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負け犬の遠吠え、または石原都知事とは何であったのか

石原都知事が新党結成を表明しました。

一都民としては彼の人格には非常に問題があり、また世界有数の影響力を持つ国の首都に戴く人物として適切であったか、という点については極めて懐疑的ではありましたが、さりとて、といったところです。

まず第一に、都民として彼を票を持ってして落とすことができなかったことはおろか、高齢を理由にした引退さえもさせ得なかった、という点について、率直に言って敗北した、と言わざるを得ません。いかに石原都知事に対する人格的・人物的問題があろうとも、その点については疑いようもありません。もちろん前回の都知事選に書いたように、過去の都知事選において、彼がその地位に就任して以降、対抗馬として勝ち得る人物がいたわけでもなく、また勝つための戦略を打った候補者もいなかった、ということはあると思います。

第二に、石原都政において、決して彼は(誉められた部分ばかりとは言いませんが)無能ではなかった、という点は挙げられると思います。美濃部都政によって極度に悪化した財政状況に対して、鈴木都知事がそうであったように(そして鈴木都知事は満足な成果を出さなかったとはいえ)、財政再建を掲げ、実際に一定程度の実効性のある成果を挙げたことは事実であり、それはまた都民自身が望み、選択したことでもありました。もちろんその過程で福祉政策のように反発がありながらも大きな削減の対象となったものはありましたが、反面それは美濃部都政における財政悪化要因の一つが福祉拡充であったことを考えると、是非もなし、といった面も否めなかったでしょう(もちろんこれについて全面的に賛成するわけではありません。過剰カットの部分があったことも事実です)。この「財政」というキーワードは東京都という経済圏にとっては相対的重要なもので、オリンピック招致における都民アンケートにおいて、支持の最大の理由が「経済効果」であったことなどもその一例とは言えるでしょう(自分は招致には反対ですが)。

第三に、今回の四期目は当初からあまりやる気が見られなかったという点があるにしても、長期政権がもたらした功罪として、宮廷政治とも揶揄される側近政治の側面と、主として二期目より本格化した有能な職員の人事異動による配転で自身が使い易いポジションにつけることでの、ある意味では実効性のある人事の実現、という側面もまたあったと思います。とかくキャッチフレーズ、アイキャッチ(メディアアピール)先行型の石原都知事にとって、このように動かしやすい、また意に沿って動いてくれる人事実現は必須のものでもあったでしょう。

第四に、第三とも連動しますが、とにかく「目に見える」訴求が一定の効果を挙げたことも否定できない点でしょう。カジノ構想や横田返還闘争にもあるように、第二の点ともリンクしますがある種の「経済効果」を訴え展開したり、またディーゼル車の排ガス規制についても(彼自身の事実誤認などもあったと思われるものの)、結果としてトラック業界自身から法規制に先立って自主的に規制に向けた動きが出てくる程度には効果を挙げたものでもあり、失敗したものも多々あり失政も多々あった反面、成果を挙げた「アピール」もあり、またその成果も割と「都民が求めたそれ(経済再建・経済活性化)」を訴求するなどの巧みさがあります(新銀行東京や築地移転は散々でしたし、尖閣購入募金なんてのもありましたが)。

石原都知事を是としない候補者が、その人間性・人格面、はたまた福祉の切捨てなどを批判の主対象にしたことに対して、石原都知事を支持ないし消極的にしても是とする中には、その極端な「日本的父性」だったり、また「タカ派的言動」だったりといったことを必ずしも支持していたわけではない人も多々いるように思えます。多くの失政や支持を得ない政策があった反面、都民の少なくない数が支持をする政策もあったわけで、対抗馬となるべき候補の多くはその「是」とされる政策に対して有効な対抗案または別案を提示してきたことはほとんど皆無と言って良いように思います。四選という事実を考えれば、彼に対して功罪で言えば功が「それなりに」評価されてきた結果、とも言え、その点においてその「功」の部分を突き崩すこともそれを「さらなる功(を実現し得るため)の提示」を行わなかったことも、その長期政権の延命に繋がった、と言えると思います。

