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EUとの経済連携

EUとの経済連携協定の交渉が始まるかなという情勢になりつつあります。TPPの方は盛り上がるのに、こちらはあまり盛り上がりませんね。ただ、交渉の厳しさや、これまでのEUからの色々な要望については、かなり「如何なものか?」と思いたくなるものがあります。
関税の構造からいうと、EU(正確にはECですが)との交渉はこちらの方にメリットがかなりあります。EUは平均関税率が日本より高いのです。日本は全体として見れば農産品の平均関税率がEUより高いのですけど、その分非農産品分が低くなっており(というかEU側が高くて)、全体としてはEUより平均関税率が低いのです。そして、日本はEUとの経済連携の結果として、EU農業市場に殴り込みをかけたいというわけではなく、非農産品のところで参入していきたいということですから、正に経済連携によって得られるものが大きいと言っていいでしょう。EUが下記のようにグダグダ言っているのは、マクロ的に見ると「関税交渉の部分では日本に利が多いから、それ以外のところでたくさん取りたい。」ということなんだろうと思います。

EUは事前の段階であれこれ言ってきました。自動車の技術指針の見直し、政府調達の運用改善(情報の一元的な英語での提供)、建築用木材の基準、医療機器の管理基準については規制緩和をすることを合意してあげています。いわば前払いに近いことを対EUではやっており、本当は看過しがたいところもあるのですが、まあ、あまりガチャガチャ言わないようにしたいと思います。一般論として感じるのは、EUの方がアメリカよりも要望が具体的であるということです。アメリカは単に「不公正だ」と言うだけで、よく分からないことが多いのです。私は「偽装された数値目標(disguised numerical target)」と呼んでいます。それに比べれば、EUは非常に具体的に持ち込んできます。

自動車産業が反対を騒いでいるのも厄介なのですが、実は私は対EUで厄介なのは政府調達だと思っています。今、日本の「政府」調達において、JR、NTT、郵政等は民営化したにも関わらず、政府調達の厳しい規則の対象内です。日本側は除外を求めているわけですが、ああでもない、こうでもないということで、特に応じて来ないのがEUです。恐らく、今回の交渉でもJRへのアルストム社(フランス)、シーメンス社(ドイツ)あたりの輸送システムの参入をしつこく行ってくるでしょう。というか、事前協議の段階で持ちこまれているはずです。

私からすると「さっさと政府調達の対象から外せ」と言いたいところであり、政府調達の枠組みの中でアルストム、シーメンスの参入を求めてくること自体が奇異なのですけども、これは現時点の枠組みの中では仕方のないことです。そして、フランス、ドイツ側から見れば「本来国際競争入札であるにもかかわらず、自分達は日本のJRの調達でシェアが全くない。これは非関税障壁があるからだ。」という理屈になっているわけです。

実は地元のあるビルメン業者の方から「JRは政府調達の対象であるにもかかわらず、JR関連のビルでの清掃には一切入りこめない。何故か。」という照会を受けたことがあります。よくよく調べてみると、公の安全、公共秩序関係の規定を幅広く適用して、例えば駅ビルみたいなものであっても参入ができないようになっているようです。そういうのが、欧州諸国からすると「『政府』調達の対象となっているにもかかわらず入れないのはおかしい。」ということに繋がっているのでしょう。

まあ、TPPのみならず、EUであっても、もっと言うと対中国であろうとも、交渉は本当に厳しいものになります。よくTPP反対論者は「韓米FTAで韓国はかなり厳しいものを飲まされていて、TPPをやると同じ事をぶつけられる」と懸念していますが、韓EUFTAを見てみても、かなり厳しい交渉をした跡が見られます。

別にTPPが特殊なのではなくて、これから先進国を対象とする経済連携が進んでいくとすべて交渉は厳しいのです。「アメリカ嫌い」、「アメリカ怖い」というのを真正面から言うのが嫌だから「TPP反対」を主張している方は、次に対EUで厳しい局面が出てきた時に何と言うのかなと不思議な気分になります。その論理が最終的に行きつくのは「経済連携的なことは一切やらない」ということにしかならないのですが。

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