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ふれあいがリスクに コロナ禍で揺れる「居場所」づくりの運営者たち – 大谷悠

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新型コロナウイルスがもたらした打撃は、それぞれの地域にも大きな影響を与えている。広島県尾道市もそのひとつだ。日本やドイツで都市論・空間論などについて研究を行っている大谷悠さん(同市在住)に、緊急事態によって揺れる地域の「ふれあい」について紹介いただいた。

店舗でも、住宅でも、公共施設でもない、しかし人びとの居場所となっているような場所=「コミュニティスペース」。

家庭環境にかかわらず子どもたちが集まる「子ども食堂」や、人びとが本を共有し集まって読書会を開く「私設図書館」など、様々なタイプのコミュニティスペースが分断されがちな人たちをつなぐ場所として存在している。

ところがコロナ禍では、人びとの「ふれあい」が「リスク」だとみなされるようになった。

これを受けて、コミュニティスペースの運営者は何を考え、どんな対応をすることになったのか。筆者の住む広島県尾道市にあるふたつのスペースにおける試行錯誤の現場を通じて、WITH-コロナの時代に揺れる「ふれあいの場所」を展望してみよう。

日本一短い船旅の先にあるゆるやかな子どもと大人の居場所 私設図書館 さんさん舎

広島駅から東に約80km、車で約1時間半の距離に位置する尾道市。その尾道の渡船場からフェリーで約3分、「日本一短い船旅」を経て向島に降り立つ。

渡し場から南へ下った場所に現れる商店街の真ん中に、「私設図書館さんさん舎」はある。可愛らしいイラストの看板がかけられた、大きなショーウィンドウをもつ建物の中に入ると、30㎡ほどの小さな空間に、本や漫画がきれいに収まった棚が並んでいる。

街道沿いに佇むさんさん舎

立ち上げ人で代表の瀬戸房子さんは2児の母。自らの小学生の娘が不登校になったことをきっかけに、「学校でも家庭でもない子どもの居場所が必要だ」と改めて意識するようになる。子どもだけでなく大人もふらっと訪れ、ゆっくりと過ごせるような私設図書館をつくる、というアイディアはここから生まれた。

2018年に空き家となっていた元化粧品店の物件をみつけ、仲間と共に約1年かけて少しずつ片付け、2019年春に開館した。空き家に残された棚や家具をうまく再利用しながら組み合わせてつくられた空間には、持ち寄りと寄付によって、漫画から学術書まであらゆるジャンルの本1500冊以上が揃っている。

化粧品棚がそのまま本棚となっている

コロナ前は週4日ほど開放されていて、10人ほどのボランティアスタッフが交代で店番をしていた。利用はすべて無料。学校に行っていない子どもも来られるように、なるべく平日の昼間から開けていた。

口コミによって徐々に地元にその存在が知られるようになり、子どもをはじめ、近所に住む高齢者、向島・尾道に移住して間もない若者など、様々な人びとが訪れて、思い思いに時を過ごす場所になっていた。財政面でも、マツダ財団の青少年育成に関する助成金を得、活動を応援したいという志のある個人からの寄付も集まり、光熱費などの必要経費の一部がまかなえるようになってきた。

代表の瀬戸房子さん(右)と立ち上げ時から関わっている手納海さん(左)

コロナ禍でもほそぼそと、でもしっかり開ける

こうして活動が軌道に乗ってきた矢先の2020年春、コロナがやってきた。3月末、尾道でも感染者が出たことから、「大事をとって、4月中は様子を見る意味で一応閉めることにしました」と瀬戸さんは振り返る。

その後、5月から週に1度、時間を短縮して再オープンを始めた。その後は徐々に開ける日と時間を増やしていき、7月からは、コロナ禍以前とほぼ同じように週に4日開館している。

しかし、利用者は減少した。スタッフがつけている日誌をみると、コロナ以前は5人〜10人ほどの利用者が訪れる日が度々あったが、コロナ以降は利用者0の日が続くように。

それでも「ほそぼそと開け続けることに意味があると感じています」と瀬戸さんは強調する。学校が休校になることで家にいる時間が増えた結果、子どもも親もストレスを抱え、親子関係がギクシャクすることが多い。さんさん舎の利用者にもスタッフにもそんな状況を抱えた人が少なからずいる。「そういうときは、誰かと無理に喋らなくてもいい。ふらっと訪れることができて、ほっと一息ついて心を落ち着かせる場所が必要です。困ったときに『ここに行こう』と思える場が『いつでも開いている』と思えることが重要なんです」と瀬戸さんは言う。

コロナ禍で利用者が減った

現在は感染防止のため、手洗いや消毒をしてもらい、換気を徹底。それまで自由だった飲食の持ち込みは制限している。

「そもそも、さんさん舎は、大人数でわいわいイベントをするような場所にしようとは思っていませんでした。大切にしたいのはあくまで普通の日常。それに実は私、人がたくさんいる状態は苦手なんです」と瀬戸さんは明るく笑う。

「いつでも開いていて、大人も子どももスタッフも、みんながそれぞれの楽しみ方で過ごしてもらうのが理想。そもそもそんな場所を目指してきたし、コロナ禍でもそのコンセプトはまったく変わりません」。むしろコロナ禍になったことでさんさん舎の「それぞれの人がのんびり過ごせる、まちの居場所」が実現されているとすら言える。街道沿いに佇むさんさん舎は、今日も、ほそぼそと、でもしっかりと、白い扉が開いている。

今でも月に4日は開いている

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