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「携帯電話料金」は「税金」という誤解

■「値下げ」と「ヒアリング」の順序が逆

 政府は近く、「携帯電話料金の水準を利用者がどう感じているかについて主婦や高齢者、一人親家庭やフリーランスで働く人等から直接意見を聴く場を設ける」と発表した。

 「利用者がどう感じているか」を聞けば、大抵は「高い」と答えるのではないかと思われるが、大手3大キャリアのサービスを利用している人と、格安スマホのサービスを利用している人に分けてヒアリングする必要もあるのではないかと思う。また、スマホ利用者とガラケー利用者にも分けてヒアリングする必要がある。

 私自身は、スマホとガラケーの2台持ちだが、スマホはMVNOなので毎月1000円程度。WiFiを経由して利用している分にはデータ通信料も一切かからないので、使用頻度を考えても特に高いとは思わない。
 ガラケーはほとんど使用していないのに毎月2000〜3000円支払っているので高いとは思うが、嫌ならガラケーを解約してスマホだけにすればいいだけのことなので、別に政府にどうこうして欲しいとは思わない。

 しかし、よくよく考えてみると、今回の政府の対応は、順序が逆になっているような気がする。まず始めに世間の声を聞くためにヒアリングを行った上で、携帯電話料金の具体的な値下げを考えるというなら理解できるのだが、今回の場合、まず始めに値下げありきで、後付けでヒアリングを行うという順序になってしまっている。しかも、始めから「1割では済まない」とか「4割下げる」と言っておきながらのヒアリングでは不自然さは否めない。

■「家計の負担を軽減」しても「経済を底上げ」できない

 武田総務相は以下のように述べている。
>「コロナ禍ですべての業界が力を合わせて経済を底上げしないといけない中で、家計の負担を軽減するのに何ができるか考えてほしい
 この発言を聞いて、「あれ? なにか可笑しいな…」と違和感を感じた人も少なからずいるのではないかと思う。

 まず、「家計の負担を軽減」すれば「経済を底上げ」できるのか?ということ。

 これは、残念ながらできない。

 東日本大震災時に「自粛して消費活動を控えよ」と言っている人がいたが、イメージ的にはこれと同じ。経済を底上げするためには、逆に大々的に消費活動を行わなければいけない。
 経済を底上げするためには、単純に「消費」と「投資」を増加させなければならないので、ほぼ全国民が利用している携帯電話料金が大きく下がれば、それだけ経済は縮小することになる。

 こう言うと、「携帯電話料金が下がれば、浮いたお金で他の商品やサービスを購入できるので、それだけ消費が増える」という人がいると思う。しかしそれは、どこまで行っても理想論であって、単なる仮定の話でしかない。

 例えば、あなた自身が、現在、携帯料金に毎月1万円支払っているとして、それが5千円になったら、浮いた5千円を別のこと使用するかを考えてみればいい。実際にそんな人は、ごく少数しかいないはずだ。有り金全て使わなければ気が済まないというような消費癖の有る人はともかくとして、大部分の人は「携帯料金が下がってラッキー、浮いたお金は貯金に回そう」となると思う。

 5千円の内、千円や2千円なら別のことに使用する人がいるかもしれないが、丸々5千円を使用する人はあまりいないだろう。況して、浮いた5千円を超えて6千円、7千円と余分に使う人がいるだろうか?
 そんな人はごく稀だろう。しかし、そのごく稀な行動をする人々がいない限り、経済を底上げすることはできないのである。

■「競争=価格低下=景気改善」は成立しない

 武田総務相はこうも述べている。
>「各界各層の意見をしっかり受け止め、公正な市場競争が生まれる環境を実現したい
 競争すれば価格が下がる、それはその通り。しかし、競争すれば価格が下がり景気が良くなるとは限らない。

 「競争=価格低下」は成り立っても、「競争=価格低下=景気改善」は必ずしも成立しない。

 日本における携帯(スマホ)加入者数は、既に1億8000万人に及んでいる。人口の1.5倍が既に使用しているわけだから、価格を下げたところで、新しく加入者が増えるというわけでもない。価格を下げれば1人で2台も3台も契約するというなら話は別だが、1人1台が据え置きであるなら、携帯料金を下げれば携帯市場は縮小するしかないということになる。

 ネット上では、携帯電話料金は税金のようなものという意見もあるが、政府が管轄する電電公社が1社のみで携帯市場を牛耳り、高額でサービスを提供しているというなら、その通りかもしれないが、現在の携帯電話会社は全て民間企業なので、税金という認識は間違っている。

 税金を下げて景気が悪くなるということはまず無いが、携帯電話料金を大幅に下げれば景気が悪くなることは充分に有り得る。携帯電話の低価格化がデフレというのではなく、巡り巡ってデフレ圧力になるということ。携帯電話料金を大幅に下げるために人件費を削るということになれば、当然、消費活動にも影響を及ぼすことになるので、需要は減退しデフレスパイラル化に影響を及ぼすことになる。

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