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菅首相は任命拒否リストを知っていたはずだ

日本学術会議問題に関し、菅首相は今月5日に内閣記者会と行ったインタヴューの中で、日本学術会議が推薦した会員候補者リストを見ていなかったと述べた。会見での具体的なやり取りは以下の通りである

記者:最初に案を見たのは、いつ誰からの報告だったのか?その時点では105人の名前が載っていたのか?

菅首相:私が最終的に決裁を行ったのは9月28日です。会員候補のリストを見たのは、その直前だったと記憶しております。その時点では、最終的に会員となった方がそのままリストになっていたと。

記者:総理が見た段階ではもう99人だったと?

菅首相:そういうことです。任命するリストでありますから。

記者:任命前の推薦段階でのリストは見ていない?

菅首相:見てません。

この菅首相の発言は、自分が事務方から何も説明を受けておらず、提出されたリストを見てそのまま任命しただけだと言っているようなものである。

ところが12日夜に、「日本学術会議の会員任命拒否を巡り、杉田和博官房副長官が内閣府の提案に基づき、任命できない人が複数いると、菅義偉首相に口頭で報告していたことが12日、分かった。政府関係者が明らかにした。」との報道があった。これが事実ならば、菅首相は少なくとも事務方が原案リストから複数人が除外する意思があることを事前に知っていたわけであり、首相が事前に会議提出の推薦原案リストと除外対象リストの両方の存在を知っていたことになる。

最終的に決裁を行った9月28日以前の状況として、首相が会議提出の原案リストを事前に見ていたならば、首相は嘘をついていることになり言語道断である。反対に首相がリストを全く見ていなかった場合、首相が初めてリストを見た段階では既に6人が削除されていたことになるので、事務方が原案リストから複数人を除外する行為を行っていたことになる。決裁文書がどのようなものだったかが我々には明らかになっていないが、仮に決裁文章に「学術会議が99名を推薦し」のような文言が含まれていたら明らかな改ざんが行われたことになるが、官僚は馬鹿ではないので、「学術会議の推薦に基づき99名を任命する」のような文言が書かれていることだろう。

しかしながら、28日に提出されたリストは原案リストから複数人が除外されたものである可能性が十分にあることを分かっていたにもかかわらず、首相はそれについて確認さえ行わなかったこと自体が

「日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする。」

と規定している日本学術会議法17条の趣旨から考えて、内閣総理大臣が果たすべき役割を怠ったということに他ならない。

さらに、加藤官房長官は13日の記者会見で、

「菅総理大臣に、任命にあたっての考え方の説明があって、共有され、それにのっとって作業が行われて、起案された。最終的に菅総理大臣が決裁したというプロセスだ」

と述べたが、これは初耳で驚くような答弁だ。

というのは、菅首相がこれまで「前例を踏襲して良いのか考えてきました」と述べ、さらに「任命にあたっての考え方の説明」まで述べているのに、除外リストについて確認さえしなかったというのは考えにくいからだ。除外リストの6人について聞かされていたというのであれば、実質的には推薦段階でのリストの一部を見たことになるので、「任命前の推薦段階でのリストを見ていない」という首相のインタヴューでの回答は虚偽の発言だったということになる。

マスコミと野党は引き続き事実関係を徹底的に追及すべきだ。特に①首相がいつ、誰に対してどこでどのように「任命にあたっての考え方の説明」を行い、どのように事務方に共有されたのか、②菅首相は杉田官房副長官から拒否したい会員候補がいることを聞かされていたのか、③菅首相が任命拒否リスト全員について事前に知っていたか、④誰が6人を任命リストから外したのかが焦点になろう。

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