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生活者利益考慮した経済政策を【菅政権に問う】

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西田亮介(東京工業大学准教授)

【まとめ】

・大企業一辺倒の政治から脱却し、生活者利益考慮した経済政策を。

・「分断」で政治への信頼感低下。新政権発足は信頼回復の好機。

・財政的制約と現役世代の負担増。将来見据えた真摯な説明と対話を。

菅義偉氏が新首相に選出されてもうすぐひとつきになろうとしている。自民党総裁選の段階から7年8ヶ月の最長政権となった前政権の「アベノミクス」といった政策の継承を唱えてきた。安倍政権と比べて保守イデオロギーの印象が薄く、実務肌が強いとされてきたが、さっそくデジタル庁の設置やはんこの廃止など耳目をひく政策に着手し、GO TOトラベルの対象に東京を含めるなど、存在感を示している。そればかりか、日本学術会議の新会員人事において、前政権の重要政策に反対した研究者の任命を拒むなど豪腕ぶりも誇示している。

実現可能性はさておき、今後の新政権への期待として述べておきたいのは生活者の利益に考慮した経済政策と課税のあり方だ。

消費税収と所得税収が膨らむ一方、法人税収は低下の一途をたどっている。前政権における二度の消費税増税は生活者に大きな負担をもたらしている。大企業中心に課税を強化するべきだ。

この間、最大の経済団体である日本経済団体連合会(経団連)には日本の古典的な大企業のみならず、メガベンチャーやGAFAも会員として集うなど、存在感を増すばかりだ。こうした大企業の声ばかりに耳を傾けるような政治からの脱却が望まれる。

確かに「アベノミクス」は大企業の収益改善、コロナ禍を経ていまなお堅調な株価、失業率の低下などをもたらした。安倍政権期間中と重なる「戦後最長の景気拡大期」は、野党の弱さもあって、安倍政権における最長政権の基盤だった。

しかし明らかに「景気回復」の恩恵の主たる対象は生活者ではなかった。それでも政権は国政選挙に勝ち続けたが、それを政策全般に対する「国民の信任」と理解するのは少々無理があるのではないか。野党が弱すぎたためだ。

不景気とデフレに喘いだ平成の「失われた30年」のもとで、多くの生活者が経済を看板にする政権に強く期待し、それを引き継ぐ新政権に期待するのは至極当然のことでもあるが、コロナ禍もあり、日本の生活者のダメージは根深いものだ。本稿執筆時点で完全失業率は3%と低水準にとどまっているが、失業者数自体は増加しているし、自殺者も増加していると指摘されている。

より長期のトレンドでみても、2000年代を通じて世帯の平均所得は改善しておらず、増加した雇用の約半数は非正規雇用だった。高齢化の影響も大きいが、控えめに言っても現役世代に景気回復の恩恵は明確ではあるまい。

消費税収は20兆円に近づく一方で、この間、法人税は減収となり、10兆円に迫ろうとしている。「税収の三本柱」というにはアンバランスな構成だ。東日本大震災後の法人税の復興加算も前倒しで終了し、規制緩和も進んだ。ちなみに中小企業の法人税率15%は世界的にみても十分低い水準だ。前政権において主張が次々と政策課題に取り上げられた財界は政権支持傾向を強め、日本型雇用や新卒一括採用の限界論や、いっそうの法人減税、解雇規制緩和など企業社会にとって都合の良い「改革」ばかりを声高に叫んでいる。政策評価を通じて、政治献金の舵取りをし、その影響力は増すばかりだ。経済団体はもはや社会益よりも大企業益しか考えなくなっている。他方で労働組合の組織率は低下、弱体化し、生活者の利益団体は存在感を失いつつある。

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