また、罪の部分で言えば、しばしば「差別的」というにも言葉が易し過ぎるような差別発言を連発したかと思えば、アジア大都市ネットワーク構想(東京、デリー、クアラルンプール、「ソウル」)のようにその差別的発言の標的と、日本ではとかく標的とされがちな韓国を同構想に組み込むなど、一面的な差別批判では評価し切れない側面もあります。過去の言動を考えれば、彼が最大に嫌悪(ないし情念的差別感情)を抱いているのは共産中国ではないかとも思われますが、その意味では「民主韓国」「反共韓国」を対中政略上味方に引き入れようとするのは、それが打算であれ何であれ、ある面での「保守」政治家と言うべき側面があることも事実です。これは「保守」が差別的、というわけではなく、本来保守が「反共」として想定してきた対北・対中という、いささか古くなってきているとはいえ冷戦期からの伝統を、それなりに持ち合わせている、ということはできるかもしれません(だからと言ってその差別的言動を支持することは全くできませんが)。

また、表面的にはともかく、長期的に考えて石原都知事の経済政策は東京都という経済圏にとって必ずしも正の結果だけを残しているとはお世辞にも謂い難いのも事実ではあり、財政再建という一定の成果を挙げた側面と相殺、といったところかもしれません。少なくとも「都市圏」として考えた場合、彼の政策はいささか箱に頼りすぎた側面もあり、その結果が高層マンションの乱立と臨海開発の失敗(これは彼だけの責任ではないが)など、都市としての空洞化をもたらすようなものであった点もまた事実ではあります。

石原都知事が橋下市長と異なるのは、石原都知事は少なくとも「表面的な言葉で飾って実態がまるでない」橋下氏と異なり、それなりに「結果」を残しているものもある、という点でありましょう。しばしば見られる感情的言動や差別的言動は批判の対象として然るべきですし、自分としては彼の政策に対しては否の評価の方が多いくらいではありますが、四選出馬やその後の言動など、新党への願望を隠せないそれなど、彼自身がどちらかと言うと「素直に感情を示す(隠せない)」種の人間であり(都知事になる前からそうではあったが)、アクが強く非難される言動さえ、その種の言動の一環として見られがちであったこともまた事実だと思います。ある意味では政治家らしくない、とさえ言えるかもしれません。もっとも、それらもしばしばパフォーマンスであったりするわけですが。

そういった諸々を勘案すると、石原都知事を必ずしも是としない立場としては、三選目を許したことは失態ではありましたが(それでも二期目までの成果を考えれば、その功の部分の評価としては致し方が無い側面があったとはいえ)、四選目は明らかに蛇足でありましたし、結果としては四選目で落とせなかったことは大敗とさえ言えると思います。その意味で、彼と対峙すべき対抗馬を立て得なかった(担ぎ得なかった)、という点と、そもそも対抗するための戦略も戦術も存在させ得なかった、という点において、深く反省と自省が必要であるように感じます。Web上で何かを書いたところで何が変わるわけでも無いわけですが。

もちろん四期目を途中で放り出した、という点において「無責任」というのは易しいですが、東国原氏や橋下氏と比べれば、逆に三期やっているだけでも相当に「やった」わけで(内容ではなく期間として)、ましてや総理大臣が1年や半年でしばしば交代する期間、彼がずっと「都知事」在任であった、という事実はあるわけで、その種の批判は恐らくは新党の障害には成り得ないとは思います。また、国政という全国を対象とする場において、従来のように都政という相対的には小さいところでの結果がどこまで評価され得るか、という点は検討に値するとはいえ、逆に言えば従来と同様の批判を行っていても、そう大きな成果を挙げ得ないだろう、という現実はあるように思います。もっとも彼の新党がそう大きく飛躍するとも考えてはいませんが(それでも有象無象の新党の中では一定の票は得ると思います)。

さて、都民としては次の都知事選の動向が気になるところではありますが、個人的には現状の石原都政の延長政策が選択され落ち着くのではないか、という気はしています。個人的にそれを是とするかどうかは別の問題ですが。とはいえそれほど大きな変化を望むような空気は自身の生活範囲からは感じませんので。といっても閉塞感が漂っていることもまた否定できないようにも思います。ある意味では大きな停滞期に突入している、といった感じでしょうか。かくして、ミニ石原なのか似非石原なのか偽装石原なのかはわかりませんが、石原都知事ほどに個性も政治力(という評価でよいのかわかりませんが)もなく、大きな変化もなければとはいえ石原都知事ほどの成果もなく(同時に負も減るかもしれませんが)、そのような都政が待っているように思います。残念ながら。今のところそれに対して有効な何か、を見出せていません。

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