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  • 2020年10月16日 16:25 (配信日時 10月16日 12:42)

トランプは本当に逆転できるのか? - 海野素央 (明治大学教授 心理学博士)

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今回のテーマは、「トランプは本当に逆転できるのか?」です。投票日まで残り20日になり、ドナルド・トランプ米大統領は重大な局面に直面しています。不利な選挙状況の中で、果たしてトランプ大統領の逆転はあるのでしょうか。

本稿ではトランプ氏の誤算について述べたうえで、鍵を握る2つの激戦州フロリダとペンシルべニアに焦点を当てます。

トランプの「5つの誤算」

終盤戦を迎えたトランプ大統領には、少なくとも5つの誤算がありました。第1の誤算は、10月15日の大統領候補のテレビ討論会が中止になったことです。

テレビ討論会を主催する委員会がリモートによる討論会での開催を発表すると、トランプ大統領は即座に「時間の無駄だ」と述べて拒否しました。トランプ氏は駆け引きに出たのです。

おそらく「リモート討論会」欠席の意志表示をしておき、15日の直前に「陰性のカード」を切って、バイデン氏を討論会に引きづり出そうという狙いがあったのでしょう。この狙いは、委員会が先に中止を発表したので、見事に外れました。

そこで、トランプ陣営のビル・ステピエン選対本部長は10月29日に第3回目のテレビ討論会の開催を提案したのです。支持率でリードしているバイデン陣営はその提案を決して呑まないでしょう。

「カンター・オクトーバー・サプラウズ」の不発

第2の誤算は、ウィリアム・バー米司法長官が16年大統領選挙におけるオバマ前政権のトランプ陣営に対するスパイ活動に関する報告書を、11月3日の投票日の前に出さないと述べたことです。

新型コロナに感染して自分に不利なオクトーバー・サプライズを自ら作ってしまったトランプ大統領には、それに対抗するために、この報告書を自分に有利な「カウンター・オクトーバー・サプライズ」に変える思惑があったことは確かです。

前回の米大統領選挙でジェームズ・コミー前米連邦捜査局(FBI)長官は、投票日の11日前にヒラリー・クリントン元国務長官に関するメール問題の捜査再開を発表しました。その発表が、クリントン氏に不利なオクトーバー・サプライズとなり、どちらの候補に投票するのか決めかねていた13%の有権者の票を動かしたといわれています。もちろん、トランプ氏に有利に働いた訳です。

その結果、コミー氏は党派色の強い政治的意思決定を下したと、非難を浴びました。仮にバー長官が投票日直前にオバマ前政権のトランプ陣営へのスパイ活動に関する報告を出せば、トランプ氏に有利なオクトーバー・サプライズになる可能性が高まります。バー氏はコミー氏と同じ轍を踏みたくなかったのでしょう。

トランプ大統領はバイデン前副大統領を「犯罪者だ」と呼び、バー氏の決定を「恥となるもの」として激しく批判しました。トランプ氏の「カウンター・オクトーバー・サプライズ」が不発に終わったからです。

ペンスは「マンスプレイナー」

第3の誤算は、大統領選挙でバイデン氏と競っている郊外の女性票を減らしたことです。

10月7日に行われた副大統領候補のテレビ討論会で、共和党副大統領候補のマイク・ペンス副大統領は民主党副大統領候補のカマラ・ハリス上院議員(西部カリフォルニア州)に対して、討論会のルールを犯し攻撃を加えました。支持率でバイデン陣営にリードされているからです。

ただ、その作戦は完全に裏目に出ました。ぺンス氏の態度が、女性有権者から「マンスプレイナー(mansplainer)」として見られてしまったからです。

マンスプレイナーは、「女性は自分よりも物事を知らない」「女性は自分よりも理解していない」という態度をとる男性を指します。「マンスプレイニング(mansplaining)」は、マン(man:男性)とエクスプレイン(explain:説明する)の造語です。

ペンス氏は女性に対して傲慢な態度をとる白人男性として、女性有権者に映ったのです。実際、テレビ討論会直後に行われた米CNNの世論調査では、69%の女性有権者がハリス上院議員、30%がペンス副大統領を勝者に挙げました。ハリス氏が約40ポイントもリードしました。

米ABCニュースとワシントン・ポスト紙による共同世論調査(20年10月6~9日実施)では、男性の支持率はトランプ・バイデン両氏ともに48%です。ところが女性をみると、59%がバイデン氏、36%がトランプ氏を支持すると回答しました。バイデン氏がトランプ氏を23ポイントも上回っています。

18年米中間選挙で民主党下院は郊外の女性票を獲得し、多数派に返り咲きました。仮に激戦州で郊外の女性票を逃がすと、トランプ氏はかなり苦戦を強いられるでしょう。

選対本部長と共和党委員長のコロナ感染

第4に、ステピエン選対本部長とロナ・マクダニエル共和党全国委員会委員長が新型コロナウイルスに感染したことです。

16年米大統領選挙でトランプ氏の娘婿ジャエッド・クシュナー氏はステピエン氏を雇いました。ステピエン氏はデータに基づいた戸別訪問を柱とする地上戦を得意としています。

一方、マクダニエル委員長は前回の大統領選挙でトランプ氏のクリントン元国務長官に対するノックアウトパンチとなった中西部ミシガン州での勝利の立役者です。ミット・ロムニー上院議員(共和党・西部ユタ州)の姪であるマクダニエル氏は、トランプ陣営のミシガン州の責任者でした。その後、マクダニエル氏はその功績が評価され昇格し、共和党全国委員会委員長の座を仕留めました。

ステピエン・マクダニエル両氏の新型コロナウイルス感染はトランプ陣営にとってマイナス要因であったことは間違いありません。選挙戦略に優れた2人のコロナ感染で、トランプ陣営は実働部隊が以前ほど機能していなかった可能性があります。マクダニエル氏は回復し、10月15日に南部ノースカロライナ州で開催されたトランプ集会に参加しました。

テレビ討論会アドバイザーのコロナ感染

第5に、トランプ氏のテレビ討論会のアドバイザーであるケーリアン・コンウェイ前大統領上級顧問と、クリス・クリスティ前ニュージャージー州知事が新型コロナウイルスに感染したことです。クリスティ氏は退院しました。

クリスティ・コンウェイ両氏は1回目の討論会後、トランプ氏にスタイルを変えるように助言しました。バイデン氏が意見を述べている際中に「割り込み」をせずに、語らせる時間を充分与えれば、同氏はつまったり、混乱するというのです。そうなれば、バイデン氏の認知機能の衰えを有権者に見せつけることができるという大きなメリットが生じるからです。

ただ、傾聴はトランプ氏のスタイルではありません。従って、スタイルの変更は困難でしょう。

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