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米国で量的緩和策第3弾以降、長期金利が上昇しているという現実

 米国の公開市場委員会、昨日、これまでの金融緩和策を維持することを決定しました。

 つまり、これからもゼロ金利政策と、長期国債や住宅ローン担保証券の購入を続けるということになったのです。

 まあ、景気の現状からすれば、そうした結論に至るのも当然でしょう。まさかこの時期に金融引き締めに転じる訳にもいかない訳ですから。

 いずれにしても、9月に決定した量的緩和策第3の効果どうなっているかということなのですが、貴方はどのようにお思いになるでしょう?

 というよりも、次のような問いを私は投げかけてみたくなるのです。一体全体、量的緩和策、言葉を換えれば、長期国債を連銀が購入することの目的は何なのか、と。

 さあ、如何でしょう?

 もちろん量的緩和策、つまり長期国債を購入することは、景気を下支えること、ひいては雇用の回復を目的としものなのですが、では、どのようなメカニズムで景気を下支えすることができるのか?

 如何です?

 私、日銀にさらなる緩和策を求める与党野党の政治家のなかで、この問いに納得のいく説明を与えることができる人がどれだけいるのか、と思うのです。

 前原大臣はどう答えるのか? 安倍総裁はどう答えるのか?

 これが日本の場合であれば、多分政治家は次のように答えると思うのです。

 「デフレから脱却させるため」

 では、どうやってデフレから脱却させることができるのか?

 「中央銀行が大量に長期国債を購入すれば、市場に出回る通貨の量が増えるから必ず物価が上がるはずであり、そうなればデフレから脱却できる」

 貴方も、そのように考える口ですか?

 では、米国についてはどうなのでしょう

 米国では今は誰もデフレのことなんか心配はしていません。というよりもインフレになっては困ると心配する人が多いのです。だから、そのような観点で連銀が行っている長期国債の購入策についても批判されることが多いのです。

 そのような状況にあって、何故FRBは長期国債の購入を行うのか?

 もちろん、彼らは予め批判を予想して、インフレが起きる恐れは殆どないと言うのです。

 その点は、私も異論はないのですが、だからといって何故長期国債購入するのか?

 バーナンキ議長の答えは、そうして連銀が長期国債の購入を行うことによって、長期金利の低下が促され、従って、景気の下支えができるからというものなのです。

 私としては、日本の場合にも、もっと長期金利を引き下げることが景気を下支えするために必要だからと言うのであれば、それなら理屈がとおると思うのですが、実際には、今の日本の長期金利高すぎ、それが景気回復の足かせになっているという主張は殆ど聞くことがないのです。(実質金利でみると高いからという議論は稀に聞きますが‥)

 では、再び米国の方に話を戻すとこととして‥米国では9月13日のQE3決定以降、バーナンキ議長の思惑通り長期金利が低下しているのかと言えば‥次の数値をご覧いただきたいと思うのです。

<米国の10年物国債の利回り>
9月4日  1.59%
9月5日  1.60%
9月6日  1.68%
9月7日  1.67%
9月10日 1.68%
9月11日 1.70%
9月12日 1.77%
9月13日 1.75%
9月14日 1.88%
9月17日 1.85%
9月18日 1.82%
9月19日 1.79%
9月20日 1.80%
9月21日 1.77%
9月24日 1.74%
9月25日 1.70%
9月26日 1.64%
9月27日 1.66%
9月28日 1.65%
10月1日 1.64%
10月2日 1.64%
10月3日 1.64%
10月4日 1.70%
10月5日 1.75%
10月9日 1.74%
10月10日 1.72%
10月11日 1.70%
10月12日 1.69%
10月15日 1.70%
10月16日 1.75%
10月17日 1.83%
10月18日 1.86%
10月19日 1.79%
10月22日 1.83%
10月23日 1.79%

(資料:FRB)


 これでお分かりになったように、確かに9月末にかけて長期金利が1.6%台にまで下落した局面があるのですが、その後は、再び以前の水準を上回っているのです。

 それに、今言ったように一時期長期金利が低下したことについても、その主な原因は、ユーロ危機が意識されたことによるものと解釈した方がよさそうに見えるのです。

 いずれにしても、このようにして中央銀行による長期国債の購入が如何なる意味を有するのかがはっきりとしないまま、米国や日本では中央銀行による長期国債の買入れが続けられているのです。

 このように私が言うからと言って、私も、そのような措置の結果、自国通貨安を引き起こす効果があるということは、十分承知をしているのです。

 でも、中央銀行による長期国債購入の狙いは、自国の通貨価値を引き下げ、それによって輸出を促進することにあるというのであれば、それならそれで堂々とそう宣言すべきではないでしょうか?

 でも、実際には、バーナンキ議長を含めFRBとしては、今の金融政策が通貨安を引き起こすことを狙いとしているなんてことは一言も言っていないのです。

 いずれにしても、長期金利を強引に下げようと思って中央銀行が長期国債の購入に動けば動くほど、インフレ懸念が高まり、そしてその結果長期金利はむしろ上がってしまうということがあるということを忘れてはならないのです。

 それにしても、米国では、このように長期金利はむしろ上がるような状況になっているのに、誰も文句を言う人がいないのは何故なのでしょう?

 結局、今のアメリカの長期金利の水準は十分に低いと認識しているからで、それ以上下げることがどうしても必要なんだ、なんて考えている人は殆どいないのでしょう。

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