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伝説のクソゲーや違法開発者 ゲームの栄枯盛衰描く刺激的ドキュメンタリー(さやわか)

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Getty Images

ネットフリックスで配信される映像作品には、刺激的な味付けがされていることが多い。

最近のドキュメンタリー作品でいうなら私設の動物園でトラなどの野生動物を大量に飼う、型破りな男を描いた『タイガーキング:ブリーダーは虎より強者?!』のように、登場人物の常軌を逸した行動や、銃や麻薬もじゃんじゃん登場する衝撃的な事件を追い求める作品が豊富なのだ。

ドラマにせよ、ドキュメンタリーにせよ、地上波のテレビ番組では見られないような、ネット発ならではの見ごたえを重視しているということなのだろう。

『ハイスコア:ゲーム黄金時代』も、そうしたネットフリックスらしさを味わえる、刺激的な作品だ。

第1話から「伝説のクソゲー」 ゲーム業界の栄枯盛衰描くドキュメンタリー

Netflixオリジナルシリーズ『ハイスコア:ゲーム黄金時代』独占配信中

これは70年代後半から90年代末にかけての、ゲーム業界の栄枯盛衰を描いたドキュメンタリー。と言うと、懐古ノリに満ちた、中年ゲーマーを歓喜させるだけの作品かと思うかもしれない。だが実際に視聴してみると、実はそんな生やさしい内容ではない。

そもそも第1話の冒頭からしてふるっている。最初に語られるのは「伝説のクソゲー」こと『E.T.』についてだ。1982年に米国の家庭ゲーム市場が冷え込み、ゲーム会社アタリが経営危機に陥った「アタリショック」事件の遠因とされるゲームだ。


『E.T.』は、当時大ヒットしていた映画を題材にし、セールスも期待された作品だった。だが主人公である宇宙人を穴に落としてはそこから脱出するという、あまりに理不尽かつ爽快感のない内容だったため大コケしたのだ。

歴史上の汚点となってしまったこのゲームは、なぜ生み出されたのか。取材陣はその謎に迫りながら、ゲーム業界の勃興期を描き出していく。

ここがうまい。もちろん『E.T.』開発者のインタビューが映像で見られるというだけでも、マニアックなゲームファンにとっては面白いだろう。しかしそのエピソードを使って、ちゃんとゲーム業界の黎明期について解説を加えるのだ。

とはいえ、その軌跡は最終的にクソゲーである『E.T.』を生むまでのものになるわけだから、品行方正かつ健やかに成長していったゲーム業界の姿が描かれるわけではない。

業界の古参クリエイターとしてにぎやかに登場するのは、既存ゲームのパクリや改造で身を立てた開発者たちばかりだ。

「何でもあり」の違法な開発者たちの魅力

Netflixオリジナルシリーズ『ハイスコア:ゲーム黄金時代』独占配信中

彼らがやったことは、もちろん今なら(そして当時でも)違法行為としてそしりを受けるものばかり。だが、このドキュメンタリーはそれについて必ずしも否定的でない。むしろはっきりと、面白がっている。

実際、面白いのだ。

たとえばマサチューセッツ工科大学の学生だったダグ・マクレーは、自らの住まう学生寮に市販ゲーム機を設置してゲームセンターを運営していた。それだけでも型破りな話だろう。しかしマクレーが特に面白いのは、プレイヤーが慣れてきて、ゲームオーバーになりにくくなると収益が下がると身をもって知った結果、仲間とともに、設置していた市販ゲーム『ミサイル・コマンド』の改造に乗り出したことだ。

言ってしまえば彼らは、自分たちのゲームセンターの利益のために、著作権を侵したことになる。しかもマクレーたちはその改造キットを量産販売し、莫大な富を手にする。

彼らは『ミサイル・コマンド』の販売元であるアタリ社に訴訟を起こされるが、最終的に同社は、自社の商品を改造した者たちの能力を認め、雇うことにしたのだ。

その成功で波に乗ったマクレーたちが同じように『パックマン』の改造も販売元に認めさせたことで生まれたのが、今では正式にシリーズ作品として認められている『ミズ・パックマン』だ。

Netflixオリジナルシリーズ『ハイスコア:ゲーム黄金時代』独占配信中

ユーザーの勝手な改造がイノベーションを生み出し、公式サイドがそれを取り込んでいくという流れは、ゲームの世界では今日にいたるまで定着している。マクレーたちの例は、その端緒と言っていい。

ゲーム史の本道ではないかもしれないけれど、確実にそこにいて、歴史を作ることに参画していたパワフルな人々。彼らのめちゃくちゃなやり方には、黎明期だからこそのパワーと輝きがある。

戦後の闇市のような、あるいはインターネットの初期のような「何でもあり」な感じ。その自由さが、何だかうらやましく思えてくる。

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