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- 2020年10月09日 15:22
学術会議任命拒否問題について物申す
1/2一部メディアが騒いでいる学術会議の問題について、私も科学者の端くれとして私見を書きたいと思います。
私は某医大卒業後、研修医を終え、脳外科医として臨床を経験しつつ研究を開始、その後、大学院に進学、アルバイトで学費と生計を賄いながら研究に専従し医学博士号を取得しました。
多くはありませんが、自身の研究内容について英文医学論文を20本弱程度は書いていますし、アカデミアの端くれくらいには位置しているという自負はあります。
この10年以上の研究歴の間、研究を行う上で私は「学術会議」という存在を意識したことはありませんでした。
医学系を中心として友人にも多くの研究者がいますが、実際に学術会議を意識したり、なんらかの影響を受けたと感じる人はまずいません。
つまり、学術会議とは実際の研究活動の場にはほぼ無関係な組織と言えます。
一方で、学術会議の関連団体である「学術振興会」は研究者にとっては不可欠な存在です。
研究者の活動資金である研究費として、国内で最も大きな「科研費」を運営しているのが学術振興会だからです。
よって、学術振興会を知らない、意識しない研究者はいません。
一方、学術会議を意識する研究者はほとんどいないというのが実際です。
ぶっちゃけた話、研究の現場にとってはあってもなくても変わりがないのが「学術会議」です。
では、学術会議とはなんなのか?というと、下記のホームページにある通りですが、
「日本の国立アカデミーであり、内閣府の特別の機関の一つである。日本の科学者の内外に対する代表機関であり、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とする(日本学術会議法 第2条)」(Wikipediaより)
ということのようです。
Wikipediaには学術会議に関する様々な内容がよくまとまっているので、興味のある人は見てみてください。
内閣府の機関の一つで、「内閣総理大臣の所轄の元、政府とは独立して職務を行う機関」ということですが、運営は公金で行われています。つまり我々国民の税金で運営されている組織です。
この時点で、内閣総理大臣の所轄の元ですから、内閣府の組織として任命や任命拒否の人事権は総理大臣にあってしかるべきと思います。
任命拒否について、世の中の一部が過剰に問題視していますがこれについての私見は後に書きたいと思います。
会員の選考については、現在はコ・オプテーションと呼ばれる方式が取られているようで、現会員が後継者を選ぶという閉鎖的な方法で内部で会員候補選考し、そのリストをもって総理大臣が会員を任命、もしくは任命拒否をするというものです。
つまり、会員の選考には国民も一般の科学者も関わりはなく、学術的業績など定まった選考基準もありません。
民主的な選挙ではなく、必ずしも科学的な業績によるものでもなく、先輩から後輩へという、仲良し人事で選考が行われうることになります。
会員名簿票をみていたら何人か話したこともある母校の大先輩の名前もありましたが、科学者としての研究業績重視というよりは、名誉職の方々が立場で選ばれている方もいる印象でした。
この学術会議は年間10億超の税金で運営され、会員への手当が年間総額4500万、事務員などの人件費が3億9千万、
他に会員の旅費や国際交流のためにも億単位の費用が計上されています。
国際交流のための費用というのは、海外への旅行費用ですよね。
会員への手当と旅費には税金が投入されていることに違いがありません。
つまり、税金が投入されている既得権益の一つとも見ることができます。
コ・オプテーションという現在の会員の選考方法にも疑問があります。
学術会議は科学の立場から行政に提言や要望を行う機関であるということですが、実際の提言は下のリンクから見て取れます。
ぱっと見たところ、社会システムや、ジェンダーや、マイノリティーなど、社会的な提言が目立ち、ちらほらと医学や原子力など物理などの科学的な提言が見受けられます。
印象として、経済学の提言があまり見当たりません。
