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それでも「テレワーク」は確実に定着していく。

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昨日の日経紙朝刊に掲載された「テレワーク」の記事。

「テレワークが新しい働き方として定着する中、仕事の生産性を巡る評価が分かれてきた。コミュニケーション不足の懸念から伊藤忠商事は社員の出社を促す一方、日立製作所などは多様な働き方の選択肢としてテレワークを積極推進する。新型コロナウイルス感染拡大を機に広がったテレワークだが、企業の取り組み姿勢に温度差が出てきた。」(日本経済新聞2020年10月7日付朝刊・第3面)

いつものように伊藤忠商事が昭和の価値観を振りかざし、ベンチャー系でも面白法人カヤックの「週3日出社奨励」がトピックとして取り上げられるなど、どちらかと言えば、”時流に一石を投じる”感を見せている記事のようにも思える。

だが、自分がこの記事を読んだ時の印象はただ一つ。

「テレワークは確実に市民権を得たな。」

ということに尽きる。

振り返れば、6月上旬、同じ日経で、電子版に掲載された記事*1
では、以下のようなデータが紹介されていた。

「テレワークによって仕事の生産性が「下がった」と感じた人は6割を超える

4月13~19日という、まさにスクランブル体制に突入し始めた頃に行われたアンケートの結果、とはいえ、対象は比較的ITへの親和性が高そうな「日経BPのデジタルメディアの読者・会員」である。

それでも、「生産性」に対する評価は、以下のとおり散々なものだった。

(普段のオフィスでの仕事を「100」とした場合の業務の生産性評価)
120以上 3.9%
100超120未満 8.4%
100 24.8%
80以上100未満 28.2%
60以上80未満 22.9%
40以上60未満 8.4%
20以上40未満 2.0%
20未満 1.3%

「100」を上回った人の数字は僅か12%ちょっと、”横ばい”の評価の人を合わせても4割に満たない。

やむに已まれぬ理由で一気に普及した、と思われたテレワークも、この頃はまだ”闇”の中だったということなのだろう。

それが今回のアンケートではどうか。

9月23日~24日の日経電子版でのアンケート、対象者もカテゴリー分けも異なるとはいえ、

仕事の生産性が
上がった 31.2%
変わらない 42.2%
下がった 26.7%

僅か12.3%だったポジティブ評価が31.2%に。そして「変わらない」の比率もほぼ倍近くに増加し、6割超だったネガティブ評価組は30%を切るレベルにまで大きく減少。

この変化は実に大きいというほかない。


いろいろ話を聞いていると、未だに「リモートだと部下の指導が・・・」みたいなことを言っておられる方も多いのだが、そういう方々がそれまで本当に「部下の指導」をきちんとできていたのかは、結構疑わしいと自分は思っている。

距離感だけは濃密な環境で、「指導」というよりは、空気を察して動く賢い部下たちに助けられていたのではなかったのか?

部下が相談に来るたびに、「指導する」つもりで呟いていた蘊蓄とか昔の武勇伝なんて、部下たちにとっては迷惑なものでしかなかったのではないか?

日頃からきちんと「言葉」で的確な指示が出せているのであれば、「テレワーク」になったからと言ってコミュニケーションの精度やレベルがそう簡単に落ちるとは考えにくいわけで、特に法務のような「言葉」を重んじる世界でコミュニケーション不全が起きているのだとしたら、それはテレワークのせいではなく、元々の問題が顕在化しただけなのでは?と疑ってみた方が良いかもしれない。

あと、5月くらいから降って湧いたように出てきて唖然とした(そして今でもくすぶっていて、昨日の記事の中にもまだ出てきている)

「テレワークだと部下の業績を適切に評価できない」

という戯言もチャンチャラおかしい。

「夜遅くまで頑張ってるから」とか「何となく一生懸命やってるように見えるから」といったところで、「人事上の」評価を行う、なんてことは、自分がマネージャーになった10年前の時点で既に廃れた昭和の風習だと思っていたから、自分はそういった価値判断で査定をしたことは一度もなかったのだが、それが今になって出てくるというのは、日本の会社(特に大企業)がいかに今まで適当な人事評価、人材育成しかしてこなかったのか、ということを自白しているようなもので、何とも恥ずかしい限りだと思う*2

少なくとも、これまで電話で、あるいはひそひそこっそりと行われていたこともあった「担当者の仕事」が、テレワークの普及によって必然的にメール、チャットを中心とした文字コミュニケーションに置き換わる、ということは、「評価」する側の立場から見れば、良いことはあっても悪いことは一つもない、といってよい。

特に「いかにしっかりと手数をかけてカウンターパートとやり取りし、有効なアウトプットを出すか」ということが必須ミッションとされる法務のような部署の場合、各担当者が出しているメールの数とその中身を見れば、”違い”は一目瞭然なわけで、だから、自分はCOVID-19が地球上に現れるずっと前から、「メールのCCには必ず入れてね」というのを自分のチームの一貫した約束事にしていた*3

テレワーク体制の下でも、「1対1チャット」とか「1対1ウェブミーティング」のようなところまではカバーできないから、そこはレポーティングをしっかりやってもらう、ということでカバーする必要はあるのだが、それでも従来と比べれば格段に各人の仕事は「見える化」されやすくなるはずだし、自分自身の仕事にしても、「不意に現れて割込み仕事を落としていく歓迎されない相談者」に振り回されにくくなる、という点で、コントロールしやすくなったところはあるのではないだろうか?*4

唯一厳しい面があるとしたら、事業のラインにもコーポレートの意思決定のラインにも微妙に入っていない弱小部門(たとえば法務とか法務とか・・・)の管理職層の場合、これまで大きな会議の前後、松の廊下等で息を潜めながら役員に行っていたような”ご注進”がしづらくなってしまったり、そもそも”密回避”的な発想で会議そのものから外されたり、というリスクを常に負っている、ということ。

気軽に1対1のやり取りがしやすい環境になったからといっても、歴史と伝統のある会社では、いきなり社長や役員に対してチャットで話しかけようとする文化自体が拒絶されていることも多いし*5、仮に明示的に禁止されなくなったとしても、畏れ多くて気軽に話しかけるなんてできない、という方々がほとんどだろうから、自分の思っていることをトップにまで伝える機会は間違いなく減ることになるだろう。

また、これは上の層だけでなく、担当者クラスの方々にとっても同じことで、「ついでに法務に」という相談を受けることもなくなれば、一度相談を受けた案件について、「その後どうなりました?」と心配するフリして次の仕事の営業をかけるテクニックを発揮できる機会も確保できなくなってしまう。

これは単に「ハード面がどうこう」という話ではない分、かえって対応が難しい面もあるのだが、ここを乗り越えないと「法務」という存在自体が雲散霧消してしまう恐れもあるので、個人的には何卒しっかり・・・と願うばかりである。

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