- 2020年10月01日 07:43 (配信日時 10月01日 06:00)
ハワイが4段階の経済再開計画公表、観光客受け入れも再開 - 相馬佳 (ハワイ在住ライター)
ワイキキのカラカウア大通り。現在は人影も車もまばらで寂し気な印象(筆者撮影)
アメリカでは9月22日、新型コロナウイルス感染による死者がついに20万人の大台を超えた。7月までは新規感染者1桁台を続けていたハワイでも、一部の人々の気の緩み、または自主検疫を守らない観光客のためか、7月後半からオアフ島の一部コミュニティやハワイ島のシニアの長期介護施設などでクラスター感染が発生したことで急激に新規感染者が増加した。
特にオアフ島では、一時新規感染者が連日200~300人台に上る日が続いたことから、ハワイ州政府およびホノルル市郡政府では8月下旬、オアフ島から他島への感染拡大を防ぐため、オアフ島からの島間移動者に再び14日間の自主検疫を再開した。また集会禁止、エッセンシャルビジネス以外のビジネスの一時休業などが命じられて、再びロックダウン状態に陥った。
8月上旬に開始されるはずだった公立校の新学年は2週間延期となり、8月17日に様子見状態でリモート授業を開始。9月からキャンパスとリモート授業を半々に行う予定だったが、結局10月2日に秋学期が終了するまでは全校でリモートで授業が行われることになり今に至る。
新規感染者減少でロックダウン終了へ
ハワイでは一時的に一部で小規模のアウトブレイクが起こったものの、マスク着用に関する抵抗運動などもなく、大多数の人々がルールに従った成果か、9月に入ると新規感染者が徐々に下降線をたどり始めた。その後、多少のアップダウンはあったものの、9月中旬には減少傾向がさらに強まり、ハワイ州保健衛生局の統計によると、9月22日時点で1日の新規感染者数の平均値は98人だった。このためオアフ島内に敷かれていたロックダウンは9月23日で終了することになった。ちなみに、同局によると9月29日現在でハワイの死者数は134人となっており、アメリカ本土と比較すると格段に少ないことが分かる。
ロックダウン終了を前に、ホノルルのカーク・コールドウェル市長は22日、今後の経済再開について会見を行った。ホノルル・スターアドバタイザー(電子版)の報道によると、ホノルル市郡政府(つまりオアフ島全域)は今後の経済再開を4段階に分けて行う。
まずは7日間の平均新規感染者数が100人以上、検査における感染者割合5%の「段階1」でスタート。社会的集会やビーチパーク、ハイキングトレイル、アウトドアスポーツなどは5人以下、葬儀は10人以下、レストランでの会食(グループの場合)は5人以下など、バーやナイトクラブ、ゲームセンター以外のほとんどのビジネスやレクリエーションは制限付きで再開を許可された。またショッピングモールやリテール店、ヘア、ネイルサロンも再開した。
同市長の計画によると、今後4週間はこのまま段階1に留まり、その後新規感染者数の減少が続けば段階2、段階3、段階4に進んでいく予定という。
再開されたアラモアナ・ビーチパーク。エクササイズ中も人々はマスクを着用(同)
出発72時間前以内の陰性結果で自主検疫免除
一方、観光客受け入れに関しても新たな展開が見えてきた。ハワイ州政府では現在も、州外から帰還する住民を含むすべての訪問者に対して14日間の自主検疫(隔離)を義務付けている。ハワイ州では元々、8月1日より出発前72時間以内に受けた感染検査で陰性だった場合は自主検疫を免除するプログラムを開始するはずだったが、7月中旬以降の感染者増加により、開始時期が9月1日、そしてまた10月1日に延期されていたのである。
地元テレビ局ハワイ・ニュース・ナウ(電子版)の報道によると、イゲ州知事はこのプログラム開始期日を15日間延期して10月15日に延期。現時点ではこの期日がまた延期される兆候は見られていない。ハワイ州政府は、州内の空港で到着者の感染検査を行う予定は今のところないようだが、アメリカの航空会社数社が利用客向けの感染検査実施に乗り出すことを公表している。
USAトゥデイの報道によると、ユナイテッド航空では10月15日より、サンフランシスコ発ホノルル行きの航空機に限り、同機搭乗者に対し15分後に結果が判明するラピッドテスト(迅速抗体検査)を受けるオプションを用意するという。同社ではサンフランシスコーホノルル線での試みが成功した場合、このオプションを国内の他都市にも拡大すると述べている。またホノルル・スターアドバタイザー(電子版)の報道によると、ハワイアン航空も利用客向けにロサンゼルスとサンフランシスコでドライブスルーのテストを提供すると公表。今後数カ月間で、同社の路線を持つ国内他都市でも同様のサービス提供を開始する予定だという。
一方、日本からハワイへの便も10月から約半年ぶりに再開される。ニューズウィーク日本版は9月8日、全日本空輸(ANA)が3月下旬から停止していた成田~ホノルル便を再開すると報道。同社ではまず、10月5日と19日にフライト運航を予定している。日本からハワイを訪問する場合でも、即日結果が出るラピッドテスト、またはPCR検査を提供しているクリニックを探し、出発72時間以内の陰性証明書をハワイ到着後に提出することで自主検疫が免除されることになる。しかし、日本でテストを受けない場合はこれまで通り14日間の自主検疫が義務付けられ、違反すると逮捕されて罰金を科されることにもなりかねないので注意が必要だ。
日本の航空会社では現時点はアメリカの航空会社のようなラピッドテストおよびドライブスルーテストの実施を公表していないが、ハワイと日本間の路線を持つアメリカの航空会社が、今後日本でも感染検査のオプションを提供する可能性も無きにしも非ずだろう。
厳しいロックダウンで観光再開が延期され、同時に州内のビジネスも休業に追い込まれたため、現在のハワイ経済はもちろん決して良い状態とは言えない。しかし同時に、明確な経済再開計画が打ち出されたこと、そして観光客受け入れが再開されることで、暗く長いトンネルの先に光が見え始めている。もちろん、新型コロナウイルス問題自体がなくなったわけではないが、ハワイでは安全なワクチンと治療法が開発されるときまで感染を最小限に抑えながらウイルスと共存していく道が見えてきたと言えそうだ。
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