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日本にダメージを与えることを期待する一方で、日本企業の撤退を恐れる中国

 『21世紀経済報道』が「中国官员:日企在华减产撤资德国人最高兴」という記事を配信しており、いろいろ思うところがあったので、今日はこれについて少し。

1 記事の紹介


 いつものとおり、最初に記事を翻訳したものを簡単に紹介させていただきます。

 9月に日本政府が「島購入」という騒ぎを起こして以来、日本車の販売台数は減少しており、臨時休業をしているところがもあり、日本企業の撤退という話も出ている。

 中国社会科学院の李薇日本所所長は、中国の人件費の上昇と、釣魚島事件を考慮し、いくつかの日本企業が中国からの撤退の動きを速めつつあるとしている。

 東南アジアへの投資シフトが起こっているといっても、日本企業にとって、中国市場は捨てがたく、日本企業は、中国が依然として消費が急成長している市場であると認識している。

 釣魚島事件の影響で、日本の自動車メーカーの休業が増えつつある。10月22日、天津のトヨタ工場は5日間の臨時休業となったが、この工場の年間生産量は、中国のトヨタ自動車の生産のおよそ60%を占めている。

 9月の日本車の販売は、前年同期と比較して、40.8%も下落している。日本の自動車メーカーが今後、中国への投資を削減するかどうかが鍵となる。李薇によると、日本企業の東南アジアへのシフトは2011年に既に始まっているそうだ。

 李薇は、「釣魚島の紛争がこのペースを加速させる。」とも述べている。また少なくない日本の経済界の人達が、彼女に、中国への投資を削減すると語ったそうだ。

 統計によると、今年の日本からの投資は、56.2億ドルと、昨年より17.0%の伸びとなっているが、成長率でみると、昨年より50%以上下がっている。因みにドイツ、オランダ、スイスの投資の増加率は、それぞれ29.1%、38.9%、142.3%となっている。

 鄭新立は、日本の自動車メーカーが休業したことを受け、広東省に設立準備中のアウディを例に挙げ、日本企業が投資を減らせば、それは、自分たちのダメージとなり、ドイツの企業が得をすることになると述べた。

 中国商務部研究院の?平香は、日本企業が、短期的には中国への投資を減らすことは不可能と見ている。何故なら、香港以外で、中国に最大の投資をしているのは日本で、日本貿易振興機構(JETRO)の2012年の調査でも、ここ2年以内に中国に投資したいと答えた者は67%となっており、アメリカの83%より低いものの、EUの59%より高い数字となっている。

 李薇が接触した日本のビジネス界の人たちは、彼女に、いくつかの日本企業は東南アジアに移るだろうが、最後の目的地はやはり中国だと述べた。中国市場の経営権はとても大事なので、中国経済が冷えこまないことを期待しているとも語っていたそうだ。

 李薇は「我々は発展が望ましければ望ましいほど、日本に対する中国の必要性は高まり、中国に対する依存は高まる」としている。2000年以来、中国の日本への輸出量は毎年12.8%の伸びとなっており、輸入は毎年16%の伸びで、中国市場への日本の依存度は益々高まっている。

 日本から中国へは、毎年延べ300万人が、中国から日本へは毎年延べ100万人が来ており、前者は日本航空に、後者は中国の国営航空会社に乗るわけだが、現在日本企業のダメージの方が大きい。

 また、9月の日本の中国への輸出は、前年比14.1%の減少、特に車の輸出は44.5%の減少となっており、自動車部品は17.5%の減となっている。スタンダード&プアーズの予測によると、日本の中国への年間輸出は30%減少し、日本の名目GDPを0.6%引き下げるとしている。


2 個人的感想


 全体的な論調としては、これまで何度か紹介してきたものと同じで(中国が日本に行える経済制裁?尖閣問題について中国人が考えた対処法)、中国の日本に対して行っている日貨排斥などの「制裁」が効果を上げているというものです。

 ただ、その一方で、日本企業が中国から撤退するのではないかということを恐れていることも感じられ記事になっています。実際、自動車メーカーが撤退となれば、そこに部品等を供給している子会社も撤退となるわけで、雇用などの面で地域経済に与える影響はかなりのものがあります。

 それに、記事にもあるとおり、外国から中国へ投資といった場合、もっとも多く中国に投資をしているのは日本なので、その投資がなくなれば、中国経済へ与える悪影響はかなりのものになると考えます。

 実際、こうした懸念が表明されるのは初めてではなく、以前にも日本企業が中国を脱出して、東南アジアに移転しようとしているのではないかと、中国紙が懸念を表している記事を紹介したことがあります(中国紙が日本資本の中国脱出を懸念する記事を掲載)。

 ただ、この問題については、如何にも中国の記事らしく、日本企業の中には確かに東南アジアなどへのシフトも見られるが、「中国市場が最も大事」だとしており、何とか自分で自分を必死になって安心させているような感じがします。

 日本企業に対し、あれだけのことをしでかしたわけで、チャイナリスクというものをまざまざと見せつけられ、日本企業が出て行くのも仕方がないわけですが、その一方で、内心日本企業の撤退を本気で心配している様が透けて見える記事で何とも言えないものを感じたが故の今日のエントリーでした。

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