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〈堀江貴文×野村克也〉「人生最大」の「切り捨て」だった――伴侶との別れから学んだこと 『夢中力』より #2 - 堀江貴文 野村克也

〈堀江貴文×野村克也〉「カネを稼ぐ」ためには「信用を積み重ねる」ことが必要不可欠である から続く

 ITから宇宙開発まで幅広い分野で活躍する実業家堀江貴文氏。生涯一捕手を貫き、選手としても監督としても名声を集めた野村克也氏。

 全く異なる分野で活躍する両者ではあるが、二人の間には意外にも共通点が多く、プロ野球界再編騒動の際には極秘裏に会談し、野村克也氏が亡くなった日の一週間後には書籍化に向けた対談が予定されていたなど、確かな関係性を築いていた。ここでは別ジャンルながら、互いに共鳴し合い、第一線で活躍し続けた堀江貴文氏、野村克也氏それぞれの「愛」についての思想を『夢中力』(光文社新書)から引用し、紹介する。

◇◇◇

【堀江】妻子。人生で失った「最大のもの」

 1999年。僕には結婚していた時期があった。いわゆる「できちゃった婚」。

「あなたの通帳を預かったほうがいいと思うの」

 僕がビジネスで億単位のお金を動かしているのを知らなかったといえ、家計簿もろくにつけたことがないような20代半ばの女性。「管理は無理だよ」と説明したのに。

「生命保険に入ってほしい。学資保険に入ってほしい」

 僕は保険に入らないポリシーを掲げていることをいろいろなところで語ってきたし、残された家族が困らない程度の財産は充分に残してあげられる自信もあった。

 さらに、週末は子育てへの協力を頼まれ、帰宅するのが憂鬱だった。

 なぜなら当時の僕は、ネットバブルの勢いもあって忙しすぎた。1分1秒で中小企業の資産数社分の巨額のお金を動かし、心身ともに疲労困憊していたのだ。

 そう言うと冷たい人間と思われるかもしれないが、事情が特殊すぎた。結局、結婚生活は2年ほど。僕たちはまだ若かったのだ。「人生最大」の「切り捨て」だった。

 子どものおもちゃがなくなった殺風景な一軒家は本当に寂しかった。引き出しの中から息子の一枚の写真が出てきたとき、失ったものの大きさに打ちのめされた。

 父親の役目は成人するまでの充分な教育と豊かな生活。その意味で僕は充分に愛を注いできた。

©iStock.com

独身でいることを選択した

 そんな話をしたあとに不謹慎だと誤解を招きそうだが、男性は結婚後も恋愛を続けたほうがいいと思う。もちろん奥さんに最大限の敬意を払うのが大前提だ。

『人は見た目が9割』という本もある。身だしなみに気をつかえば、思考停止につながる「オヤジ化」は防げる。女性にモテれば当然、奥さんにもモテる。

 僕は妻がいる上で別の恋人をつくる器用な恋愛は面倒なので、独身でいて、自由な恋愛市場にいることを選んだ。

【野村】世間で悪妻と呼ばれたサッチーは、私の最良の妻

「女を取るか、野球を取るのか」──私が南海のプレーイング・マネージャーを解任される前、球団フロントからそう迫られました(77年シーズン終了後)。

 沙知代が現場介入をしているとの疑いをかけられたのですが、私は柄にもなく格好いいセリフを吐きました。──「恥ずかしながら女を取ります。仕事はいくらでもありますが、沙知代は1人しかいませんから」。

 しかし、阪神監督も沙知代の脱税容疑で辞任。女房のせいで2度職を辞したのです。

 沙知代とは再婚同士ですが、出会ったころ、英語を流暢に話す彼女は「コロンビア大卒」「社長の娘」と言い張りました。本当は福島の農家の娘です。

 怒鳴りつけてやろうと何度思ったことか。でも、別れようと考えたことは一度もありません。彼女のあの口グセを聞くと不思議に安心したのです。

「何とかなるわよ」

 倒れた日、119番に電話しました。やってきた救急隊員は言いました。

最後の一言は「手を握って」

「もう手の施しようがありません」

「サッチー、サッチー」。返事はありませんでした。

 思えば、沙知代が亡くなった日の朝、彼女が突然言ったのです。

「手を握って」──そんなことを言われたことは、あとにも先にも一度きり。あのとき何を思っていたのか。世間からは「悪妻」と呼ばれたが、それは夫である私が決めること。沙知代は最良の妻でした。

「野村克也-沙知代=0」。何もする気が起きません。事務所からしばらく仕事をキャンセルしましょうと言われましたが、いただいていた仕事はすべてこなしました。

 仕事をすることで、沙知代のいない寂しさを忘れたのです。

 収入のことはすべて彼女任せ。彼女は貴金属が好きでしたが、遺品整理は息子夫婦に委ねました。私は物に執着がない。彼女の位牌ひとつと思い出さえあればいい。

〈結論〉

 失って初めてわかった「大切なもの」。妻であり、子であり……。仕事で寂しさを紛らわせた。

(堀江 貴文,野村 克也)

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