記事

「みんな将棋をどうやって観ているの?」会議 楽しみ方は自由だ! - 岡部 敬史

1/2

 指す、観る、読む、書く、描く……将棋の楽しみ方は自由である。

 棋士の姿だけを観てもいいし、「将棋めし」だけに注目してもいい。好きな戦型のときだけ観てもいいし、最新の指し手を追求してもいい。

 大切なのは、どの見方が「偉い」ということはないことだ。

 古参の方々が「楽しみ方はこうあるべきだ!」と、強制してくる分野というのは、遅かれ早かれ衰退する。誰もが気ままに楽しめなければ、そこに新しい人はなかなかこない。


©️文藝春秋

自分なりの将棋の見方を聞く

 観る将が増えている。

 これはひとえに、将棋を観てきた方々の「誰でも楽しんで」という優しい雰囲気と「寝癖の形だけでも面白い」「バナナを何本食べるか注目」という誰でも楽しめる着眼点をたくさん面白がってきた風土ゆえだろう。

 このように気ままに楽しめる「観る将ライフ」であるがゆえ、他の人が「どのように将棋を観ているのか」は意外と知らないものだな――と思う機会が先日あった。

 私も著者の一人である『将棋「初段になれるかな」大会議』(扶桑社)のイベント用にサイン本を作る会があり、その打ち上げの席に私たち(高野秀行六段と漫画家のさくらはな。さんと私)のほか、版元や書店の将棋好きが集まった。そこで、棋力が異なる人たちが「自分なりの将棋の見方」を話していたのが面白かったので、ここで紹介してみたい。

プロ棋士・高野秀行六段の見方

 まずは席上、ただ一人のプロ棋士であった高野秀行六段の話からご紹介しよう。

――他の棋士の将棋は見ますか?

高野 プロはデータベースが見られるので、全部チェックします。年間、2千局以上ありますから、全部は並べきれないですけど。

――それはやはりお仕事という感じですね。「観る将」的に楽しむとか応援するといった感覚はありませんか?

高野 応援する気持ちはないですねぇ。

――飯島先生(栄治七段)が木村先生(一基九段)を応援するといったような感じはない?

高野 木村九段が、王位を取ろうかってときは、同世代ですから応援しました。ただ、飯島七段のような愛はないですね。あれは愛でしょう(笑)。まあ、飯島七段にとっては師匠みたいな存在なんでしょうね。

 やはりプロ棋士ゆえ、一般の「観る将」とは視点は違うようだ。ちなみに高野六段は、すべての対局に目を通すなか「どういう意図でこれを指しているのかわからない」ということが、たびたびあるという。そういったとき、一般の人と同じように戦術書を買って目を通し「なるほど。こうなってるのか」と理解するという。  

 私が高野六段と一緒に本作りをしていて、すごいなと思うところは「わからない」ときっぱり言うことだったりする。プロだからと見栄をはってわかったようなふりをすることが一切ない。だから「プロにもわからないんだから、アマチュアはわからなくても大丈夫ですよ」というメッセージを込めやすい。学ぶべきことが多すぎる将棋では、「わからなくてもいいこと」を伝えることもけっこう大事なことなのだろうと感じている。  

「観る将」にとって気になる「解説」のことも聞いてみた。

昔にくらべて、解説はすごくわかりやすくなった

――普段の解説は、どれくらいの棋力の方を想定してされるのですか?

高野 基本的には5級くらいを対象にしていますね。昔にくらべて、解説はすごくわかりやすくなったと思います。ただ終盤は、ある程度、難しいことを言わないと仕方ないので、ここは観る方の棋力ももう少し必要になるでしょうか。

――投了図以下がわからないことも多いです。

高野 アマチュアの人にとって投了図以下がわからないのは普通のことですよ。実は僕もたまにわからない(笑)。「えっ? 投げちゃうの?」って思うことはあります(笑)。

――ちなみに投了図以下、全部わかる人はどれくらいの棋力ですか?

高野 プロですね。あれが全部わかったらプロですよ(笑)。

――あと、解説の先生が「6二角、1四歩、3四銀……」などと符号だけでその先の指し手を示すことがありますよね。あの符号だけで指し手がわかれば、どれくらいの棋力ですか?

高野 符号だけで、5手でも脳内で進められたらすごいと思いますよ。二段、三段でも難しいかもしれませんね。四段以上必要かもしれません。それくらい難しいことです。

――「評価値」についてはどういうご意見ですか?

高野 誰でも形勢がわかるようになって、観る将の人が増える要因になっていると思います。ただ、そこまでの差があるとは思えないなということがよくありますね。数字がすごく離れているから、ひっくり返ると「大逆転」と思われるかもしれませんが、そんなことはないというケースも少なくありません。

――あれは「詰み」が生じたら絶対に間違えないAI同士の対局ならば意味はあるけど、人間同士では、なかなか数値通りにはいかないと。

高野 そういうことですね。詰みが生じると「99対1」となりますが、詰まさないと

逆に「1対99」になってしまう。人間の戦いではよくあることです。

――では評価値にも改善の余地はあると。

高野 理屈としては正しいかもしれませんが、それがすべてではないです。「人間の感覚では+300点ぐらいですね」という解説も多くなるのではないでしょうか。

「観る将」といえば、毎日のようにトップ棋士同士の将棋を楽しんでいる人種だ。将棋を観ることで将棋は強くなるのだろうか。そんな素朴なことも聞いてみた。

――将棋というのは、観るだけで強くなるものですか?

高野 もちろん観ることで強くなりますよ。ただ、今のトップの将棋を観るだけで強くなるかといえば少し疑問ですね。手が難しすぎて、僕にもわからないところがありますから。

――なるほど。

高野 私、ゴルフ好きなんですが、男性プロのスイングを見てもあまり参考になりません。あんな風にできないですから。それよりも女子プロとか、YouTubeなどでスイングを上げている上手なアマチュア女性のスイングのほうが参考になります。

――やはりアマチュアが観て参考になる棋士という方がいると。

高野 渡辺明名人、豊島将之竜王、藤井聡太二冠、永瀬拓矢王座……。こういった方々は「観賞用」ですね(笑)。

――以前、アマチュアの方が見て参考になる棋士として鈴木大介九段や村山慈明七段の名前を挙げておられましたが、今、オススメの棋士の方はいますか?

高野 うーん……。あ、いましたよ! 加藤結李愛女流初段です。居飛車党なんですが、対振り飛車などはお手本となるような急戦を指されていて、とても参考になると思います。初段を目指す方は、ぜひ見てください。

あわせて読みたい

「将棋」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    ブラタモリに失望 忘れられた志

    メディアゴン

  2. 2

    新しい生活様式嫌がる日本医師会

    御田寺圭

  3. 3

    宮崎美子の才色兼備ビキニに脱帽

    片岡 英彦

  4. 4

    飲み会の2次会 死語になる可能性

    内藤忍

  5. 5

    官邸前ハンスト 警官と押し問答

    田中龍作

  6. 6

    菅首相が最優先した反対派の黙殺

    内田樹

  7. 7

    官邸がTV監視? スクープに称賛も

    BLOGOS しらべる部

  8. 8

    マイナンバーカードが2ヶ月待ち?

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  9. 9

    立民議員の官僚叩きに批判が殺到

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  10. 10

    任命拒否 学者6名に無礼な菅首相

    メディアゴン

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。