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「法務大臣」ポストの「軽い」扱い

 いくなんでも、ひど過ぎるという言葉しか浮かんでこない田中慶秋法相のドタバタ劇。外国人献金や過去の暴力団関係者との交際といった問題噴出で、一回も国会で答弁することなく、在任23日で辞任。その間には、なんだか焦点がぼやけたような会見がお茶の間には流れ、決算委員会の欠席も「答弁されちゃかなわん」とばかり、民主党側の要請があったとの話までも報道されています。それでもご本人はまだ続けたかったご様子ですが、事実上の更迭を受け入れての辞表を提出、その理由は「体調」。結果、もう年だから勘弁してくれ、と言っていた前法相にもう一度という話になっています。

 問題は、当然、今、野田首相の任命責任に移っています。なぜ、この人物に法務行政のトップが務まると思ったのか、ということを誰でも質したくなりますが、同時に、いわゆる「身体検査」はやったのかという声も当然出ています。野田内閣での閣僚の辞任・交代が相次いできたことを見れば、これが同内閣が抱えた病理とみることはできます。

 ただ、そもそも同内閣に限らず、これまでの政権を見ても、法務大臣というポスト扱いについて、首をかしげたくなることはいくらもありました。一般国民には、意外と伝わっていない面もあるようですが、このポストには、これまでも弁護士や法務行政に詳しい人間ばかりが就任してきたわけではありません。むしろ、不思議なくらい、畑違いの方が就任する。この理由として、法務行政のトップでありながら、実は組閣において「融通がきく」ポストという扱いであることが政界関係者の中でいわれてきました。「誰でもなれる」といえば、語弊がありますが、「つぶしがきく」と。そのため、かつてから派閥均衡をはじめ、組閣での政治的な調整ポストともされてきた面があったことは否定できません。

 かつて在籍した新聞社で、私がいた当時は、法曹三者トップの就任時には必ず単独のインダビューを企画して、歴代会見してきました。最高裁長官・日弁連会長・検事総長に加え、法務大臣にも実施してきたのですが、同大臣については、どうしたって法曹である前三者と違う。会見の冒頭、「私はこの世界は門外漢ですので」などという、自信なげな前置きは度々聞いたように思いますし、法務省のプロの方々がお付きとして、にらみを利かせる厳戒態勢のなか、ぱらぱらと事前にそのプロの方々が用意した台本をめくって、法相が読み上げるだけのインタビューも度々経験しました。

 法務大臣という立場から発せられる意味は分かっていても、法務省に取材した方が早いような、なにやらこの儀式めいたやりとりのおかしさや、ころころ変わることも手伝って、法務大臣については、その後この企画をやめてしましました。

 田中法相について、「こんな『素人法相』に、検察改革など喫緊の課題を任せるわけにはそもそもいかなかった」(10月23日、朝日新聞社説)といわれていますが、「素人法相」は何も今回に始まったことではありません。もちろん、前記「素人」を自認されていた法相でも、一生懸命職務を全うされた方はいらっしゃいましたが、法務大臣というポストの重さに比して、なぜ、という疑問はずっと拭いされないものとしてあったのは事実です。法務行政に精通している政治家がほかにもいることを考えれば、彼らに白羽の矢が立たない、なってもらいたくない別の理由までも、詮索しないわけにはいかなくなります。

 田中法相就任についても、9月の党代表選で旧民社党グループからの支援を受けた見返りに、同グループ会長である彼の初入閣となったという、「能力や経験より論功行賞、党内融和を優先させた安易な組閣」(前記「朝日」社説)ということが言われており、どうやら今回も法務大臣というポストは、前記したような「融通がきく」調整ポストとして活用されてしまったようです。

 しかし、この「分かっているけどやめられない」というような、法務行政トップポストの「軽い」扱いは、この辺で根本的に改められるべきであると思えてなりません。

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