疑問を持つかもねえと思ったところ、ちょうど執筆する機会があったので別稿「民主政と銀の弾丸」に書きました。詳細はいつものように実際に出たところで。

しかしその、今週末はさらに一本選挙制度関係の原稿を書かなくてはならず私の専門は何なんだと小一時間。

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