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米大手紙の記者も大変だ。取材と同時にスマホで撮影、即、送信


昨日の米大統領選のテレビ討論会を巡るニュースを見て回るうちに、1時間31分に及ぶ討論会の全てを収録したビデオに遭遇しました。Wall Street Journal(WSJ)のサイトにあったのです。凄いなと思いつつ、NewYork Times(NYT)やWashington Post(WaPo)なども見て回りました。

するとNYTにもWaPoにもありました。勿論、YouTubeにもありましたし、ネットワークテレビ局、一部の政治専門サイトなどにもありました。でも、WSJのこのページをご覧頂くと分かりますが、読者の関心事に対応して、きめ細かく討論テーマごとに分けたものも同時に多数アップロードしていることに驚かされます。WaPoにいたっては、討論内容すべてを文字化したトランスクリプトまでありました。「ここまで新聞はウェブに手を掛けるか!」という思いです。

件のWSJの討論ビデオは、<WSJ Live>というページにアップされているのですが、このWSJ Liveは昨年9月にスタートしました。WSJの記者、編集者2000人のネットワークで、毎日4時間のオリジナルビデオを生み出しているそうで、同紙のサイトだけでなく、スマートフォンやタブレット端末、GoogleTV、AppleTVなどのconnected TVを含め、計28の提携先に幅広く配信し、さらにはソーシャルメディアからも発信しています。

WSJは、自社のビデオ配信のアクセス数を公表していませんが、今年9月初めのForbesの記事によると、2012年8月のストリーム数は2800万を越えたとオンライン担当のAlan Murray氏が明かしています。これは昨年の4倍にあたるとか。WSJ Liveの設置は当たったわけです。

加えてWSJは、8月末にWSJ Liveを強化する新コンテンツとして<World Stream>を開始しました。<Mobile Video by WSJ Reporters Around the Globe >とあるように、これも全世界2000人におよぶWSJのジャーナリストを活用して、取材現場からスマートフォンで撮影した1分前後の短いビデオを送ってもらい、次々にアップするというものです。

このために開発された専用アプリが記者のスマートフォンに入っていて、撮影した記者はそのアプリをクリックするだけで送信でき、サイトでは時系列に表示されると同時に、自動的にトピック毎にフィルタリングされます。本社のスタッフはビデオを見たらすぐにアップするのでタイムラグは数分にとどまるそうです。

私事の余談ですが、これを見ていて、12年前の出来事を思い出しました。全国の地域版に掲載された教育関係記事で、他府県の教育関係者にも有益なものを網羅した「教育メール」の創刊を提案した時のことです。趣旨にはだれも反対できない。でも、ただでさえ労働過重の地方支局員に、深夜に該当記事をピックアップして本社に送信するという義務を新たに課すのが酷なのは事実なので、実現までそれなりの紆余曲折がありました。

それに比べて、現場で取材しつつ、その上にスマートフォンでとはいえ、ビデオニュースを撮影して送信するというのは、「新聞」記者にとってかなりの負担を強いているように思われます。しかし、先のMurray氏は、WSJ系列のMarketWatchの記事の中で「テクノロジーは、ジャーナリストとしての仕事の価値を高めるような力強い画像を取り込むチャンスを記者に与えるのだ」と強気の弁を述べています。

思い立って、読売、朝日、毎日各紙のサイトで、記者がニュース動画にどう関わっているかを見比べて見ました。すると、読売の場合は「記者動画」のページがあり、一日数本づつ新たにアップされていますが、半数以上は取材記者ではなく写真部記者が撮影したもののようです。朝日も同様に一日数本づつアップされていますが、「記者動画」はおよそ半分位で、写真部やデジタル編集部によるものが半分という感じです。毎日にも動画ページはありますが、「記者動画」というくくりはなく、動画自体が少ないようです。また、アクセス数はWSJに比べればそれこそ「月とスッポン」と言うしかありません。

記者への負担が増えても、前向きに捉えてやるしかない米国の大手紙。そこには、新聞部数減少に歯止めがかからない中、モバイル時代、ビデオ時代に対応したデジタルシフトを強めなけ れば生き残れないという強い思いがあるのでしょう。その意味では、まだ部数減少が顕著ではない日本の新聞とは温度差があるのは仕方がないのかも知れませんが、その格差はあまりにも大きいのが実感です。

(蛇足)静岡県で圧倒的な存在の静岡新聞の記者は静岡放送と兼務で、大昔からメモ帳とスチールカメラとムービーカメラを持って取材してましたね。今はどうなんだろう。また、以前、このブログで紹介した「週刊NY生活」のCEO兼編集長の三浦良一さんは、室内でのインタビューでは、左手に照明ライト、右手にビデオカメラを持ちつつおしゃべりしています。その一例はこれ。勿論、原稿も書きますし、ビデオ編集も自分でします。

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