最近のものだと、ジェンダーやマイノリティーもそうですが、外国人の教育を受ける権利についての提言、など、え、これ科学と関係あるの?という、なんだか政治色が濃い提言もあります。
政治色の強い過去の提言、声明を調べてみると、2013年 特定機密保護法に抗議する声明
2017年 共謀罪法案に反対する声明
この2つは記憶にまだ新しいですね。
「悪口を言っただけで捕まるようになる」
「自由に映画も作れなくなる」
「表現の自由が侵される」
と当時、野党議員、知識人、映画監督などの文化人、がこぞって反対し、メディアでも連日総攻撃のように大きくとりあげられたテーマですが、これに学術会議も同調していたようです。
これも、科学関係ある?というようなテーマですね。
結局上のような主張が全てデマだったことはもう皆さん知っての通りです。
彼らが声高に叫んだことは一つも現実になっておりません。
政府を批判するような映画も普通に作られており誰でも見れますし、反日的な表現でも罪に問われることもありません。
自衛隊の配置などの国防機密を国会で開示要求する議員が捕まることもなければ、首相の病状という機密を暴こうとする人達が捕まることもありませんでした。
結局、特定機密保護法はアメリカなどの友好国と機密情報を交換する上で必要な法案だったことが分かりました。
中国を念頭にした現在の安全保障において、日米豪印などの関係強化の一つの基盤になっています。
問題なのは、ミスリードとも言える声明を出した学術会議と、それを先導した会員について、何のペナルティもないことではないでしょうか。
メディアもそうですが、誤った情報を国民に広めても何のお咎めもないことはいかがなものでしょう。
そもそも、軍事や安全保障に詳しいはずもない学術会議がその分野に意見する必要があるのでしょうか。
しかも、閉鎖性の高い選考過程で選ばれている学術会議会員が、あたかも科学界全体の意見であるかのごとく、政治的な声明を出すことも大きな問題だと思います。
学術会議が政策に影響を及ぼした他の案件として、東日本大震災後の復興増税策、昨今のレジ袋有料化、があるようです。(下記記事)
災害時でインフラも壊れているときに増税するなんて普通に考えれば非常識ですし、レジ袋有料化も結局は環境への良い影響などほぼなく、ただの増税でした。
増税の提言が多いようで、復興税などは今も続いていますが勘弁してほしいものです。
あまり世のためになっていない経済的な提言も多いようです。
経済学者があまりメンバーにいないことが影響しているのでしょうか。
また、科学技術に関する声明についても、2017年に学術会議は「軍事的安全保障研究に関する声明」で、軍事に結び付く研究を禁ずる過去の声明を継承する、としています。
これなどは本当にナンセンスな声明ですね。
医学にしても物理、化学、工学にしても最先端な研究というものはいずれも軍事に結び付くからです。
たとえば病原体の研究やワクチン開発はそのままバイオ兵器の開発と紙一重になりますし、宇宙開発の人工衛星やGPSも軍事に直結します。
AIの研究や、燃料電池の研究なども何でも軍事に応用可能。
よく知られていますが、そもそもインターネットですら元々は軍事技術です。
先端技術で軍事と関連の全くないものなんてほとんど無いと言えるのに、科学の向上発展を志す学術会議が「軍事に関連する」という名目で様々な研究を禁ずるのは完全な矛盾と言えます。
これぞ、学問の自由への侵害なんですね。
実例として、北海道大学で2016年に船の流体力学に関する燃費改善の研究について、軍事に結びつくという理由で学術会議幹部が乗り込んでいって研究を辞退させた例などは目に余るものです。
これではただの権威威圧団体です。
もはや学術会議自体が、学問の自由を侵害しています。
その一方で中国が富国強兵のために海外の優秀な研究者を誘致する「千人計画」には、国際交流として協力しているというのだから、意味不明です。
日本での軍事に結び付く最先端研究は弾圧する一方で、中国の軍事研究は手助けしていることになります。
Wikipediaにありますが、2019年に天文学者の先生が、「非民主的で閉鎖的な組織が、日本の学術界で最高の権威を持ってしまっていて、ひとたび声明を出せば大学や学会を萎縮させ、研究者 の自由が容易に奪われてしまう。これは大変深刻な問題」
と述べています。これは学術会議のことを言っています。