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韓国の非熟練外国人労働者の受け入れにみる日本の政策へのインプリケーション / 春木育美 / 社会学・現代韓国政治研究

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はじめに

2019年4月、日本政府は改正出入国管理法を施行し、外国人労働者政策を大きく方針転換した。これまで原則認めていなかった非熟練労働者(単純労働者)を正式に受け入れるという、重要な政策転換だ。

新たな在留資格「特定技能」を創設し、一定の技能と日本語能力のある外国人(特定技能労働者)に、日本での就労を認めた。

特定技能は、最長5年間の期限付きで家族帯同を許されない1号と、在留期間の延長が無制限で家族の帯同ができる2号に分かれる。特定技能の資格を取得する要件として、「日本語能力試験」と「技能評価試験」の両方にパスすることを課した。

また、特定技能制度の開始にともない、外国人との共生社会実現に向けて「外国人材の受け入れ・共生のための総合的対応策」をまとめた。

その大きな柱となるのが、全国100カ所の相談窓口「多文化共生総合相談ワンストップセンター」の設置や行政サービスの多言語化、在留外国人への日本語教育の充実と教育体制の整備である。

さらに2019年6月、日本で暮らす外国人への日本語教育を促進する「日本語教育推進法」を制定した。

同法は、日本語教育を充実させるため、国は法制の整備や財政措置を講じなければならないと規定している。国や自治体は日本語教育を進める責務が、企業は雇用する外国人に教育機会を提供するよう努める責務があると明記した。

日本が最近になって、こうした制度的枠組みの整備に乗り出したのに対し、韓国は類似の取り組みを2000年代中盤から、多額の予算を計上し矢継ぎ早に推進してきた。

韓国政府は 2004年に「雇用許可制(EPS:Employment Permit System)」を導入し、非熟練外国人労働者を正式に受け入れるルートを整備した。また、ビザ取得の要件として「韓国語能力試験(EPS-TOPIK)」の合格を課してきた。

また、2007年に公布した「在韓外国人処遇基本法」に基づき、外国人労働者の相談窓口となる「ワンストップセンター」を全国に設置した。併せて、入国後の外国人居住者への韓国語教育や、社会統合政策も体系的に構築してきた。

このように韓国では16年前から非熟練外国人労働者を正式に受け入れ、支援体制を形成してきた。こうした韓国の経験は、日本が今後、外国人労働者政策を推進する上で、どのような点で参考になるだろうか。

本稿では、まず韓国が非熟練外国人労働者を受け入れるシステムとして導入した雇用許可制度について説明する。次に、外国人労働者向けの総合相談ワンストップセンターの運用、および外国人労働者への韓国語教育の2点について韓国の取り組みを検証し、日本へのインプリケーションは何かを検討する。

1.雇用許可制とは何か

韓国が導入した雇用許可制には「一般雇用許可制(非専門就業ビザ)」と「特例雇用許可制(訪問就業ビザ)」の二種類がある。

後者の特例雇用許可制は、中国朝鮮族や旧ソ連地域出身の高麗人など、韓国系外国人だけを対象にした特例制度である。表1にある「在外同胞ビザ(F-4)」も同様に、韓国系外国人が対象のビザである。

本稿では紙幅の都合により、非熟練外国人労働者を対象に「非専門就業(E-9)」ビザを発行する一般雇用許可制のみ取り上げる。

一般雇用許可制は、韓国政府が送り出し国の政府と覚書(MOU)を結び、年ごとに受け入れ人数を決定し、労働者の募集や選抜、研修、韓国企業への割り当て、帰国まで一元的に管理する仕組みである。中間業者を排除し、受け入れ過程に政府が直接関与することで透明性を確保している。

受け入れ対象となるのは、製造業、建設業、農畜産業、サービス業、漁業の5業種である。2019年時点で、16カ国の送出国との間で覚書を交わしており、就業者の国別人数をみると、ベトナム、カンボジア、ネパール、インドネシアの順に多く、この4ヵ国でほぼ5割を占める。

希望職種に関係なく求職者には一律に、韓国政府公認の資格審査である「韓国語能力試験」で合格することを課している。

試験は自国で受験し、200点満点中80点以上を得点すれば合格となる。つまり、入国前に基本的な韓国語能力を自力で習得することを求めている。

試験は、読解問題とリスニングから成り、基礎的な意思疎通能力、作業現場で必要な語彙力、韓国社会や産業安全に関する理解力などを測定する。試験問題は、韓国教育省所管の国立国際教育院の専門家が作成する。

雇用労働省は韓国語試験の学習教材として「EPS-TOPIKのための韓国語標準教材」を各国に配布している。教材は、韓国産業人力公団のHPから無料でダウンロードできる。

ただ、語学試験に合格してもすぐに入国できるわけではない。韓国人の就労機会を奪うことがないよう、毎年、政府が国内の雇用情勢や業界ごとの労働力需給を把握し、導入する業種、受け入れ人数の上限や送出国を決定している。

外国人労働者の雇用を希望する国内企業は、韓国人優先雇用の原則にしたがい、一定期間、韓国人労働者の求人を行う。韓国人の応募がなかった中小企業に限り、外国人労働者が紹介される。

採用が決まると、企業は送出国にいる外国人と雇用契約を結ぶ。母国と韓国で研修を受けた後、受け入れ企業に派遣される。外国人労働者が負担するのは、渡航費とビザの手数料などの実費のみである。

雇用許可制で受け入れる期間は基本的に3年だが、一定の条件を満たせば、最長で9年8ヵ月働ける。それ以上の滞在は、定住化が進むとして認めていない。

この点で、韓国の外国人労働者政策とは、一部の例外を除き、移民の受け入れを目的としているのではなく「循環型政策(ローテーション・システム)」にすぎないことがわかる。

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