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400万企業が哭いている

議員会館に一冊の本が届いた。

タイトルは「400万企業が哭いている」。サブタイトルは≪検察が会社を踏みつぶした日≫となっている。事件の概要はファッション関係の企業が経営コンサルタントの佐藤氏と結託して決算書を粉飾して震災関連の融資を不正に受けた罪で逮捕されたというものだ。

特捜部は当初、別の悪徳コンサルタントが銀行を騙して融資金を懐に入れていた事件と似たような悪質な事件と断定し捜査をすすめていた。だが捜査をすすめるに連れて佐藤氏が懐に入れていたということが無いことが判明。いわゆる「筋読み」の悪い事件だったわけである。しかし一度決めた路線は変更できない。震災融資を騙し取った詐欺事件という事で処理する。

東京地検特捜部。

私の人生を大きく狂わせたこの組織に関する本は多い。魚住昭さんをはじめ多くのノンフィックションライターがこの権力集団の実態を描いてきた。最近では陸山会事件を題材として東京地検特捜部と小沢一郎事務所との暗闘を描いている作品も出ている。

通常、政治家や官僚の収賄事件や大手企業の贈賄事件など東京地検特捜部が独自捜査で直接、捜査に乗り出す案件は報道機関が大きく取り上げる事件である。

世間は巨悪を眠らせない特捜部の活躍に喝采を浴びせる。もちろん村木事件などの影響で特捜部の国民からの期待は揺らいでいるがそれでも期待がないわけではない。巨悪を眠らせないようにしてほしいと願っている国民がまだ大勢いると思う。

しかしこの本は全く別の視点から特捜部の捜査に関して糾弾している。

主人公の経営コンサルタントは元銀行員。銀行を辞職して自分が身に着けたノウハウを生かして企業再生のコンサルタントとして日々、経営者と向き合いながら資金繰りに苦しむ経営者にリストラや本社の移転など経費の削減を行わせて財務体質の改善をさせる。また経営者と一緒に銀行へ乗り込んで融資を獲得するなど中小企業の再生に取り組んでいた。

しかしどう切りつめても決算が赤字にしかならない。本書で指摘しているように現在の金融システムでは赤字の企業は銀行からお金を借りられない。そこで売り上げを課題にするなどして決算書を黒字にしたものを銀行に持ちこんで融資を可能にさせる。

ここで大きく問われているのは日本国家を支える中小企業の実態と金融システムに齟齬があるということである。建前と現実社会に大きなかい離が存在しているという実態である。

本書の中で著者がインタビューした税理士が「粉飾自体は問題ではなく、銀行に返せるのかどうかが問題なんだ」と語っている。法的にどうなのかというと著者は《考えてみると、これはとても理にかなった考え方だ。上場企業の場合、粉飾決算はそれ自体が金融商取引法で禁じられた犯罪だ。上場企業は株式市場に対して決算内容の公開を義務付けられ、決算書は監査法人の厳しいチェックを受けなければならない。しかし、非上場の会社には決算書の公開義務はなく、粉飾決算自体は違法ではない。非上場の会社が罪に問われるのは、粉飾決算によって人からお金を騙し取った場合などだけだ。》と述べている。

巻末で≪この事件を法廷で裁いたこと自体がそもそも間違いだったのだ。この裁きによっていったい誰がどんな得をするというのだ。私たちの社会にとっていったいどんな益があるというのだ。≫と問いかけている。

中小企業を育てる金融システムの改善に向けて努力しなければならないと実感させられると同時に特捜部の独自捜査を制限させることの大切さを改めて教えさせられた。

現在、経営コンサルの佐藤氏は実刑判決を受けて上告中である。シンポジウムで名刺交換をさせて頂いたがさわやかという言葉が似合う人物である。

今は弁護士を目指して勉強中との事だ。

資格取得には多難な状況だと思うが頑張ってほしい。

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