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政権を取る気があるように見えない枝野氏

本題に入る前に、今日開かれたアメリカの大統領選の第一回候補者討論会について一言。「史上最悪の討論会」と言われているがまさにその通りで、おおよそ討論会とは言える内容ではなく、子供に見せられるような代物ではなかった。

トランプ大統領がバイデン前副大統領と司会者のクリス・ウォレス氏が発言している最中に頻繁に割り込んで現職大統領らしくない言動を連発したのだが、そのことでバイデン氏がまともに討論する気が無くなり、結果として双方の主張の言い合いで終わってしまった。負けたのは明らかにトランプ氏だが、こんな討論会をあと2回も開く必要があるのかと感じた視聴者は多いだろう。

さて、ご存知のように、立憲民主党と国民民主党はそれぞれ一旦解党したものの、立民が勢力を拡大し国民が少数政党となる形で再編成された。国会議員の数でいえば、再編前が3対2だったのが10対1となった。

新「立憲民主党」は以前より保守系の議員が少なくなった形での「民主党」の復活で、新「国民民主党」は原発に固執した労組の影響力が強くなった形での「民社党」の復活である。前者に関しては、かつて民主党を割って出て行った小沢一郎氏の復権と共に、(一応)労働組合のナショナル・センターである連合が旧「立憲民主党」時代より党に対する影響力が強まったことが特徴と言える。

これは、言うまでもなく連合が新「立憲民主党」の結成を強力に後押ししたことからであるが、連合執行部は脱原発に反対し共産党との連携にも否定的である。それゆえ、この2点に関して枝野代表の発言を分かりにくいものにしている。

脱原発に関しては、東京新聞のインタビューにおいて

―脱原発の政策は新党で後退したのか。
「原発事故の検証や実効性ある避難計画の策定、地元合意がないままの再稼働は認めないといった市民連合との合意文書から姿勢は変わっていない。」

―立憲民主党が国会に提出した原発ゼロ基本法案の取り扱いはどうするのか。
 「バージョンアップする必要があり、これから慎重に精査する。」
と述べており、歯切れが悪くなったのは明らかだ。

自身への首班指名を要請しそれに答えた共産党との連携に対しても、産経新聞のインタビューによると、「共産党が選挙協力の条件とする「野党連合政権」については「どういった連携ならお互いに納得できるのか、有権者に理解してもらえるのか、慎重に考えていかなければならない」と述べるにとどめた」そうであり、これまで一体何年野党共闘をやってきたのだ?と言いたくなるような鈍い反応である。本日開かれた記者会見でも枝野氏は、「今後の課題だ」と繰り返すのみであった。選挙はどんなに遅くても一年後にはあるのにずいぶんお気楽なようである。

さらに、政権を取る気ならば作るべきであろうシャドー・キャビネット(影の内閣)についても消極的なようであり、とどめは、新党が結成から2週間以上たつのに綱領だけが決定されただけで、基本政策の一覧はおろか目玉となる政策も提示されていないという体たらくである。これではどうやって枝野氏と立憲民主党に期待しろというのだろうか?

そもそも私が枝野氏に対して一番問題に感じるのは、彼が「リベラル保守」とか「右でも左でもなく前に進んでいく」などと言って、保守vsリベラル(進歩的価値観)、右派vs左派の対立概念を否定していることだ。これは、東工大の中島岳志教授が「リベラル保守」などという混乱を招く概念を持ち出して旧民主党のブレーンになったおかげで、旧民主党系の人たちが影響されておかしなことを言っている典型的な例だろう。

ご本人の気持ちを止めることはできないが、伝統的な政治的対立を超える政策を打ち出しているわけではないのにそれを否定することは、本来コアな支持層となるべきリベラル・左派の有権者をしらけさせる行為といえる。リベラルな政党としての役割を期待しているのに、党首に「私は保守の政治家」などと言われたら一生懸命応援する気はなくなるのは当然で、リベラル・左派の支持が自然と離れていくのは当然の成り行きだ。

自民党は綱領で自らを保守政党と定義しているし、トランプ米大統領は(ほめられたものではないが)コアな支持者であるキリスト教保守派からの支持固めに奔走している。立憲民主党が掲げる中で唯一明確な主張である立憲主義は、本来であれば近代政党ならばあたりまえなことを言っているにすぎず(それを安倍自民党が踏みにじったのは許せないが)、それ以上に政党としての位置づけが明確化できなきければ、同党に未来を切り開く積極的なイメージを持つことが出来ないのは当たり前だ。

2017年の結党後3年間の間に、枝野氏が立憲民主党を現実主義的なリベラル・中道左派政党と定義して政権構想を提示し、それに基づいて共産党も含めて連立政権政策協議・選挙協力を進めてきたならば今頃はもっと高い支持率を得ていただろう。連合の影響力も低下していたはずだ。保守系の人たちは共産党との提携は票が逃げるなどと口にするが、それは嫌悪感から来ているだけの主張であり、参議院選挙においては野党共闘でいくつもの1人区での勝利してきたのだから明確な根拠はない。

立憲民主党は、感染抑止を重視したコロナ対策、グリーン・ニューディール、脱原発、安保法制を全面的に見直した上での領海警備の強化などを共通公約として共産党を含む野党各党に提示し、連立政権政策協議・選挙協力の開始を求めるべきだと思うが、枝野氏にそれを期待するのは難しそうである。

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