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【橋下市長VS週刊朝日】「部落差別の一番の問題は語らず、触れず、近づかないという風潮だ」石元関西大教授②

関西大学社会学部・石元清英教授への電話インタビューを続けよう。

――昔の部落差別のイメージとかなり異なるが

「部落問題の語り方というのが従来からあまり変わっていなくて、行政の啓発でも教育でも差別された方が非常に深く傷ついて、部落差別は死につながることもあるんだという語り口が以前と変わりなくされている。部落がどこにあるのかを隠し続けて、その中で部落に対する一面的なマイナスイメージを強めているところがある。具体的な部落を示して、そこにいろんな人が住んでいて、部落外と同じなんだという今ある姿を見せていく方が私はずっと部落差別や偏見、誤解をなくしていくことにつながるように思う。隠す、表に出さない、それを暴こうとするのがすべて差別だということが部落問題全体に対する忌避につながっているように思う。職場、地域社会、隣人、友人、同僚と部落問題をまったく語り合おうとしないので、いったん持ってしまった偏見とか誤解が正される機会もない。もっと自由に議論できたり、話したりできるような状態にならないと、部落問題を自分の言葉で語ることをみんな避けている状況は解消されない。うかつなことを言うと大変なことになるという意識を持って、いったん持ってしまった誤解とか偏見をずっと根強く持ち続けることになってしまう」

――週刊朝日のおわびについてどう思うか

「同和地区を特定したことが一番大きな問題であるかのような謝罪の仕方になっている。ポイントが外れているように思う。昨年の大阪市長選の前、週刊新潮と週刊文春が橋下市長の出自を書いた。このとき橋下陣営は(できるだけ)無視する態度だったように思う。今回の週刊朝日の内容は週刊新潮、週刊文春とだいたい同じなので、いけるだろう、売れるだろうという判断があったように思うが、書き方が悪意に満ちていた。“売らんかな主義”という形で、注目を集めればそれでいい、そんなレベルの考え方だったと思う。出版社系ではなく、新聞社系の週刊誌、週刊朝日だったので、意外だなという印象を持った。今回、橋下市長は日本維新の会で出て行こうとしており、タイミングも前回とは違った。週刊朝日は問題がここまで大きくなるとは思っていなかったのだろう。読みが甘いといえば甘い。週刊朝日の対応は後手に回っていて、週刊朝日にとっては一番良くない流れになっている」

――いま部落問題はどんな語られ方をしているのか

「基本的には昔と変わっていない。2002年に同和対策事業特別措置法がなくなってから、部落差別をどうとらえるのかという本質的な議論がなされていない。同和地区の地価が安いという土地差別が部落差別だといったりしている。深い考察をしているとも思わない。どこの新聞も部落問題をあまり扱わなかったが、2006年に大阪、京都、奈良で部落解放同盟の不祥事が相次いだ。新聞、テレビでたたかれ、部落に対するタブー視のタガが外れたような形で、どういう風に報道するのかという議論がなく、スキャンダラスに扱う出版社系の雑誌がみられるようになった。ある種、タブーに挑戦するような書き方がでてきて、週刊朝日の問題もその延長線上にあるように思える。部落解放同盟も昔のような(力がなくなり)糾弾をやれなくなって、抗議文を送る程度になった。記者やライターの世代も変わって、部落差別の語り方がゆがんでいる」

――人権教育の効果はあるのか

「学校で人権教育はやっているが、担い手の先生がその指導法を大学で修めているのではなく、自己流でやっている。(今のままでは)効果があるとは思えない。興味深い点は昔、解放運動が盛んだったころ、部落の子供たちを子供会に入れて、部落民としての意識を持たせよう、部落の外には差別が渦巻いているという差別の厳しさを教え込んだ。一方、部落解放同盟の方針に反対して子供会に入れずに、私立中学・高校に通わした親もいる。青年になった時の意識調査で、子供会に入っていた人の方が部落外の友人が少なく、結婚についても差別されるのではないかと不安に思っていた。一方、子供会に入らなかった人は部落外の友人が多く、差別的な経験は一切ないという人がほとんどだった。免疫がないので結婚差別を受けたときの傷つき方が大きくなる恐れがあるともいえるが、部落差別のあり様は大きく変わった」

――週刊朝日はどう対応すべきか

「週刊朝日はあの記事をきちんと検証して、どういう狙いで企画を立てたのか、どうしてあんなタイトルをつけたのかという編集方針を全部点検して、洗いざらい明らかにすべきだ」

――部落問題について私たちはどう向き合えばいいのか

「語らない、触れない、隠す、近づかない、とタブー視する風潮を変えていかないと何事も(前に)進まない。メディアはトラブルになりそうな言葉をどんどん消していくという差別表現の問題で思考停止に陥っている。それが多くの人が部落問題をややこしい、触れない方がいいという風潮を助長している面がある。そして、今回のケースのようにいびつな形で扱われたりする。(みんなが)自分の言葉で部落問題を語り合えるような環境を作っていかないと、偏見やさまざまな誤解はなくならないように思う」(了)

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