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【読書感想】非道に生きる

非道に生きる (ideaink 〈アイデアインク〉)

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内容紹介

極端だから、人をひきつける。

こんなの映画じゃない。『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚』『ヒミズ』……性・暴力・震災など現実に切り込む衝撃作で賛否両論を巻き起こし続け、最新作『希望の国』では日本最大のタブー、原発問題に真っ向から挑んだ鬼才映画監督・園子温(その・しおん)。

社会の暗部を容赦なく明るみに出す刺激の強すぎる作家が「映画のような」壮絶な人生とともに、極端を貫いて道なき道を生き抜いた先の希望を語る。

「これからのアイデア」をコンパクトに提供するブックシリーズ第4弾。

画期的なブックデザインはグルーヴィジョンズ。



「園子温監督の大ファンです!」と言えるほど作品を観てもいない(観たのは『冷たい熱帯魚』『ヒミズ』『愛のむきだし』くらい)僕なのですが、園監督の映画に感じる、ざらざらとした感じというか、観客が傍観者でいることを許さないような切迫感は、他の監督の作品とは異質なものだと思います。

先日、夜中のNHKのドキュメンタリーで、園監督と、原発事故を描いた新作『希望の国』が採り上げられていて、「ああ、この人が、ああいう映画をつくっているのか……」と知ったのですが、こんな本も出されていたんですね。


この本では、園監督の子ども時代の話が、すごく印象的でした。

 学校がまったく好きじゃありませんでした。小・中・高と、すべての入学式に遅刻していますし、「起立・礼・着席」という号令が大嫌いで、小学1年生のときに「なんで立ち上がらなくちゃいけないのか、説明してほしい」とひねくれたことを言って教師の反感を買っていました。つまり、問題児だったわけです。始終クラスメイトとケンカしていましたし、先生に日に何回も殴られていました。結局、小学校のあいだずっと「起立・礼・着席」は無視し続けました。人と同じことをするのを本能的に嫌うへそ曲がりだった。

 ある日「なんで服を着て学校に行かなきゃいけないんだろう」と思って、「実験だ!」とフルチンになって教室に入っていったことがあります。さすがに家から裸だとバレるので、玄関を出たあと途中で脱いで学校に入る。もちろん、ものすごく怒られましたが、「じゃあチンチンだけ出して入ったらどうなるんだろう」と考えて再チャレンジする。そのうち先生といたちごっこになって、最後には「全部隠してこい」と言われるわけだけど、こっちも意地になって授業中だけでも出しておこうとする。すると、となりの席の女の子が「先生、園君がチンチン出してます」と指摘する、「園、またか!」と先生に見つかる前に、教科書で筒を作ってサッと隠す……。

 まあ、深い意図はまったくなかったのですが、「みんなが騒ぐ」というのが大事でした。顔や手も普段は露出しているのに、どうして性器を出すと騒ぐのか、その反応が面白かった。だから小学校時代は新聞部や放送部といった、ある意味「露出」できる部活動に所属していました。バカなことができて、みんなの鼻を明かすことができるからです。


なんて子どもなんだ!と思うのだけれども、子ども時代に「みんなと一緒じゃないことに悩みつつも、結局は正規分布のなかでウロウロしていただけ」だった僕なのですが、子どもにとって「他人と違う」って、けっこう苦痛なはずです。

でも、こうして映画監督という仕事をやっていくうえで、その「他人との違い」が、園子温という監督の「個性」として多くの人に評価されているんですよね。

「いま、人と同じことができない子どもたち」に読んでみてもらいたいし、「あなたが異端なのは、いまいる水槽が狭すぎるだけなのかもしれないよ」って、教えてあげたい。

それにしても、周りの大人たち、先生や親御さんは、大変だったでしょうね……


御本人は「人見知り」と仰っているのですが、「作品」に関しての園監督の行動力には驚かされます。

若いころにつくった映画の宣伝についても、「ここまでやるか!」という徹底っぷり。

『自転車吐息』というインディペンデント映画を、中野武蔵野ホールでレイトショー上映した際には、さまざまな「宣伝活動」をやっていたそうです。

チラシを映画館に置くのは当たり前。演劇やダンスのときの挟む込みチラシや、マンションやアパートの郵便ポストへのチラシ配りを徹底的にやっていたほかに、こんな「宣伝活動」も。

当時、反体制・反権力で、スポンサーなしで映画を自主制作していた渡辺文樹という有名な監督のトークショーに毎回参加して……

 そこに来る客全員にチラシを配るだけでは能がないので、そこでひと芝居打ちました。トーク後の質疑応答の時間に、誰よりも先に「ハイ!」と手を挙げる。そこで普通なら「とても素晴らしい映画をありがとうございました……」と始まるわけですが、物事には”つかみ”が必要です。そこであえて「さっきから聞いていて全然面白くないんですが!」とブチまける(もちろん話を聞いていようが聞いてなかろうが同じことを言います)。

