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復興予算

 復興予算の「流用」ということについて、とても焦点が当たっています。私はちょっと抜け落ちている視点があるのではないかと思います。特定の政党を批判することなく、できるだけフラットな指摘をしていきたいと思います。

 まず、復興基本法は「議員立法」です。最初に閣法で提出したものを、国会で議論する中で、修正協議を行った上で議員側が引き取って、議員立法として再提出したものが可決されています。この議員立法は、与野党が合意してできたものです。したがって、この法律そのものの建てつけについて、政府に対して「これはおかしい」というのはそもそもの批判として間違っています。

 閣法では復興予算は被災地限定ということで提出されたものが、与野党協議の中で被災地に限定しない方向で修正されています。この修正は、野党側からの要望によってなされたことは既に明らかになっています。ただし、これは与野党合意して議員立法で提出したものですので、どの政党が悪いとか、悪くないとか言うものではなく、共同提出したすべての政党が責任を持つべきものです。野党の方にも、被災地に限定しないという提案をして通ったという事実とその帰結についてはきちんと責任感を持っていただく必要があります(しつこいですが、野党叩きをしているわけではありません。)。

 そして、その法律に基づいて復興予算を査定したのは政府です。予算要求を各省が行い、それを財務省が査定して、それを政府全体として通して行ったわけですから、そこの責任は政府にあります。私が不思議なのは、その予算要求をした当時の政務三役はどういう意図でやったのかをきちんと説明する必要があります。いつも、私は思うのですが、役所が何か変なことをやっている時に簡単に役所叩きをする前に、その時の政務三役にきちんと弁明の機会を与えるべきです。「知らなかった」と言うのか、「○○の理由により正当化されるべきもの」と言うのかは分かりませんが、ともかく政治主導と言うのであれば、そのアカウンタビリティーはその当時の政務三役に求めるべきです。ここは日本のマスコミ文化の中に欠けている部分だと思います。お手軽な役所陰謀論をやっておけば、それで事足りると思っているのであれば、それはとても不健全です。

 更には、私が今回の様々な議論を聞く中で最も違和感を持ったのは「何故、こういうことが起こったのか」ということに対する根源的な議論がないことです。事業仕分け的な手法で個別の事業を見て行くことの意義は否定しませんが、それはいわば「後始末」の部分であって、最優先課題は今後に繋げるために原因を見極めることです。

 上記のとおり、今回の復興予算の「流用」の問題点は「被災地に限定しないとの修正をしたこと」と「それに乗じた要望がなされ、また、査定が通ってしまった」ことの2点なんですが、そういう動機が働いた理由として最も大きなものとしては「財源が確保された特別会計で管理している」ということがあると思います。

 今、一般会計での予算要求はとても厳しく査定されます。国債分を除くと71兆円で歳出が切られている一方、来年度の概算要求は、財政フレームで設定された額を2.4兆円オーバーした要望が出てきているそうです。つまり、来年度予算は要望額から2.4兆円査定で切り込まないといけないということで、切り込む財務省も、切り込まれる各省庁もとても難儀しています。また、財源確保でも苦労していることは、社会保障と税の一体改革での議論を見れば明らかです。

 逆に復興特別会計は、既にどの税金の税率をどの程度上げるということが確保されています。そうすると、役所の力学としては次のようになるわけです。まず、要望する各省庁はキツキツの一般会計予算で要望するよりも、折角、被災地以外のところにも使える法律になっているのなら、少々こじつけてでもこの復興特会で要望した方が通りやすいという見立てになったはずです。よく「流用」と言われると、「ムダ」と混同されがちですが、今回、問題とされているものは復興特会でなければ、補正又は来年度一般会計予算で要求していたものでして、いわゆる「ムダ」とは一旦切り離す必要があります。

 逆に査定する財務省からすると、復興特会は財源が固まっており、厳しく切り込むインセンティブが一般会計よりも低かったでしょう。財務省というのは一般会計予算からの支出はとても厳しく見ますが、こういう特定の財源が確保されている特別会計になると、少しアテンションが下がります。査定しても、どうせ出て行くお金の額は決まっているし、その財源も確保されているわけですから。

 この「財源が確保された特別会計で管理している」ことに伴う、役所の思惑、モラルハザードを解決しない限り、個別の事業をあれこれしても、また同種の事態には同種の事が起きるわけです。図らずも、塩川元財務大臣が言った「母屋(一般会計予算)でおかゆ、はなれ(特別会計)ですき焼き」がここで実現したということなのかもしれません。

 個別事業をあげつらって叩くフェーズはそろそろ終わりにして、もう少し深い議論が行われるようにしていかなくてはなりません。与党も、野党も。

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