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騙されないための個人向け債券の基礎知識

 先日の日経新聞によると、東京都新宿区の82歳の男性医師が架空の社債購入を持ちかけられ、現金9360万円をだまし取られていたそうである。2011年4月に男性宅に「株式会社アドバンスエレメント」という架空会社の社債販売の案内パンフレットが届き、その後、関連会社の社員を名乗る男から「その社債は新宿区の個人しか買えない。1千万円で購入すれば1500万円で買い取る人がいる」と持ちかけられたそうである。また、以前には東京都江戸川区の17歳の男子高校生が、架空の社債購入を持ち掛けるなどして2千万円をだまし取るという詐欺事件も発生したが、こにきて未公開株などとともに個人向けの社債を巡る詐欺事件が結構発生している。

 ふたつの事件とも騙されたのは高齢者であり、オレオレ詐欺の社債版のようなものではあるが、特に後者の事件は高校生が犯人であったのに驚かされた。高校生が「社債」という存在そのものを知っていたのかと関心してしまったが、もちろん関心している場合ではない。

 私も一度、「病院債」を買わないかとの電話セールスを受けたことがある。さすがにすぐに危ないと思い電話を切ってしまったが、勉強のため(?)話ぐらい聞いておけば良かったとあとから反省した。このような文章を書くにも良い事例となったはず。この件についてはそういうわけで、具体的な詐欺の方法はわからないが、これは国民生活センターのサイトによると、勧誘時に「医療機関債」のほか「病院債」、「医療債」、「病院への投資」などという言葉が用いられている詐欺のようである。「医療機関債は国債と同じで、元本割れすることのない安全な商品である」「人工透析ができる医療機関にお金を出せば、高い利息が付く」などと、預貯金や国債と同じであるといった、事実と異なる説明や、高利率であることだけを強調するなどの問題勧誘が見受けられるそうである(国民生活センター、http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20110825_1.html)。

 このような詐欺被害を未然に防ぐには、少なくとも勝手に送られたパンフレットや、見ず知らずの人からの電話セールスについては詐欺であると思っていた方が良い。

 たしかに一般の人が債券を購入するというのは、それほどポピュラーではない。個人向け国債あたりであれば、テレビなどでも宣伝しており、それなりに認知度が高いかもしれないが、それでも購入経験のある人はそれほど多くはないと思われる。このため今回はこのような詐欺に遭わないためにも、債券について基礎的なものを知ってもらおうと、まとめてみた。

 債券は株式などと同様の有価証券である。株と違うところは、満期がありその間、半年ごとに利子が支払われ、額面金額が償還時に戻ってくるというものである。有価証券なので途中で売却もできるが、それには買い手が必要になる。また預貯金と違うところは、お金を銀行に貸すというか預けるのではなく、証券を買うことで買い付けの価格があり、購入金額と償還金額はかならずしも一致しない。利子については比較的預貯金よりも高めに設定されている。

 債券の中で最も多く発行されているのが国債である。国債には個人向けの国債があり、そのうち個人向け国債(復興国債)は財務省が一定期間過ぎれば買い取ってくれるため流動性リスクや価格変動リスクがない。3年固定、5年固定、10年変動の3タイプある。また、個人向けには新窓販国債という国債もあるが、こちらは利率は個人向け国債よりも高いが、途中売却の際には金融機関を通じ市場で売却し換金するため、価格変動リスクがある点に注意が必要となる。

 地方公共団体が当該地域に居住している個人や営業拠点等がある法人などを対象に発行する債券が、個人向け地方債で、正式には住民参加型市場公募地方債であるが、ミニ公募地方債とも呼ばれている。こちらは国債より比較的利子も高いことや地域貢献も意識されてか人気が高い。ミニ公募地方債については総務省や自治体のサイトを参照してほしい。ただし、地域貢献などと称するミニ公募地方債らしき詐欺まがいの債券もあるため要注意。私も電話勧誘で勧められた病院債(医療機関債)も電話ではそのそのようなうたい文句であった。

 個人向け社債については、とにかく自分が知っている会社の債券であることがまず重要。見ず知らずの会社の社債投資は避けるべきか。もちろん格付け等を確認することも大事だが、国債と同様に安全などとアピールされていたとすればちょっと疑った方が良い。国債並に安全な社債は余程名のしれた大手企業が発行するようなものに限られる。また名の知れた大手企業だから絶対安全というわけでもないところにも注意は必要か。

 社債の中でも銀行の発行する個人向け劣後債については、どちらかといえば富裕層向けのものであり、しっかり証券会社などで説明を聞くことをお勧めする。もちろん他の個人向け債券もしっかりした証券会社で購入するものであれば、詐欺まがいのものはないはずである。劣後債については今回説明は省略する。

 個人向け外貨建て債券、たとえばブラジル、トルコ、ロシア、オーストラリアの通貨建ての債券については、高利回りで発行体が国際機関などなので格付けが高く人気となっているものもある。発行体の高格付けが必要条件だが、たぶんこれは満たされているはず。そして利率についても単純に日本の債券より高いからと納得するのではなく、現地の利率などもチェックして比較も必要となる。高利回りはそれだけリスクが高いとみておくことも大事である。そして問題は為替リスクであり、その通貨の動向をほとんどチェックできないような人は手を出すべきでない。まして円安・円高とは何か、そもそも為替は何で動くのかを理解してから望むべきである。私も90歳近い叔父に円高とは何だと聞かれたことがある。どうやら海外通貨建て商品に手を出してしまったようだが、知識なしにお金を投じるべきではない。高利率に惑わされず、その対象通貨が、今後余程のことがない限り下落はないとの自信があるのであれば、購入すべきものである。

 個人向けの仕組み債については、一般の社債に比べ、高格付け・高利回りであることが多く、大変魅力的に見える。この仕組み債は何かしらの条件付きで利子が高めに設定されているものである。しかし、極端に有利な金融商品というものはない。仕組み債がなぜ高格付け・高利回りを達成できるかというと、仕組み債に組み込まれたデリバティブにある。そのリスクを完全に理解することは個人には難しい上に、大きな損失を被る危険性があり、それを理解した上であるならば良いが、良くわからなければ手を出すべきではない。

 そしてこれは個人向け国債以外の個人向けの債券に言えることだが、途中売却には注意すべきである。債券なので途中売却は可能だが、売却した時の市場環境次第では買った値段よりも低い値段でしか売れないということも多々ある。販売した証券会社等で買い取ってくれるが、流動性のない小口の債券であるため証券会社の買い取る価格は低くなり、そこには手数料相当分も含まれる。個人向け債券は満期まで持つことが大前提となる。

 また、個人向けの債券はいつでも買えるわけではない。人気のある社債は一瞬で売切れてしまうこともあり、日ごろから情報を仕入れておくことが重要となる。個人向け国債については財務省のサイトで、ミニ公募地方債については総務省や自治体のサイトを参照。個人向け社債や外貨建て債券は各証券会社のサイトや窓口で確認する必要がある。

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