 当然、監督もゲストもムッときて「なにっ! 君は何者なんだ”」とつっかかってくるのは計算済みで、「きたな」と思いながら僕はこう言うわけです。「えー、わたくしはですね、来月の××日から中野武蔵野ホールでレイト上映する『自転車吐息』という映画を監督した園というものですが……」。「何だおまえ! 宣伝か!」とますます怒られても気にしない。「宣伝もありますけど、僕は誰かと言われれば、さっきから言っているように『自転車吐息』って映画を監督していて、ここからはちょっと遠いですけど中野武蔵野ホールで×月×日からレイトショーでやるんですが……」と切り返すだけです。

 そして、帰るときには出口で「さっきの園ですけど、よろしくおねがいしまーす」というふうに笑顔でチラシを渡していく。なかには「頑張れよ」と激励してくれる人もいました。これを毎日繰り返すんです。


ちなみに、これを毎日やっているうちに「渡辺監督から、ゲストとの打ち上げに直接呼ばれるようになった」のだとか。

渡辺監督も、この「プライドを捨てて自分の映画を観てもらおうとする若者」に魅了されてしまったんでしょうね。

こういう話を読むと、思いきってやってみるものだな、という気がするのですが、実際にやるとなると、けっこう大変ですよね……


こんな園監督でも、20代半ばから40歳くらいまでは、不遇な時代が続いていたんですね。

本当に厳しい世界ですが、そこまでやり続けた園監督の執念もすごい。

(もっとも、園監督は、途中で「東京ガガガ」というパフォーマンス集団(?)を主宰したりして、映画の仕事ばかりをされていたわけではないのですけど)

 

こんな感じのエピソードばかりで、さぞかし敵も多かっただろう、とも思うのですが、園監督は、映画においても、「嫌われても、自分は妥協せずに納得できるものを作る」というポリシーを貫いているのです。

『気球クラブ、その後』(2006年)で、交通事故で死んだ主人公の恋人役を演じた永作博美さん、長回しで撮った彼女のラストシーンも、何度もやり直しました。「まだまだ?」「もっと?」と彼女が訊く。「もっともっと」「まだもっといけよ!」と僕が応える。そうして最後に一番いいテイクが撮れた後、彼女はずっと泣いていました。「こんなもんでしょ?」という役者の引き出しを取っ払って、新しい引き出しを生み出すための緊張感ある空間を作ることが大切なのだと思います。

 そのためには監督と役者のあったかい関係なんかなくてもかまいません。撮影が終われば嫌われてもいいと思っているので。よく劇場公開初日の舞台挨拶で「監督、本当にいいんです」とか「現場もほんわかして楽しかった」とか言っているのが嫌です。観客はちっとも楽しくありません。「現場が最悪で毎日行きたくなかったし、監督は嫌いです」でいいのです。「現場がつらい」というのは、しっかり映画に向き合って撮っている証拠ですから。「あと3カットあればこのシーンが締まるけど、もう深夜の3時」という場合、多くの監督はあきらめるかもしれませんが、僕はそのまま続行します。役者もスタッフも、自分もきついけれど、そのシーンをよくするためには、やるしかない。


いろんな女優さん、俳優さんの話も出てくるのですが、園監督の作品で「一皮むけた」役者さんが多いのにも頷けます。

それと同時に、「ずっとこの人と一緒にやっていくのは大変だろうな」とも感じます。

あの緊張感を生み出す現場もまた、ずっと張りつめているのでしょう。

「和気藹々とやること」が悪いとは思えないけれど、そこで「馴れ合い」になるよりは、泣きながらでも「良い作品を後世に遺す」ほうが幸せ、なのかなあ……


震災、原発事故を題材にした、園監督の最新作『希望の国』が、10月20日から公開されています。


参考リンク:映画『希望の国』オフィシャルサイト


この映画について、園監督は、こう仰っています。

『希望の国』に関しては、原発推進派からも、脱原発派からも、さまざまな反応が来るでしょう。先述したように、この映画自体は「巨大な質問状」であり、僕にはこれをあからさまな「脱原発」映画にする気はありませんでした。「脱原発」という答えを用意した、単純なものにしたくなかったのです。そもそも僕は「脱原発」という言葉があまり好きじゃない。たとえば羊小屋がたった今、炎で燃えているとします。刻一刻と火が燃え広がっていくなかで、羊たちはじわりじわり足下に近づく炎から後ずさりしていきます。このまま羊小屋にいれば危険です。そんなとき、「脱・火」などという悠長な言葉で羊たちが火について論じますか?

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