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中曽根元首相への弔意要請、大学が拒否すればどうなる?

今月17日に実施される故中曽根康弘元首相の内閣・自民党合同葬に合わせて、文部科学省が全国の国立大学などに弔意表明を求める通知を出していたことが新たな反発を呼んでいる。これに対して、加藤官房長官は「要望したもので、弔意表明を行うかどうかは関係機関で自主的に判断されることになる」と述べて、強制ではないとの認識を示した。

そもそも、教育基本法14条は特定政党を支持する等の政治教育を禁止している。中曽根元首相の葬儀が問題になるのは、単に内閣だけではなく自民党という特定の政党が一緒に主催する葬儀であるという点においてである。このことは明らかに政治的中立性を侵害しているが、2000年の小渕恵三元首相、04年の鈴木善幸元首相、06年の橋本龍太郎元首相の合同葬という前例があるというから驚きだ。これらは悪しき前例に他ならない。教育機関に対して特定の政党が主催している行事に賛意を示せと要求するのは、中国かロシアか北朝鮮かトルコの現国家元首が言いそうなことである。

菅首相は先日、日本学術会議が推薦した会員候補のうち自分の意に沿わない候補を明確な理由を述べることなしに拒絶したわけだから、中曽根元首相の合同葬に弔意を示さなかった国立大学を自民党に非協力的な研究機関と敵視して、今後、菅政権が嫌がらせを行うのではないかという懸念が生じる。学術会議の件が問題化して以降、右派から「政府が金を出している教育・研究機関は政府の言うことに従え」という非常に乱暴な意見が噴出しているが、そんなことがまかり通れば、言論・教育・研究の自由が失われるのは目に見えている。行きつく先はファシズムだ。

2020年の世界報道自由度ランキングで、日本は何と66位と先進国としてはあり得ないくらい恥ずかしい順位に沈んでいる。このランキングはフランスのパリに本部を置く非政府組織の「国境なき記者団」が毎年発表しているもので、西欧人から見たバイアスがかかったものかもしれない。しかし、2010年のランキングでは日本は11位だったわけで、強権的で説明責任を果たさない安倍前政権の政治姿勢がランキング急降下に大きな影響を与えたことは否定できないだろう。

安倍政権の中核にいた菅首相が首班の現政権は、安倍前政権のそうした政治姿勢をさらに陰湿化させて引き継いでいると考えるのはごく自然なことだ。菅首相はなぜまともに説明を行わずに、中立的であるべき組織に対して忠誠を求めるのだろうか?やっていることは安倍前首相と同じだが、安倍首相は「保守」の立場から大風呂敷を広げていたので、ある種の分かりやすさがあった。しかし、菅首相に関しては、小さな政府志向だと感じられる以外に彼の国家観が見えないだけ、このまま説明なしの強権的政治姿勢を続けていると国民からの支持を失うのは時間がかからないだろう。

菅政権は、意固地にならずに弔意表明の要請を撤回すべきだ。

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