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特例公債法案成立の遅れによる市場への影響

 26日に財務省で臨時の国債市場特別参加者会合が開催されることが22日に発表された。テーマは「特例公債法案成立遅延の市場への影響について」である。

 現在、特例公債法案は完全に政争の具とされ成立の目途は立っていない。すでに戦後初めての予算の執行抑制が実施されているが、このまま特例公債法案が成立しなければ11月末にほぼ財源が底をつく計算となっている。そうなれば、さらに厳しい抑制策を実行する必要があり行政サービースにも大きな支障が出る懸念がある。それとともに注意しなければならないものとして国債市場への影響がある。

 もしこのまま特例公債法案が成立しなければ、12月以降に何が起こるのかをあらためて検証してみたい。9月14日の国債市場特別参加者会合では財務省から、いまだ成立していない特例公債法に関する以下の説明があった。

 「現時点では、平成24年度における特例債の発行根拠となる特例公債法案が成立していないため、特例債の発行を後ろ倒ししているが、利付債の入札発行を平準的に行っていくには、法案が11月までに成立する必要があり、法案提出部局である主計局とともに、早期成立の必要性について引き続き訴えてまいりたい。」(財務省のサイト、国債市場特別参加者会合(第45回)議事要旨より)

 これは11月末までに法案が成立しなければ、12月以降の国債発行に支障が出る可能性があることを示唆している。つまり11月末までに特例公債法が成立しなければ、12月入札予定の国債が休債に追い込まれる可能性が高い。これについては10月22日にNHKでも次のように報じている。

 「財務省によりますと、このまま法案の成立が遅れた場合、来月末にも、市場に向けて発行する国債がなくなり、入札ができない異例の事態になるということです。」

 12月4日には10年国債の入札が予定されている。もしこれが休債となれば、たぶん10年債としては1984年以来の休債となるのではなかろうか。1984年に長期金利の上昇を受けて、景気動向への配慮から条件改定が見送られ、シ団引受けの長期国債の発行が6月から8月まで3か月連続休債となったことがあった。また、2008年10月にリーマン・ショックの影響により、海外投資家のニーズが後退したことなどから、物価連動国債(10年物)の入札が中止された。その後、15年変動利付国債の入札中止もあった。とにかく国債の休債というのは異例の事態であることは間違いない。

 国債発行ができなくなり休債となれば、需給逼迫で国債は買われるとの見方があるようだが、いずれその未発行分は発行しなければならないものであり、単純に国債買いとはならないはずである。むしろ、日本の国債発行に支障が出ることそのものが、懸念視されかねない。

 ちなみにこの特例公債法案が成立しなくても、日本の場合には国債の利払い・償還がすぐに滞ることはない。つまりデフォルト事由が発生することはない。これは国債の利払い費と償還費は、「国債整理基金特別会計」にプールされた資金で支払われるためである。

 一般会計において発行された国債などは、一般会計からの繰入資金(これが国債費と呼ばれるものである)を財源として国債整理基金特別会計から利払いが行われる。 さらに一般会計から本特別会計への定率繰入や、「特別会計に関する法律」の規定により発行される借換債の発行収入金等を償還財源として、60年償還ルールに従って減債され、国債整理基金特別会計から償還が行われている(財務省のサイト、国債整理基金特別会計より)。

 今年度の国債費が入らずとも、国債の利払い費と償還費はすでに特別会計でプールされた資金で手当できることで、今年度の国債の利払い費や償還費がすぐに払えないという事態には陥らない。つまり特例公債法が成立しないことで、日本ではデフォルトが生じることはない。

 だから特例公債法は早期成立させなくてもかまわない、というわけではもちろんない。今後の予算の執行にさらなる支障が出ることは間違いなく、債券市場をはじめとして金融市場の混乱要因になりかねないため、早期に成立させる必要があるのは当然である。

 26日の臨時のPD会合(国債市場特別参加者会合)では、特例公債法案成立の遅れによる休債となった際の債券市場への影響等について対応を協議すると思われる。市場は先行き不透明なものに対してはかなり警戒する。警戒心の強まりから市場参加者が神経質となり、その結果市場が不安定化し、日本国債への信認への警戒を強めるようなことにもなりかねない。このような不安定要因は、米国の「財政の崖」懸念のように景気にも影響を与えかねず、国民生活そのものにも支障が出る懸念があるとともに、国債市場にも影響が出る懸念があるため、早期に払拭すべきものであろう。

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