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米国では去勢、韓国では監視…性犯罪者とどう共存するべきか? - 鈴木伸元

著名な漫画原作者やタレントが逮捕されるなど、日々メディアを騒がせている性犯罪。こうした行為に手を染めるのは「粗暴で不気味な人」と思われがちですが、実態はかなり異なるようです。『性犯罪者の頭の中』(2014年5月刊行)は、そんな彼らの意外な素顔と、心の闇に迫った渾身のルポルタージュ。恐ろしい犯罪から自分やわが子を守るためにも読んでおきたい本書より、一部を抜粋してお届けします。

*   *   *

「化学的去勢」で性犯罪が減る?

強制断種の動きは、第2次世界大戦後、世界的な人権意識の高まりなどから下火となっていった。

しかし20世紀末、アメリカで医学的な去勢技術の発達とともに形を変えて復活する。現在アメリカでは、性犯罪者の去勢はいくつかの州で行われている

(写真:iStock.com/Ridofranz)

2004年3月、テキサス州で一人の服役囚が外科的な去勢手術を行ったことが、地元の新聞やCNNなどによって報じられた。

この服役囚の男性は、40人以上の少年に性的暴行を加えていて、懲役15年の判決が出されていた。自ら外科的手術を希望したという。

テキサス州では、去勢手術の州法ができたのは1997年。17歳未満の子どもに対する性犯罪を行った者に対して、本人が希望すれば、去勢手術を行えることになった。のちに大統領となるブッシュ知事による州法制定だった。精神科医などによるカウンセリングを受けた後で、本人の自発的な意思であることが書面によって確認されるという条件つきである。

手術を受けたと報じられた男性の場合、服役しながら、すでに男性ホルモンを抑えるための薬物療法を受けていたが、その効果をより確実にするために、自ら外科的手術も希望したという。

現在、去勢手術を導入している州は、テキサス州以外にもいくつかある。

そのほとんどは、男性ホルモンを抑制させる「化学的去勢」だ。「抗アンドロゲン剤」と呼ばれる薬物が使用されている。

たとえば、1996年に州法を制定したカリフォルニア州では、13歳未満の子どもを対象とした性犯罪の加害者に対して化学的去勢が行われている。初犯の場合は、本人の希望を聞くことになっているが、再犯で捕まった場合には、強制的に行うとしている

ルイジアナ州では、13歳未満の子どもを対象とした性犯罪や、大人が対象の性犯罪でも再犯の場合は、強制的に化学的去勢が行われる。従わない場合は、仮出所や保護観察とはならず、刑務所にとどまり続けることになる。

こうした去勢が実際に再犯防止に効果的なのか。

欧米の多くの研究では、効果が立証されているとしている。1980年代のドイツの研究では、外科的去勢を受けた場合の再犯率は3%だった。一方、受けなかった場合は、46%にのぼったとされている。

化学的去勢の場合はどうだろうか。カウンセリングなどの心理的アプローチに加えて、化学的去勢を行った場合、再犯率は15%にとどまったが、心理的アプローチだけだった場合は、再犯率は68%にのぼったという研究データもある。

しかし、一方では、効果がないのではないか、と主張する研究もある。そもそも去勢によって性犯罪は減らないのではないかというのである。

世界的に見ると、性犯罪者への去勢が行われている国は、ごく少数にとどまる。日本でも導入すべきだという声が一部にあるものの、今のところ大きな社会的コンセンサスは得ていないようである。

顔写真や住所のネット公開も

韓国は、性犯罪の再犯防止のための「監視」を、近年急速に強化した国として知られる。

その最たるものが、性犯罪の前科がある者に対するGPS監視だ。刑務所から出所すると、足にリング状の位置情報を発信する機器を取りつけることが求められる。

(写真:iStock.com/Prasit Rodphan)

装着の必要性については、裁判所が判断を行い、期間は最長で30年に及ぶ。装着した性犯罪の前科がある者の位置情報は、全て中央管制センターで把握されている。

監視する側からすれば、対象者がどこにいるかを把握できるという利点がある一方、監視される側には「心理的な圧力」が働き、再犯防止につながるというのが導入の基本的な考え方である。

このGPSによる監視が行われるようになったきっかけは、ソウルで発生したある性犯罪者の再犯事件である。小学生の女の子が暴行されて殺害された上に、遺体を焼かれるという痛ましい事件だった。

対象者に出所前に義務づけられるのは、GPS機能つきの足輪装着だけではない。被害者や学校など指定された人物や場所へ近づくことや、夜間の外出も禁止される。もちろん、そうした禁止行為がなされていないか、GPSの位置情報によってリアルタイムで監視されている。また、再犯防止の教育プログラムを受けることも求められる。

さらに2011年には、性犯罪者に対する薬物治療を義務づける法律も施行された。GPS監視と同じように、検察官からの請求を受けて、裁判所が必要性の有無を判断する。報道によれば「人権侵害ではないか」という批判も起こったようだが、認知行動療法などの再犯防止策と併用する形で、法律は施行される運びとなった。

薬物治療の開始と前後して、2010年には性犯罪の前歴がある者の身元情報の公開も徹底された。19歳未満を対象とした性犯罪の加害者で、特に再犯の危険性が高いと判断された場合は、顔写真や住所などがインターネット上に公開される。GPS監視とともに、国民全体で「監視」しようというのだ。

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