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【橋下市長VS週刊朝日】「部落差別の一番の問題は語らず、触れず、近づかないという風潮だ」石元関西大教授①

朝日新聞出版は週刊朝日による橋下徹・大阪市長の出自報道について、朝日新聞社の第三者機関「報道と人権委員会」に検証を要請した。週刊朝日の河畠大四編集長はおわびで「同和地区を特定するなど極めて不適切な記述を複数掲載した」「記事の作成にあたっては、表現方法や内容などについて、編集部での検討だけではなく、社内の関係部署のチェック、指摘も受けながら進めた」と説明していたが、今回の問題をどう見るか、部落問題に詳しい関西大学社会学部の石元清英教授に電話インタビューした。

――週刊朝日の記事を読んで、どう思ったか

「週刊朝日編集部の人も言っているが、ノンフィクションライターの佐野眞一氏の書き方には悪意があって、品がなくて、読んだ後の感じが良くなかった。人を貶めるような、劣った人間を見下すような書き方だと思う。橋下市長の父親がヤクザで全身に刺青を入れていると書いているが、それが橋下市長の考え方にどういう影響を及ばしているのかという分析はまったくない。橋下市長をマイナス評価する道具に使っているようにしか感じられなかった」

――橋下市長の父親が被差別部落出身で、橋下市長自身、同和地区に住んでいたことをメディアが語ることについてどう思うか

「橋下市長が学んだ大阪市東淀川区の中学校では同和教育がさかんに行われていた。“受験戦争の弊害を生徒に及ぼさない”として、地元高校にみんな一緒に進学していた。橋下市長はそれに反して進学校の北野高校に進んだ。私の教え子も橋下市長と同じ中学校に通っており、みんなと違う高校に進学したとき“裏切り者”と呼ばれたそうだ。北野高校に進んだ橋下市長も同じように“裏切り者”扱いされたと思われる。こうした体験が橋下市長の部落解放同盟嫌いにつながり、人権施策に反対して補助金をどんどん切っていく行動に結びついていると私は感じている。政治家のバックグランドとしての同和問題から橋下市長の政策や政治信条を分析するような書き方はできたと思う」

――週刊朝日は大阪府八尾市の同和地区を特定したことが大きな問題だったとの認識だが

「私は、その点がそんなに重大な問題だったとは考えていない。これまで、どこが部落であるかを出すことが差別と考えて同和地区名を表に出さないようにしてきた。しかし、それに対してだれかがそれを暴露するということが繰り返されてきた。教育の場でも啓発の場でも同和地区名を隠すという対応がかえって、部落の具体的なイメージを持つことを妨げてきた。差別が厳しいという抽象的な形で部落問題を聞かされるため、多くの学生は、部落というのは人里離れた山奥にポツンとある数軒からなる村で、血が濃い結婚が繰り返されて、障害者が生まれるという実態とはかけ離れたイメージを持っている。同和地区名を隠すことが逆に偏見を助長しているように思える。今回、具体的な地区名を書いたことがすごく大きな問題であるかのように取り上げられているが、それは些細なことだと思う」

――部落差別の現状は

「就職の際、定期採用を実施しているような企業が身元調査で被差別部落出身者を排除するようなことはほとんどなくなっている。万一、発覚した際の企業のイメージダウンを考えると、就職差別はあり得ない時代になった。面接で家族構成を聞いただけで労働局が指導に入る時代だ。就職してから周囲の態度がよそよそしいというようなことはまだあるかもしれないが…」

――結婚差別は

「結婚に関しても被差別部落出身者かどうかはこだわらない人が増えている。部落に住んでいる若い人の約9割が部落外の人と結婚し、部落内の結婚は約1割だ。親戚関係は昔ほど密ではなくなり、親戚の数が少なくなり、親戚が結婚に口を出すことも少なくなった。兄弟の数も少なくなり、兄弟の結婚に響くということも少なくなった。部落出身であることが人間の価値を左右するものではなく、親から反対されて気持ちが揺らぐような人だったら、早めにそんな人だとわかって良かったわという割り切り方をする若い人も増えてきた。偏見を持っている人とは自分から付き合わない、意識の高い人もいるからそういう人と付き合うんだというようになってきた」(続く)

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