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「政治主導」など片腹痛い〜官僚達のシナリオに結果的に盲従隷属する政治家達

 そもそものスクープは週刊ポスト8月10日号におけるフリーランスの福場ひとみ記者の以下の記事からでした。

復興予算15兆円のうち約6兆円が使われず1兆円を役人ネコババ

※週刊ポスト2012年8月10日号

http://www.news-postseven.com/archives/20120730_133714.html


 スクープのきっかけは、もともと4月ごろから復興予算の問題を追いかけていてネット上でグーグルで「復興」「予算」とか検索しているうちに「各目明細書」というのがヒット、中身を精査したら驚くことに予算支出がどれもこれも復興とは関係ないように見えたのだそうです。

 当該の「各目明細書」は現在もネットで見ることができます。

「東日本大震災復興特別会計歳出暫定予算予定額各目明細書」

http://www.shugiin.go.jp/itdb_annai.nsf/html/statics/osirase/kaikei-kakumoku-toku.pdf/$File/kaikei-kakumoku-toku.pdf


 ポスト記事によれば、まず第一の問題点は復興庁に厳しい条件により被災地に満足に予算配分が成されていないことです。

「被災地の自治体は壊滅状態だから税収もない。そこで復興に自由に使えるという触れ込みの復興交付金が創設されたが、使途が40事業に限定され、土地のかさ上げすらできない。気仙沼では水産庁の復興事業で漁港周辺の地盤を高くしたが、そこに以前あった商店を建てるのはダメだといわれた。これでは町の復興には使えません」

 その結果、昨年度の復興予算約15兆円のうち、4割に相当する約6兆円が使われずに余った。自治体への復興交付金も8割以上が残り、前述の被災者向け復興住宅の整備予算に至っては1116億円のうちわずか4億円しか使われていない。総額19兆円を注ぎ込む復興は、絵に描いた餅だった。


 そして第二の問題点は総額一兆円もの規模で「シロアリ官僚たち」による「流用」が発生したことです。

 シロアリ官僚たちがまず目をつけたのが、官僚利権の王道である「ハコ物建設」だった。 復興特会には「全国防災対策費」という名目がある。「東日本大震災を教訓として、全国的に緊急に実施する必要性が高く、即効性のある防災、減災等のための施策」に該当すれば、被災地でなくても復興予算が受けられる仕組みだ。役人たちは狡猾にこれを利用した。

 国交省は、復興特会から36億円を使って政府の官庁舎を改修する計画を立てた。そのうち12億円は、内閣府が入る霞が関の合同庁舎4号館の大規模改修に使われる。


 結果、被災地とは関係のない秋田合同庁舎、和歌山県の田辺合同庁舎の修理が行われ、肝心の例えば被災した石巻市役所は予算がなく手付かず、という矛盾が起こっています。

「昭和47年に建てられた施設で耐震不足なので、免震構造に変えます。他に秋田合同庁舎、和歌山県の田辺合同庁舎の修理、他に名古屋や釧路など全国の港湾合同庁舎の津波対策に使います」(官庁営繕部管理課・予算担当企画専門官)

 一見、もっともな理屈だが、騙されてはいけない。国の施設の建て替えが進む一方で、肝心の被災地の整備には、予算が付いていないのである。石巻市役所は1階部分が水没し、5・6階の吊天井が壊れるなどの被害が出たが、「市庁舎改修工事」の費用はわずか2900万円。


 各省庁の「流用」は目を覆うばかりです、財務省の外局、国税庁では東京の荒川税務署などの改修工事に5億円を計上しますが、被災した大船渡税務署はプレハブの仮事務所のまま放置です。

 その財務省の外局、国税庁のやり口も酷い。東京の荒川税務署など、被災地以外の税務署3施設の改修工事に5億円を計上。荒川が選ばれた理由は、「今回の地震でどこか崩れたとか、老朽化が著しいというわけではなく、耐震化工事に着手しやすい税務署だということ」(国税庁会計課)だそうで、ここでも被災地が後回しにされた。被災した大船渡税務署職員の嘆きを聞こう。

「税務署の建物は津波で浸水したため、現在は法務庁舎の敷地に仮事務所を設けています。プレハブ造りの簡素なものなので、空調の効きが悪く、場所もかつてに比べ手狭ですが、もとあった建物が整備されてから移転となるので、移転はしばらく先になりそうです」


 ・・・

 なぜこのようなことが起こってしまったのか、本件で国会では野党が民主党政権を厳しく追求する構えを見せていますが復興基本法は「議員立法」、すなわち民主党だけではなく自民党・公明党3党によって立法されたわけです。

 民主党政権に第一義的に責任があることは明らかですが、ことは国会における予算のチェック機能がまったく働いていないと言う点では、野党も大きな顔をできないでしょう。

 本質的な問題のひとつは初めに復興増税で19兆という予算が確保でき、その予算を埋めるために財務省が各省に予算付けをうながし、各省が本来通常予算に編成するべき性質の予算を次々に計上、財務省黙認のもとでは、情けないことにこの国の政治家達にはつまり国会にはまったく予算検証能力がなかったという事実です。

 「政治主導」とは何かといった議論が盛んですが、現実にこの国の政治家と官僚たちの関係を、今この瞬間起こっていることをまず我々国民は直視しなければなりません。

 復興予算ひとつ取り上げてみても、官僚達の都合の良いシナリオに、この国の政治家達は結果的に盲従隷属しているのです。

 この国では「増税」すなわち「予算のバラマキ」というモラルハザードが成立していることを、今回の「流用」はまさに証明しているのだといえましょう。

 自分達で国民の血税を長期に渡り増税し19兆の復興予算を確保する法律を「立法」した立法府が、与野党まとめてその大切な予算のチェックすら官僚の協力がないとまともにできないのです。

 「政治主導」など片腹痛いのです。

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