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「不妊治療の保険適用」では切り札にならない「少子化」の深刻度 - 磯山友幸

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出生数を増加に転じるには、政府として抜本的な改革が求められる(写真はイメージです)

 新しい首相に就いた菅義偉氏は、自民党総裁選の最中から「不妊治療の保険適用」を政策の柱の1つとして打ち出した。

 9月27日に公明党大会に出席した際もあいさつで、不妊治療への保険適用について、

「公明党から強い要請を受けていた。できるだけ早く適用できるようにしたい。それまでの間は助成金を思い切って拡大したい」

 と繰り返し、少子化対策に本腰を入れる姿勢を見せた。

 これは、「デジタル庁創設」や「携帯電話料金の引き下げ」などとともに、菅首相流の「一点突破型」の政策提示といえる。「女性活躍促進」「1億総活躍」といった「掛け声型」の安倍晋三前首相とは、180度スタイルが違うものの、多くの国民が求める具体策を提示したからか、発足時の内閣支持率は極めて高い。

「86万ショック」

 菅首相は目指す国家像などをなかなか語らないが、少子化が日本社会を根底から揺るがす深刻な事態を引き起こそうとしていることに危機感を抱いているのだろう。

「『86万ショック』と呼ぶべき状況」――。

 政府が7月31日に閣議決定した「2020年版少子化社会対策白書」では、2019年の年間出生数が初めて90万人を割り込み、86万5234人と過去最少を更新したことをこう表現し、危機感をあらわにした。

 当然、菅氏も官房長官としてこの閣議決定に加わっていた。それから1カ月も経たない8月25日、厚生労働省が発表した人口動態統計(速報値)では、2020年上半期(1-6月)の出生数が明らかになった。43万709人。前年同期に比べて8824人も減少、2020年の年間出生数が、前年をさらに下回る懸念が強まっている。

 86万人といってもピンと来ない人が多いに違いない。2015年には100万5721人の新生児が産まれていたのに、90万人を一気に下回った。110万人を割り込んだのが2005年で、100万人割れの2016年まで10万人減るのに、11年かかっていた。しかし、わずか4年で14万人も減ったのである。

 出生率の低下は、経済的な問題が大きいとされてきたが、この4年、経済は比較的好調だった。それでも出生数が激減しているのは、そもそも出産する年齢層の女性人口が、大きく減り始めていることが大きい。

 昨年10月1日時点の人口推計によると、46歳の女性の人口は100万2000人。戦後ベビーブーム世代の子どもである「団塊ジュニア」と呼ばれた人たちの世代だ。43歳から47歳までの女性人口は、478万人に達する。彼女たちがいわゆる出産適齢期から外れたことが、少子化に拍車をかけた。

 そのためなのかどうなのか、厚労省が不妊治療に助成金を出す際の治療開始年齢の上限は、43歳未満になっている。

 この団塊ジュニアをピークに人口は急激に減る。その次の世代、38歳から42歳の女性は400万人、33歳から37歳は357万人、28歳から32歳は313万人だ。

 この出産適齢期の女性人口の減少が顕著に表れたのが、ここ数年の出生数の激減とみられる。現在0歳から4歳までの女性は232万人しかいないので、団塊ジュニア世代のざっと半分だ。彼女たちが成人して、子どもを出産するころには、さらに出生数は減る。大幅に出生率が上昇でもしない限り、もはや出生数の減少は止められないステージに入ったと言っていい。

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